「悔しさが原動力だった」トヨタGR GT/GT3とレクサスLFA発表でハンフリーズCBOが語ったトヨタ変革の14年

2025年12月5日、静岡県のトヨタ自動車東日本・東富士工場で、TOYOTA GAZOO RacingとLEXUSによる3台のスポーツカー「GR GT」「GR GT3」「Lexus LFA Concept」のワールドプレミアが開催されました。​

この発表会で登壇したのは、トヨタ自動車 執行役員でチーフ・ブランディング・オフィサー(CBO)を務めるサイモン・ハンフリーズ氏です。36年間デザイナーとして働いてきた彼が語ったのは、単なる新型車の紹介ではなく、「屈辱」という言葉をキーワードにした、トヨタとレクサスのスポーツカーへの情熱と覚悟でした。​

発表の舞台となった場所に込められた意味

ハンフリーズ氏はまず、発表会場となった東富士工場が持つ特別な意味を語りました。この場所は元々プレス工場でしたが、1967年に中村健也氏と豊田章一郎氏が初代センチュリーを生み出した歴史的な場所でもあります。​

そして現在、ここは「ウーブン・シティ(Woven City)のインベンターガレージ」として、未来をつくる場所に生まれ変わっています。「今日は発明のお祝いだけでなく、私たちが愛してやまない”クルマそのもの”をお祝いする日でもあります」と、ハンフリーズ氏は語りかけました。​

14年前の屈辱が生んだ決意──レクサスの変革

ハンフリーズ氏は、2つの「屈辱の物語」を紹介しました。1つ目は、レクサスにまつわるエピソードです。​

14年前、アメリカのペブルビーチで、豊田章男会長は「レクサスはつまらない」と言われました。デザイナーにとって、心と魂を注ぎ込んだものを「つまらない」と言われることほど辛いものはありません。しかしこの屈辱は、大きなターニングポイントとなりました。​

章男会長は「もう二度と退屈なクルマはつくらない」と宣言し、そこから変革が始まりました。そして今年2025年、同じペブルビーチでLexus LFA Conceptを披露した際、章男会長は「ただ、そのまま置けばいい。クルマ自身に語らせればいい」とシンプルに答えたといいます。​

説明も言葉もなく、ただ自由に感じてもらうだけ──嬉しいことに今年のペブルビーチでは、誰一人「レクサスはつまらない」と言った人はいませんでした。​

革新と没入感を追求したレクサス LFAコンセプト

ハンフリーズ氏は、レクサス LFAコンセプトの開発思想について語りました。「革新的であること。冒険的であること。独創的であること。そしてお客様にDISCOVER”発見”をもたらすこと」──それこそがレクサスの使命だといいます。​

このクルマでは、お客様に新たなレベルの「没入感」を体験していただきたいと考え、大胆なプロポーションとパッケージの革新が必要でした。全高は1,200mm未満という低さを実現し、スタンスとリアビューの美しさにこだわりました。​

そして章男会長からの「最後のリクエスト」である「電動スポーツカーの音を再定義する」という宿題にも応えようとしています。​

20年前のニュルブルクリンクでの屈辱──GR誕生の原点

2つ目の屈辱の物語は、サーキットの世界でのエピソードです。章男会長がハンフリーズ氏に語った20年前のニュルブルクリンクでの体験が、トヨタ GR GT、トヨタ GR GT3誕生の原点となりました。​

当時、他のメーカーはレースに本気で取り組み、新しい技術や製品だけでなく、それらを生み出す「人」を育てる場としてレースを活用していました。カモフラージュされた開発車両が世界で最も苛酷なサーキットで次々に鍛えられていたのです。​

しかし当時のトヨタは、ニュルを走れるクルマをつくろうとしておらず、実際、市販のスポーツカーすらありませんでした。だから章男会長は、テストドライバーの成瀬弘氏と一緒に、古いスープラに乗り、「モリゾウ」という偽名で、しかもプライベートチーム「ガズーレーシング」で走るしかありませんでした。​

何台もの開発プロトタイプに道を譲るたび、まるでこう言われているようでした──「トヨタさん、あなたたちにこんなクルマ作れるわけないでしょ。」​

「しかし、それは昔の話。いまは違います」とハンフリーズ氏は力強く語りました。​

トヨタ GR GTとトヨタ GR GT3──レースで鍛えた技術の結晶

GR GTとそのレーシングモデルのGR GT3、そしてLexus LFA Conceptが加わり、レクサスとGRの「スポーツカーの頂点」となっていきます。すべてはレースで鍛えたプラットフォームから「限界への挑戦」というGRの想いを体現し、トヨタのすべてのクルマに貢献していく存在です。​

GR GT3は、4リッターV8ツインターボエンジン、高剛性のアルミスペースフレーム、超低重心、最先端の空力など、速さの要素をすべて兼ね備えています。しかし、スピードだけがすべてではありません。​

マスタードライバー・モリゾウが言うように、大切なのは「会話」──つまりドライバーとクルマの会話です。GR GT3はあらゆる状況でドライバーに「自信」を与え、極限の状況でも「会話」によって安心でき、瞬間的な判断につながる「フィードバック」を返してくれます。​

今回初めて、アクセルオンの音だけでなく、アクセルオフのときも含めて「五感に訴えかける野性的な音」に徹底的にこだわりました。​

市販車GR GT──サーキットでも街中でも楽しめる

ロードカーのGR GTは、レースカーと同じV8ツインターボに加えてハイブリッドを搭載し、これまでで最もレースカーに近いDNAを持つ市販車です。開発チームはクルマとしての限界だけでなく、開発プロセスの限界にも挑みました。​

市販車のテストドライバーとレーシングドライバーが手を取り合って開発したこのクルマは、サーキットでも走れる「日常のクルマ」です。サーキットでは野生的に、街中では扱いやすく──サーキット走行の帰りにいいレストランに寄れるような、そんなクルマを目指しました。​

GR GT3のV8ツインターボ、GR GTのハイブリッド、そのどちらもガソリンとe-fuelに対応しています。そして電動車の未来を体現するLFA──これらはすべて、「人間の限界ギリギリの走る喜び」を次世代につなぐという決意の象徴です。​

トヨタは「エモーショナルさ」を取り戻した

ハンフリーズ氏は、この14年間でレクサス、GRだけでなく、トヨタグループのブランド全体で大きな変化を遂げたと振り返りました。「トヨタは”エモーショナルさ”を取り戻しました」──走り、技術、生産、そしてデザインにおいても、会社のマインドセットは根本から変わったといいます。​

クルマの見た目やフィーリング、それらはすべて人間の主観によるものです。しかし、ピットでマスタードライバーの章男会長と一緒に過ごすことで、「どうやればクルマにストーリーを吹き込むことができるのか」がわかってきたと語りました。​

そして70歳に近づいた今年、章男会長は再び、20年前にすべてが始まったニュルブルクリンク24時間レースの場に戻りました。「この3台が目の前にあれば、章男さんはまだまだ走り続けるに違いありません」とハンフリーズ氏は笑顔で語りました。​

3台のクルマが体現する「走る楽しさ」

章男会長はモータースポーツを愛しています。レースチームには上下関係がありません。みんな同じピットに立つ仲間です。​

この3台のクルマは1つのチームのように、ベテランから若い世代のクルマ好きまで、あらゆる人に「走る楽しさ」をお届けする存在になります。技術と人材を育て、「走る喜びの新しい時代」をつくっていく──それが、ハンフリーズ氏が語った想いの核心でした。​

成瀬弘氏がトヨタ2000GTからLFAへ知見を伝承し、若手テストドライバーに伝えたように、技術と情熱は次世代へと受け継がれていきます。​

各車両の詳細情報について

GR GT、GR GT3、Lexus LFA Conceptそれぞれの車両の詳細については、以下の記事で詳しくご紹介しています。

トヨタ GR GTの詳細

トヨタ GR GT3の詳細

レクサス LFAコンセプトの詳細

豊田章男会長が語った「秘伝のタレ」とこれから

この発表会では、サイモン・ハンフリーズCBOのプレゼンテーションに続いて、豊田章男会長自身も登壇しました。会長が語った「秘伝のタレ」への想い、そして仲間たちへの感謝と未来への決意については、以下の記事で詳しくお伝えします。​

30年前、成瀬弘氏と二人だけだったクルマづくりから、今では同じ想いを共有する仲間がこんなにも増えた──その物語は、トヨタのモータースポーツへの情熱と、「もっといいクルマづくり」への飽くなき挑戦の歴史そのものです。​

コメント

タイトルとURLをコピーしました