改良新型レクサスRZ発表:航続距離20%向上 F SPORT登場 2025年秋以降日本などで発売 価格未発表

レクサスは2025年3月12日、ベルギーのブリュッセルにて電気自動車(BEV)モデルのレクサスRZ(LEXUS RZ)の改良新型モデルを世界初公開しました。新しいRZはバッテリーEVシステムが全面刷新され、航続距離が最大20%アップしました。2025年秋以降、日本を含む順次各地域で発売が予定されており、電動化技術を用いた基本性能の大幅な進化を実現した一台となっています。

車の概要:改良新型レクサス RZとは?

レクサスRZは、レクサスが展開する100%電気自動車(BEV)として2022年に初代モデルが発売された比較的新しいモデルです。レクサスは2005年のRX400h発売以降、ラグジュアリー市場における電動化の先駆者として常に優れた走行性能と環境性能の両立を追求してきました。2024年には電動車比率が過去最高となる52%を記録するなど、電動化を積極的に推進しています。

今回発表された新型RZは2代目に当たるモデルで、BEVシステムを全面刷新し、モーターの高出力化や航続距離の伸長、充電時間の短縮を実現しています。特に航続距離については、前輪駆動(FWD)モデルで約20%伸長して575km、四輪駆動(AWD)モデルでは約14%伸長して500kmと大幅に向上しました。

この新型RZは、次世代の操舵感覚をもたらすステアバイワイヤシステムの採用や走りのコンセプト”The Natural”を徹底的に追求した「Lexus Driving Signature」のさらなる深化など、数々の先進技術を盛り込んだモデルとなっています。

新型RZの最大の特徴は、レクサス初となるステアバイワイヤシステムの導入です。これは電気信号によってタイヤの動きを制御する技術で、ステアリングホイールを大きく回転させる必要がなく快適で楽な運転が可能になります。また、プラットフォームの改良による走りの基本性能の磨き上げと電動化技術を活用した四輪駆動力システム「DIRECT4」の特性を見直すことで、より自然で気持ちの良い走りを実現しています。

ラインアップは、最大システム出力300kW(407.8PS)を発生させる「RZ550e “F SPORT”」、280kW(380.6PS)の「RZ500e」、165kW(224.3PS)の「RZ350e」の3モデルを設定。特にF SPORTモデルには、マニュアル操作のように駆動力を操作できる「インタラクティブマニュアルドライブ」機能が搭載され、アクセル操作のレスポンスや音、視覚から車両の状態を把握しながら、より深くクルマとの対話を楽しむ運転体験を提供します。

グレード別スペック

項目RZ550e “F SPORT”RZ500eRZ350e
駆動方式AWD(四輪駆動)AWD(四輪駆動)FWD(前輪駆動)
システム最高出力300kW(407.8PS)280kW(380.6PS)165kW(224.3PS)
0-100km/h加速4.4秒4.6秒7.5秒
航続距離450km500km575km
電費184Wh/km166Wh/km144Wh/km
車両重量2,135-2,180kg2,100-2,155kg1,995-2,050kg
タイヤサイズ20インチ18/20インチ18/20インチ
リヤモーター搭載(167kW/227PS)搭載(167kW/227PS)非搭載

改良新型レクサス RZのエクステリアデザイン

新型レクサスRZのボディサイズは、全長4,805mm、全幅1,895mm、全高1,635mmとなっており、ホイールベースは2,850mmを確保しています。このサイズ感は先代モデルから変更はなく、安定感のあるプロポーションを維持しています。

特に注目すべきは「RZ550e “F SPORT”」モデルのエクステリアデザインです。空力性能に根差した機能美を追求し、フロントロアバンパーモール、ブレーキダクト、リヤスポイラー、リヤバンパーローなどの空力パーツを採用することで、優れた空力性能と操縦安定性の実現に貢献しています。

F SPORTモデルに装着される20インチエアロホイールは、骨格となるアルミホイールに空力デバイスとしてのエアロカバーを設定したもので、軽量化と空力による電費性能向上を同時に実現しています。このようなディテールからも、単なる見た目の美しさだけでなく、電気自動車としての効率性を追求した設計思想が伺えます。

カラーラインアップにおいては、F SPORTモデル専用の新色として「ニュートリノグレー」が設定されました。これは硬質なソリッドのライトグレーにハイライトでメタリックをほのかに感じさせる色味で、ブラックのF SPORT独自のアイテムとのハイコントラストにより、「タフ&スポーティ」な印象を演出しています。

全体として、BEVならではの内なる力強さとスポーティな走りを予感させるデザインを採用し、モノトーン全5色とバイトーン全4色の豊富なカラーバリエーションが用意されています。これにより、購入者は自分の個性に合わせたカラーチョイスが可能となっています。

改良新型レクサス RZのインテリアデザイン

新型レクサスRZのインテリアデザインは、先進的な技術とラグジュアリーな素材使いが特徴的で、BEVならではの洗練された空間を実現しています。

開放感あふれる室内空間

特に注目すべきは調光機能付きパノラマルーフで、その機能性がさらに向上しました。前席上部から後部座席の乗員頭部まで伸びる広大な開口部が、抜け感のある空間を創出しています。調光機能ONの状態では鮮明度が向上し、より開放的な室内環境をもたらす一方、OFFにすると遮光性も向上しているため、直射日光や紫外線が強い環境下でも車室内の快適性を高めています。また、電子インナーミラーへの映り込みを低減させることで、調光パノラマルーフと電子インナーミラーの同時装着が可能となりました。

先進的な素材と照明

レクサス初となるレーザー加工によるグラフィックを施したドアトリム表皮も新たに採用されています。約30%の植物由来原料を実現したウルトラスエード®に繊細なレーザー加工を施すことで、シームレスでシンプル、そして先進的かつプレミアム感のある緻密なグラフィック表現を実現しています。この新しい表現方法により、乗員を非日常の体験へと誘います。

照明においても革新が見られ、レクサス初となるダイナミック陰影イルミネーション(マルチカラー)を設定しました。従来の陰影イルミネーションの華やかさに加え、光の模様が揺らぐような動きを追加。レクサスのデザイン思想「Time in Design」に基づき、時間の移り変わりを感じさせる徐々に変化する繊細な陰影柄が、乗員の気持ちに寄り添った心地よい時間を提供します。

F SPORT専用インテリア

スポーティな走りを重視するRZ550e “F SPORT”には専用のインテリアデザインが用意されています。インテリアカラーには「ブラック×ダークグレー」を採用し、BEVならではの内なる力強さとスポーティな走りをイメージ。ブラックとダークグレーの色と素材にブルーステッチをアクセントとして配しています。

オーナメントパネルには「マイクロジオメトリックパターンフィルム」を採用し、表皮一体発泡工法を用いたフロントシート、F SPORTロゴ入りのフロントスカッフプレート、ステアリングホイールにはF SPORTエンブレム、アルミペダル&フットレストの設定により、スポーティなドライビング体験を演出しています。

革新的なステアリングホイール

最も革新的な要素の一つが、レクサス初となるステアバイワイヤ用ステアリングホイールです。ステアバイワイヤシステム搭載モデルには、小舵角の操作を前提とした特殊形状のステアリングが採用されています。上下部分にリングのない形状は、ドライバーの視線を自然と前方に誘導し、BEVの爽快な走りに集中できるコックピットを実現するとともに、足元スペースの確保による優れた乗降性にも貢献しています。

改良新型レクサス RZの走行性能

新型レクサスRZは、BEVシステムを全面的に刷新し、電気自動車としての基本性能を徹底的に追求しています。バッテリーセルの改良と搭載セル数の増加により出力特性を向上させた新開発の大容量リチウムイオンバッテリーを採用し、インバーターの効率が向上した新型eAxleを前後に搭載することで、驚異的な動力性能を実現しています。

高出力化と多彩なラインアップ

今回のRZでは、高出力モーターの搭載により全開加速性能と最高速性能を高めるとともに、中間加速においてもより伸び感のある爽快な走りを提供します。BEVシステムの冷却には水冷式を採用することで、高い動力性能の維持に貢献しています。

ラインアップは、最大システム出力300kW(407.8PS)を発生させる「RZ550e “F SPORT”」を頂点に、280kW(380.6PS)の「RZ500e」、165kW(224.3PS)の「RZ350e」の3モデルを設定。0-100km/h加速はRZ550e “F SPORT”で4.4秒、RZ500eで4.6秒、RZ350eで7.5秒と、特に上位モデルではスポーツカー並みの加速性能を誇ります。

航続距離と充電性能の進化

新型eAxleによる電力の大幅な損失低減とバッテリーの大容量化により、航続距離も大きく向上しました。AWDモデルで約14%増の500km、FWDモデルでは約20%増の575kmと航続距離を伸長させており、日常使用から長距離ドライブまで安心して走行できます。

充電性能も向上し、バッテリーの大容量化とバッテリーパック構造の最適化、車載充電器の性能アップにより、最大30分以上の充電時間短縮を実現しています。特に低温環境下では、新設定の「電池プレコンディショニング機能」を使用することで、充電開始前からあらかじめ電池温度を最適な状態に調整し、充電時間の遅延を解消する工夫も取り入れられています。

LEXUS ならではの走りの味を深化させる技術

新型RZに採用されたLEXUS初の「ステアバイワイヤシステム」は、特にF SPORTモデルに搭載されています。このシステムでは、ドライバーとクルマが一体となった走りを実現するために、中立位置から左右約200°の範囲でステアリング操作が可能となり、ステアリングホイールを大きく回転させる必要がなく快適で楽な運転を体感できます。

また、車速に応じたステアリングギヤ比の制御により、低速運転時の取り回し性だけでなく、ワインディングでの軽快な走行を可能にする俊敏性や高速走行時の高い安定性も実現しています。電気信号によってタイヤの動きを制御するため、路面からドライバーに伝わる不要な振動を効果的に抑制しながら、運転に必要な情報のみを伝達する仕組みとなっています。

DIRECT4の進化とインタラクティブマニュアルドライブ

レクサスの電動化技術を活用した四輪駆動力システム「DIRECT4」も進化を遂げました。発進時や直進加速時は車両のピッチングを抑え、ダイレクトな加速感が得られるように前輪:後輪=60:40~0:100程度で制御。コーナリング時には走行状態に合わせて駆動力配分を80:20~0:100で最適制御し、ターンインではフロント寄りの駆動力配分、コーナー脱出時は各輪の接地荷重に応じたトルク配分とすることで、気持ち良い旋回フィーリングや狙い通りのライントレースを実現しています。

さらに「RZ550e “F SPORT”」では、レクサス初採用となる「インタラクティブマニュアルドライブ」機能により、パドルシフトを使用してマニュアルトランスミッションを操作するような感覚で駆動力を操作できます。8速の仮想有段ギヤを持ち、アクセル開度と車速に応じた仮想パワーソーストルクにパドルシフトで選択した仮想ギヤ段のギヤ比を乗じて駆動力を出力する仕組みです。これにより、アクセル操作のレスポンスや音、視覚からクルマの状態を把握でき、より深くクルマとの対話を楽しみながら運転できる体験が提供されています。

新型レクサスRZは、電気自動車ならではの静粛性も追求しており、後席下へのリヤフロアサイレンサーの設定や、各所の防音材の高性能化、振動対策としてボディフロアパネルへの高減衰接着剤の採用など、徹底した静粛性・振動対策により質感の高い乗り心地を実現しています。

改良新型レクサス RZの価格

新型レクサスRZの価格はまだ発表されていません。

参考として現行モデルの日本でのレクサスRZの価格は820万円からです。

  • RZ300e Version L:820万円
  • RZ450e Version L:880万円

改良新型レクサス RZの発売時期

新型レクサスRZは「2025年秋以降、順次各地域で発売を予定」と発表しており、日本を含む世界各地で2025年秋から冬にかけて段階的に発売されることが予想されます。

なお、レクサスは日本国内でも充電インフラ整備を進めており、「レクサス充電ステーション」を東京・軽井沢・大阪・名古屋・福岡(4月予定)に開設していることからも、BEVモデルである新型RZを日本で販売する意向が読み取れます。

改良新型レクサス RZの辛口評価

レクサスRZをあえて辛口で評価します。

まず、航続距離に関しては、前モデルから14-20%向上したことは評価できますが、最上位モデルのRZ550e “F SPORT”では450kmと、同クラスの競合他社と比較するとまだ物足りない印象です。テスラModel YのPerformanceモデルが500km前後を実現していることを考えると、高性能と引き換えに航続距離を犠牲にしている点は気になります。

また、レクサス初となるステアバイワイヤシステムは革新的ですが、従来のメカニカルな操舵感を好むドライバーにとっては違和感を覚える可能性があります。特に上下部分にリングのないステアリングホイールのデザインは、慣れるまで時間がかかる可能性があり、実用面での課題も否めません。

「インタラクティブマニュアルドライブ」機能は、8速の仮想有段ギヤを持つとのことですが、本来ギヤチェンジの必要がないEVにおいてこの機能が実際に価値を提供するのか、単なるギミックにならないかという疑問も残ります。

さらに、充電性能についても「最大30分以上の充電時間短縮」という表現にとどまり、具体的な充電時間(10%から80%までの所要時間など)は明示されていません。この点は、長距離移動を考える際に重要な要素であり、曖昧さが残る部分です。

改良新型レクサス RZのライバル車

新型レクサスRZの主なライバル車としては、まず同じラグジュアリー電気SUVセグメントのアウディe-tron、BMWのiX、メルセデス・ベンツEQC、そしてテスラ モデルYが挙げられます。

テスラ モデルYは、航続距離や充電ネットワークの広さ、ソフトウェア面での優位性を持ち、特に自動運転技術においてはリードしています。一方、RZはレクサスならではの質感の高いインテリアや静粛性、日本車特有の信頼性で差別化を図っています。

欧州勢では、BMWのiXが革新的なデザインと広々とした室内空間、アウディe-tronが洗練されたインターフェースと高級感、メルセデス・ベンツEQCが伝統的な高級感と快適性で競合します。これらの車種と比較すると、RZはステアバイワイヤシステムや「インタラクティブマニュアルドライブ」などの独自機能でドライビングエクスペリエンスに焦点を当てている点が特徴的です。

また、同じトヨタグループのブランドとして、トヨタbZ4Xともプラットフォームを共有していますが、RZはより高級志向で上質な内装や先進技術、パワートレインの強化により差別化されています。

日産アリアもプレミアムEVクロスオーバーとして注目されており、日本メーカーのEV市場における競合となります。アリアはe-4ORCE(イーフォース)と呼ばれる独自の電動AWDシステムを持ち、RZのDIRECT4システムとの性能比較が焦点となるでしょう。

価格帯としては、RZは現行モデルが820万円からとなっており、ほぼ同価格帯で競争することになるBMW iX3やアウディQ4 e-tronとの競争も予想されます。

まとめ

新型レクサスRZは、単なる電気自動車の追加モデルではなく、レクサスが電動化時代に向けて本気で挑む姿勢を明確に示した意欲作だと評価できます。特に注目すべきは、レクサス初となるステアバイワイヤシステムです。この技術は、従来の機械的なステアリング機構から完全に脱却し、電気自動車における操舵感覚の新たな可能性を提示しています。

航続距離においては、前モデル比で14〜20%の向上を実現していますが、トップグレードの「RZ550e “F SPORT”」では450kmにとどまる点は、長距離移動を考えるユーザーにとっては依然として課題かもしれません。一方で、最大出力300kW(407.8PS)を誇るパワートレインは、0-100km/h加速4.4秒という数値が示す通り、スポーツカー顔負けの動力性能を持っています。

「インタラクティブマニュアルドライブ」という新機能は興味深いアプローチです。本来シフトチェンジの必要がないEVに、8段の仮想ギアを設けるという試みは、従来のICE車からEVへの移行期におけるドライバーの感覚的な橋渡しとなるでしょう。これはEVの走りに「操る楽しさ」という新たな価値を付加する試みとして評価できます。

デザイン面では、機能美を追求したエクステリアと、先進的な素材使いが光るインテリアが調和しており、レクサスらしい上質感を維持しつつも、電気自動車としての新しさを感じさせる仕上がりとなっています。特にF SPORTモデル専用の「ニュートリノグレー」は、硬質で力強い印象を与え、高性能電動SUVとしてのキャラクターを視覚的に強調しています。

レクサスは2005年のRX400h発売以降、ラグジュアリー市場における電動化の先駆者として歩んできましたが、新型RZはその集大成とも言える一台です。昨今の電動車市場が価格競争の様相を呈する中、レクサスは「走りの質」という本質的な部分で差別化を図る戦略が見て取れます。

今後のEV市場はさらに競争が激化するでしょうが、新型RZが示した「運転する楽しさ」という価値提案は、レクサスならではのアプローチとして市場に新たな風を吹き込むものと期待されます。

現行レクサスRZの公式ページはこちら

コメント

タイトルとURLをコピーしました