ホンダは2025年10月29日、「Japan Mobility Show 2025(ジャパンモビリティショー)」において、小型電気自動車「ホンダ スーパー ワン プロトタイプ」を世界初公開しました。このモデルは、日常の移動を刺激的で高揚感あふれる体験へと進化させることを目指して開発された、ホンダならではの新しい小型EVです。
グランドコンセプトを「e: Dash BOOSTER(イー ダッシュ ブースター)」とし、これまでの常識や規格の枠を超越する存在(Super)として、ホンダならではの唯一無二(One and Only)の価値をお届けするという想いが込められています。会場では10月29日から30日のプレスデー、10月31日から11月9日の一般公開日にホンダブースで展示されます。

車の概要:ホンダ スーパーワンとは?
ホンダ スーパーワン プロトタイプ(Honda Super-ONE Prototype)は、軽自動車「N-ONE e:」をベースに開発された普通車サイズの小型電気自動車です。ホンダのNシリーズは2012年に初代N-ONEが登場して以来、「人のためのスペースは最大に、メカニズムは最小に」というM・M思想を受け継いできました。2025年9月には軽乗用EV「N-ONE e:」が発売され、ホンダは軽自動車のEV化を本格的に推進しています。
今回発表されたホンダ スーパーワンは、このN-ONE e:の電動技術をベースとしながら、ワイドボディ化と高出力化を実現した新世代の小型EVです。Nシリーズとして進化させてきた軽量なプラットフォームを活用し、軽快でキビキビとした走りを実現しています。さらに、左右に張り出したブリスターフェンダーによってトレッドを拡げたワイドなスタンスが、安定感のある力強い走りを可能にしています。
環境性能や日常での使い勝手の良さに加え、ホンダならではのFUNを追求した設計が特徴で、小型EVとしての軽快な走りによる「操る喜び」に、五感を刺激する演出を加えることで、刺激的で高揚感あふれる走行体験を提供します。
ホンダ スーパーワンのエクステリアデザイン
ホンダ スーパーワンのエクステリアは、本格的な走りを予感させ、高揚感を感じさせるスタイルを目指してデザインされました。最大の特徴は、ワイドなタイヤを包み込む張り出したブリスターフェンダーで、これによりロー&ワイドなスタンスを際立たせ、力強さを表現しています。
フロントとリアに配置したエアダクトを含む専用設計のエアロデザインにより、空力性能の向上と冷却効率の確保を両立させています。走行性能を支える実用的な機能と、走りを予感させる機能美を備えたエクステリアに仕上がっており、ベースとなった軽自動車の「N-ONE e:」から大きく進化した印象を与えます。
ホンダ スーパーワンのボディサイズは、全長3500mm、全幅1550mm、全高1525mmです。


ホンダ スーパーワンのインテリアデザイン
ホンダ スーパーワンのインテリアは、走りへの期待感を高めるとともに、ドライバーが運転に没頭できる空間を目指してデザインされました。専用のスポーツシートが採用されており、安定したドライビングポジションを確保する高いホールド性を備えています。
インストルメントパネルは水平基調のデザインを採用し、視覚的なノイズを抑えることで、より運転に集中できる視界を実現しています。また、BOOSTモード専用の3連メーターやイルミネーションカラーの変化など、視覚的な演出も盛り込まれています。

シートの表皮には、ブルーの色がアシンメトリーに配色されており、遊び心あふれるコーディネートとなっています。この配色は、スポーティーでありながら親しみやすい印象を与える仕上がりです。

ホンダ スーパーワンの走行性能
ホンダ スーパーワンは、Nシリーズとして進化させてきた軽量なプラットフォームを活用し、軽快でキビキビとした走りを実現しています。左右に張り出したブリスターフェンダーによってトレッドを拡げたワイドなスタンスが、安定感のある力強い走りを可能にします。
最大の注目ポイントは、専用に開発された「BOOSTモード」です。このモードでは、出力を拡大することでパワーユニットの性能を最大限に引き出し、力強く鋭い加速を可能にします。
BOOSTモードでは、有段変速機のようなギアチェンジの感覚を再現した仮想有段シフト制御と、アクセルなどの運転操作に応じて迫力のある仮想のエンジンサウンドを車内に響かせるアクティブサウンドコントロールシステムを連動させています。これにより、EVでありながらスポーティーなエンジンを意のままに操っているかのような運転感覚を提供します。
視覚や聴覚、そして加速感や振動などの体感を通じてドライバーの感性を刺激し、高揚感のあふれるEVの走行体験を実現しています。日本や英国、アジア各国において、さまざまな路面環境や気候条件下で走行試験を重ね、走行性能のさらなる向上を図っているとのことです。
ホンダ スーパーワンの価格
ホンダ スーパーワンの価格は、350万円からになるとの予想があります。ベースとなった軽自動車「N-ONE e:」の上位グレード「e: L」が319万8800円(約320万円)であるのに対し、普通車サイズへの拡大と高出力化により、約30万円ほど価格が上昇する設定となっています。
参考までに、N-ONE e:の価格は「e: G」が269万9400円(約270万円)、「e: L」が319万8800円(約320万円)です。国のCEV補助金57万4000円を活用すれば、それぞれ約212万円、約262万円で購入可能となります。
ホンダ スーパーワンについても同様の補助金が適用される可能性が高く、実質的な購入価格は300万円を下回る水準になることが期待されます。
ホンダ スーパーワンの発売時期
ホンダ スーパーワンの量産モデルは、2026年より日本を皮切りに発売を予定しています。その後、小型EVのニーズの高い英国やアジア各国などでも順次発売される計画です。
なお、量産モデルの車名は地域によって異なります。日本やアジア大洋州では「Super-ONE(スーパーワン)」、アジア大洋州の一部の国では「Honda Super-ONE」、英国では「Super-N(スーパーエヌ)」として発売予定です。
2025年7月には英国ウエスト・サセックス州グッドウッドで開催された「Goodwood Festival of Speed 2025」に、コンセプトモデルである「Super EV Concept」として出展し、象徴的なヒルクライムコースを力強く駆け抜けることで、ホンダならではのEVの新たな「操る喜び」の可能性を世界に示しました。
ホンダ スーパーワンは日本で発売されるか
ホンダ スーパーワンは、2026年より日本を皮切りに発売が予定されています。プレスリリースでも明確に「日本を皮切りに」と記載されており、日本市場が最初の発売地域となることが確定しています。
日本での車名は「Super-ONE(スーパーワン)」となり、ジャパンモビリティショー2025での世界初公開を経て、2026年中の国内発売が見込まれています。ホンダは2030年までに国内販売のすべてを電動車とする計画を掲げており、軽自動車に関してはハイブリッド車の投入計画がなく、すべてEVとなる見通しです。
ホンダ スーパーワンは、軽EVの「N-ONE e:」に続く普通車サイズの小型EVとして、日本市場におけるホンダのEV戦略の重要な役割を担うモデルと位置づけられています。
辛口評価
ホンダ スーパーワンをあえて辛口で評価します。まず気になるのは、詳細なスペックや航続距離が公表されていない点です。プロトタイプの段階とはいえ、ライバルとなる日産サクラや三菱eKクロスEVは航続距離や充電時間を明示しており、購入検討の材料として不十分な印象を受けます。
価格面でも、350万円からという予想価格は、軽EV「N-ONE e:」の上位グレード320万円から約30万円のアップにすぎません。しかし、ボディサイズの拡大による居住性向上がどの程度なのか、バッテリー容量の増加や航続距離の延長がどれほどあるのかが不明瞭です。普通車サイズにすることで、軽自動車の税制優遇が受けられなくなる点も、ランニングコストを重視するユーザーにとっては大きなデメリットとなります。
また、BOOSTモードによる「仮想エンジンサウンド」や「仮想有段シフト制御」は、EVの静粛性や滑らかな加速といった本来の魅力を損なう演出とも言えます。EVならではの走りを求めるユーザーにとっては、むしろ不要な機能かもしれません。ホンダが「操る喜び」を追求する姿勢は理解できますが、エンジン車の感覚を模倣することがEVの進化と言えるのか、疑問が残ります。
さらに、国内のコンパクトEV市場は競争が激化しており、ヒョンデ「INSTER」やBYD「DOLPHIN」など、航続距離やコストパフォーマンスに優れた輸入EVが続々と登場しています。これらと比較した時に、ホンダ スーパーワンがどれだけの競争力を持てるかは未知数です。
ホンダ スーパーワンのライバル車
ホンダ スーパーワンのライバル車としては、まず同じ軽EVの枠組みから発展したモデルとして、日産「サクラ」と三菱「eKクロスEV」が挙げられます。これらは軽自動車規格のEVですが、補助金適用後の実質価格が200万円前後に抑えられており、価格面では強力なライバルとなります。
サイズや価格帯を考慮すると、より直接的なライバルは海外メーカーのコンパクトEVです。ヒョンデ「INSTER(インスター)」やBYD「DOLPHIN(ドルフィン)」は、航続距離やコストパフォーマンスに優れており、EVとしての性能面でガチンコのライバルとなります。
また、同価格帯のコンパクトカーも比較対象となります。トヨタ「ヤリス」、スズキ「スイフト」、マツダ「マツダ2」、トヨタ「アクア」といったガソリン車やハイブリッド車、さらにコンパクトSUVのトヨタ「ライズ」なども、総所有コストを重視するユーザーにとっては選択肢となるでしょう。EVとガソリン車・ハイブリッド車という動力源の違いを軸に、価格と実用性のバランスで選択が分かれることになりそうです。
まとめ
ホンダは2025年10月29日、ジャパンモビリティショー2025において、小型電気自動車「スーパー ワン プロトタイプ」を世界初公開しました。軽EV「N-ONE e:」をベースに普通車サイズに拡大したこのモデルは、ワイドなボディと高出力化されたパワーユニットにより、力強く安定感のある走りを実現しています。専用開発の「BOOSTモード」では、仮想有段シフト制御とアクティブサウンドコントロールシステムにより、EVでありながらスポーティーなエンジン車のような運転感覚を提供します。価格は350万円からと予想され、2026年に日本を皮切りに発売される予定です。ボディサイズは全長3500mm、全幅1550mm、全高1525mmで、ブリスターフェンダーによるワイドスタンスと専用エアロデザインが特徴です。ライバルには日産サクラ、三菱eKクロスEV、ヒョンデINSTER、BYD DOLPHINなどが挙げられ、国内外のコンパクトEV市場において、ホンダならではの「操る喜び」をアピールする戦略的なモデルとなります。



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