日産自動車は2025年10月29日、東京ビッグサイトで開催されたジャパンモビリティショー2025のプレスデーにおいて、大型SUV「パトロール」を2027年度前半に日本市場へ投入することを正式に発表しました。2007年に「サファリ」の生産を終了して以降、約20年ぶりに日産の大型SUVが日本市場に復帰することになり、トヨタ ランドクルーザー300の強力なライバルとして注目を集めています。

車の概要:日産 パトロールとは?
日産 パトロール(Nissan Patrol)は、1951年に誕生して以来70年以上の歴史を持つフラッグシップSUVです。日本国内では1951年から1980年まで「パトロール」として販売され、その後「サファリ」と改名して2007年まで販売が続きましたが、海外市場では「パトロール」の名称で販売が継続され、特に中東市場を中心に高い評価を獲得してきました。
今回日本市場に投入される7代目パトロールは、2024年9月にアラブ首長国連邦アブダビで開催されたイベントでデビューし、過去の伝統を受け継ぎながら、大胆なデザインと、パワフルなV6ツインターボエンジン、そして最新のインフォテインメントシステムとプレミアムなインテリアを兼ね備えたSUVとして、中東市場で高い評価を得ているモデルです。
新型日産パトロールについて以下の記事で詳しく紹介しています。
日産 パトロールの日本市場投入の経緯
日産パトロールの日本市場への投入が決定した背景には、市場からの強い要望がありました。日産の次席チーフビークルエンジニアである近郷智史氏は、「昨年度に新型パトロールを発表した際、YouTubeやSNSなどで非常に大きな反響があった」と語っています。
特に日本の掲示板やコメント欄では「ぜひ日本にも導入してほしい」という声が多く寄せられ、そうした顧客の反応が社内での前向きな議論を生み、日本導入の実現につながったといいます。さらに、かつて「サファリ」という名前で販売されていた時代から、今もそのクルマを大切に乗り続けているファンの存在も大きな要素だったと近郷氏は強調しています。こうした熱い思いを持つファンの存在が、再導入の大きなモチベーションになったとのことです。
また、パトロールは福岡県の日産車体九州工場で生産されており、主要マーケットは中東やアメリカなど海外となっていますが、国内工場で生産されることから、物流や関税などのロスなく日本市場に導入できることが、日本導入を検討する上での大きなアドバンテージとなっていました。

日産 パトロールのフラッグシップとしての役割
日産のCEO イヴァン エスピノーサは発表の場で、「70年以上前、日産は第1回東京モーターショーでパトロールを披露しました。その後、現在に至るまでパトロールは世界中で活躍してきました。日本市場においては2007年のサファリの生産を終了して以降、大型SUVはラインナップしていませんでしたが、この度、新型パトロールを日本に投入することを正式に決定いたしました」と述べました。
GT-Rがラインナップから外れた今、パトロールは新たなフラッグシップモデルとして日産をけん引していくことになります。エスピノーサCEOは「70年以上にわたる歴史を礎にした新型パトロールは、日本市場においても類を見ない存在感を放つことでしょう」と自信を見せています。
中東で日産のフラッグシップSUVとして愛されるモデルがいよいよ日本上陸を果たすことになります。

日産 パトロールとランドクルーザー300の競合関係
「2年、3年待ち」とも言われるトヨタ ランドクルーザー300の一強状態が続く日本の大型SUV市場に、ついに本格的な対抗馬が現れる形となります。2007年に生産終了したサファリ以来、20年ぶりの大型SUVが、ポスト「ランクル」の急先鋒になるかが注目されています。
日産パトロールは、トヨタ ランドクルーザー300を直接のライバルとする大型SUVとして位置づけられています。かつてランドクルーザーとサファリ、そしてパジェロとともに日本の大型SUV市場を三分していた歴史があり、今回の日本復帰により、長らく独走状態だった日本の高級SUV市場に新たな選択肢が生まれることになります。

日産 パトロールのボディサイズ
7代目パトロールのボディサイズは、全長5,350mm×全幅2,030mm×全高1,945mmというビッグサイズを誇り、ホイールベースも3,075mmに達します。3列シート8人乗りのモデルとなっており、数字だけを見れば日本の道には大きすぎるとも言えますが、堂々たるキャビンは8名が快適に過ごせ、ミニバンユーザーの関心も奪う可能性があります。
これに対してランドクルーザー300は全長4,950mm×全幅1,980mmとなっており、パトロールは全長で400mm、全幅で50mm、ホイールベースで225mm上回る大型ボディを持ちます。ひと回り大きなボディサイズにより、パトロールはランクル300を凌駕する存在感を放っています。

日産 パトロールのパワートレイン
海外ではV型6気筒3.5リッターターボ、自然吸気のV型6気筒3.8リッターの2種類のエンジンが用意されていますが、日本市場に導入されるパワートレーンは明らかになっていません。ただし、ジャパンモビリティショーの展示車両はターボモデルとなっています。
3.5リッター V型6気筒ツインターボエンジンは、最大出力425馬力、最大トルク700Nmを発揮し、従来のV8エンジンと比較して出力で7%、トルクは25%向上しながら、燃費も大幅に改善されています。ランドクルーザー300のV6ツインターボエンジン(最大出力415馬力、最大トルク650Nm)と比較すると、パトロールは出力で10馬力、トルクで50Nm上回るスペックとなっています。
9速オートマチックトランスミッションを介して伝達されたその動力が路面を捉え、市街地から険しい地形に至る様々な地形でもより質の高いドライビング体験を提供します。

日産 パトロールのエクステリアデザイン
新型パトロールのエクステリアデザインは、伝統を残しつつ先進感あふれるデザインで、あらゆる面で強靭性と耐久性を感じさせ「unbreakable(壊れることのない頑丈性)」を体現しています。フロントのVモーショングリルの左右に配した印象的なC形のヘッドライトは、アダプティブ ドライビング ビーム(ADB)技術を採用し、最適な視界を確保します。
22インチのアルミホイールは路上での存在感を高めるだけでなく、優れたオフロード性能に必要なロードクリアランスも実現しています。デザインの現代性では「ひと目で新鮮味を感じるのはパトロールの方」と評されており、伝統的な重厚感を持つランクル300との対比が際立っています。





日産 パトロールのインテリアデザイン
プレミアムなインテリアは、快適さと最先端のテクノロジーが調和するよう緻密に設計され、乗る人すべてに快適な運転体験を提供します。2つの14.3インチのディスプレイを配したインフォテインメントシステムはGoogleビルトインを搭載した日産コネクト2.0を採用しています。これにより、ナビゲーション、セキュリティ、エンターテインメントが一つのプラットフォームに統合され、デジタルライフと車両の連携をよりシームレスに行えるようになります。
ディスプレイには、障害物やナビゲーションのヒントをリアルタイムで投影するInvisible-to-Visible技術を採用しています。「ウルトラ ワイドビュー」により視野は170度にまで拡大し、「インビジブル フードビュー」により車両の真下を透過して確認できるようになるなど、オフロードや狭いスペースでも安全な運転をサポートします。
新たに搭載した「バイオメトリック クーリング」は、内蔵された赤外線センサーが乗員の体温を検知し、温度と風量を自動で調整して快適な車内環境を保ちます。さらに、12個のスピーカーからなる「クリプシュ®プレミアムオーディオシステム」、64色から選べるアンビエント ライトシステムが、クラス最高の広さを誇る乗員空間をより快適に演出します。
ジャパンモビリティショーの会場では乗り込み可能な状態でパトロールが展示されており、中でもアメリカのオーディオブランド「Klipsch」の12スピーカーサウンドシステムをぜひ体感していただきたいとパトロール担当者は語っています。





日産 パトロールの走行性能
走行シーンによって適切な車高に調整することを可能にした「アダプティブ エアサスペンションシステム」を装備しています。通常走行時は車高を下げることで空力性能を確保し、乗員の乗降時は更に車高を下げて乗り降りや荷物の載せ降ろしを容易にします。
ドライブモードは、標準、砂地、岩場、轍、エコ、スポーツの6つから選ぶことができます。また、日産初採用の4WDトランスファーモードインターロックシステムによりシームレスなモードの切り替えが可能になりました。
運転支援技術については、プロパイロットテクノロジーがパトロールに初めて採用され、アダプティブクルーズコントロールとレーンキープアシストがドライバーをサポートします。

日産 パトロールの日本市場での展望
内装は豪華でありながら実用的で、オフロードにも踏み込める「ラグジュアリークロカン」というポジションで独自の地位を築けると期待されています。専門家の間では「実用性のランクル300 vs プレミアム性能のパトロール」という構図が語られており、日産パトロールの日本導入により、長らく独走状態だった日本の高級SUV市場に新たな選択肢が生まれることになります。
日本市場向けのパトロールの仕様や価格などの詳細情報は、2027年度前半の発売時期に合わせて発表される予定です。




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