ダイハツ新型ミゼットXを先行公開!新たなブランド戦略でトヨタG内の独自の位置付けを確立

ダイハツは2025年10月14日、コンセプトカー「ダイハツ ミゼットX(Daihatsu Midget X)」を発表しました。この発表は、トヨタが10月13日に公開した新プロジェクト「TO YOU(あなためがけて)」の中で行われたもので、トヨタ、レクサス、センチュリー、GR、ダイハツの5ブランド戦略の一環として披露されました。今回の発表により、トヨタグループにおけるダイハツの独自性と重要性が改めて明確になりました。

ダイハツブランド広告TVCM 「わたしにダイハツメイ」

ダイハツの公式YouTubeチャンネルで公開されたブランドCMの中で、新型ミゼットXの姿が公開されています。

ダイハツ ミゼットの歴史と原点回帰

初代ミゼットは1957年(一部資料では1959年)、日本の高度経済成長期に誕生しました。三輪のコンパクトなボディで狭い路地もスイスイ走る姿は「街のヘリコプター」と呼ばれ、人々の暮らしと仕事を支える存在として広く愛されました。

その後、1996年には4輪の「ミゼットII」が登場しましたが、2001年に販売が終了して以降、後継車は登場していませんでした。今回のミゼットXは、約24年ぶりにミゼットの名を冠したモデルとして、ダイハツの原点回帰を象徴するコンセプトカーとなっています。ミゼットXは3代目となります。

ダイハツ ミゼットXのデザインと多彩な仕様

ミゼットXは、歴代モデルの愛嬌のあるスタイリングやレトロな丸目ヘッドライト、小さなボディ、四隅に配置したタイヤといった特徴をオマージュしつつ、現代風のマイクロモビリティとして開発されました。基本構成は、後ろヒンジドアで小さな荷台を備えた2人乗りの4輪トラック仕様となっています。

最大の特徴は、モジュラー式のデザインを採用している点です。骨組みのようなフレーム構造を持ち、用途に応じて上部のキットを変更できる仕組みとなっており、ユーザーのライフスタイルや用途に応じて柔軟に対応できる設計となっています。

ミゼットXの多様な用途展開

10月13日に公開されたトヨタイムズの配信では、ミゼットXの様々な仕様が紹介されました。具体的には、子どもの送迎など日常の足として使えるファミリー仕様、趣味の道具を載せるピックアップ車仕様、軽トラの農作業の相棒としての商用仕様などが提案されています。

さらに、レースに出場するマシン仕様、キッチンカーなど移動販売車仕様、長い荷台に換装してサーフボードを載せるレジャー仕様、日除けのある荷台に2人乗せる人力車仕様、移動カフェ仕様、キャンプ仕様など、実に多彩なバリエーションが映像内で披露されました。これらの仕様は、ユーザーの使い方次第でどんなニーズにも対応できるというミゼットXのコンセプトを体現しています。

ダイハツブランドの新しいアイデンティティ「ダイハツメイ」

今回の発表で特に注目されるのが、「ダイハツメイ」という新しいブランドメッセージです。これは「発明(ハツメイ)」とダイハツを掛け合わせた造語で、「小さいからこそできること。小さいことからひとつずつ。」をテーマに掲げています。

ダイハツは1907年の創業以来、人々の暮らしに寄り添いながら、小さなボディにワクワク感、親しみやすさ、便利さを凝縮したクルマを「ハツメイ」し、求めやすい価格で提供し続けてきました。今回のジャパンモビリティショー2025では、「わたしにぴったり」「暮らしがおもろくなりそう」と思ってもらえる、そんなダイハツらしい発明を「ダイハツメイ」として表現し、その原点であるミゼットを基点にひろがる未来の姿を提示します。

ブランドロゴについても新しい試みが見られます。従来の赤色のロゴから、CMの中で「大発明」のカラーを反映した明るい色合いのロゴへと変更されたバージョンが用意されており、この変更はダイハツの社員から「おもろい(面白い)からやりましょう」という提案で実現したものです。

トヨタグループにおけるダイハツの独自の位置付け

トヨタは2025年10月13日、トヨタ、レクサス、センチュリー、GR、ダイハツの5ブランドを横断する新戦略「TO YOU(あなためがけて)」を発表しました。この戦略発表において、各ブランドの役割が明確に再定義され、ダイハツの独自性が改めて強調されました。

トヨタ5ブランド戦略とダイハツの「遠心力」

豊田章男会長とサイモン・ハンフリーズCBO(チーフブランディングオフィサー)は、トヨタグループ内のブランド戦略を「チーム」に例えて説明しています。センチュリーは最上位のラグジュアリーブランド「アバブ・レクサス」として位置付けられ、これによりレクサスは長男としての責任から解放され、より自由にパイオニアとして挑戦できるようになりました。GRはモータースポーツへの参戦と走りの追求という明確な役割を持ち、トヨタブランドは「TO YOU」として一人ひとりのお客様に向けた車づくりを担っています。

この中でダイハツは、「遠心力」を持つブランドとして特別な位置付けを与えられました。豊田会長は、ダイハツがトヨタの100%傘下にありながらも、独自の「ダイハツらしさ」や「おもろい(面白い)発想」を保ち続けることが重要だと強調しています。

豊田会長は次のように語っています。「ダイハツは元々大阪発動機という名前で、やっぱり関西らしさというかね、そこにはこだわってほしい。資本が100%になったから全部求心力でというよりは、ダイハツがそもそも持っている、富には近づかないっていうようなね、我々はそもそも持ってた行くんだというね、その遠心力をね、ちょっと応援してあげたいわけですよ」。

この発言は、トヨタグループの中でダイハツが軽自動車を中心とした日本の国民車として、独自の路線を歩むことを期待する姿勢の表れです。

ダイハツの「暮らしが主役」という哲学

ダイハツブランドの最大の特徴は、「車が主役」ではなく「暮らしが主役」という考え方にあります。今回のブランドCM制作を担当した小西俊之氏は、ダイハツ本社で何度も打ち合わせを重ねた結果、この哲学に辿り着いたと語っています。

小西氏は次のように述べています。「ダイハツは車が主役というよりは暮らしが主役なんです。大きい車じゃできないことで小さいからこそできた、あそこにぎゅって詰め込んだすごい技術だなと思うんですけど、そのギュって詰め込んだような発明を1つ1つにやってるってのがものすごくわかったんですよ」。

ダイハツは、町の人々が困った声を直接聞き、それを一つひとつ形にしていく歴史を持っています。この姿勢は、初代ミゼットの開発から一貫して受け継がれているもので、「小さいからこそできること」「私のための発明」というメッセージに繋がっています。

トヨタグループ全体の中でのダイハツの役割

トヨタグループ全体の「TO YOU」という戦略の中で、ダイハツは一人ひとりの暮らしに最も近い存在として位置付けられています。豊田会長は、トヨタが年間約1000万台を販売していることについて、「1000万人のお客様がいるのではなく、1人ずつの集合体で足し合わせたら1000万になる」と語り、ダイハツの「あなためがけて」という姿勢が、まさにこの哲学を体現していると評価しています。

この考え方は、CMのコピーライターが提案した「あなた目がけて」という言葉に集約されており、豊田会長は「久しぶりにいいね」と評価したといいます。「TO YOU」という英語表記も、「トヨタ」という言葉と「あなたのために」という意味を重ね合わせた造語で、創業者である豊田佐吉がお母さんのために自動織機を考えたという原点とも繋がっています。

ダイハツ ミゼットXのジャパンモビリティショー2025出展

ダイハツは、10月29日から11月9日まで東京ビッグサイトで開催される「ジャパンモビリティショー2025」に、ミゼットXを中心とした多彩なコンセプトカーを出展します。一般公開は10月31日からとなります。

ブース展示では、「わたしにダイハツメイ。小さいからこそできること。小さいことからひとつずつ。」をテーマに、ミゼットを基点にひろがる未来の姿を演出で表現します。その他の展示物については、10月29日のプレスデー当日に公表される予定で、サプライズモデルが存在する可能性も示唆されています。

また、ダイハツは日本自動車工業会主催のメインプログラムにも参加し、10年後の近未来の技術やそれらによってもたらされる生活を体感できる「Tokyo Future Tour 2035」に、新しい歩行領域モビリティ「e-SNEAKER(イースニーカー)」を出展します。さらに「Out of KidZania in JMS」などのプログラムにも参加する予定です。

ダイハツブランドCM制作の舞台裏と豊田会長の関わり

今回の5ブランド戦略発表では、各ブランドの新CMも公開されましたが、その制作過程において豊田章男会長が深く関わっていたことが明らかになりました。会長は2025年4月、CM相談室のメンバーに向けてメッセージ動画を送り、4つのブランド(当時はダイハツを含まない)のCM戦略を考えてほしいと依頼しました。

その後、会長はCMディレクターたちとSNSで直接やり取りを行い、ランチミーティングも開催しました。このプロセスの中で、ダイハツもブランドとして加えるべきだという判断がなされ、5ブランド戦略へと発展していきました。

CM制作に携わったクリエイターたちは、会長からの直接的なフィードバックについて語っています。野添竜志氏(レクサス・GR担当)は「映像としてのチャレンジは何ですか」と問われた経験を、小西俊之氏(ダイハツ担当)は「スペックが全面に出ているCMは僕は好きではありません」と静かに指摘された経験を明かしています。

一方で、会長はチャレンジする姿勢を強く支持しており、クリエイターたちは「チャレンジしたいということに関しては本当に背中を押してくれます」と口を揃えています。小西氏は「会長からご連絡いただくとできるだけ早くリアクションしたいって思うんですけど、1回見ただけで1発でコメントするんですよ」と、会長の鋭い洞察力にも言及しています。

ダイハツ ミゼットXの市販化の可能性

現時点でミゼットXはコンセプトカーとして発表されており、市販化については明言されていません。しかし、過去のミゼットIIも当初はコンセプトカーとして発表され、反響の大きさから市販化に至った経緯があります。

豊田会長は「コンセプトカーは必ず本気でやってます」と述べており、「シーンで出してみんなのリアクションを1つのきっかけとして、みんないいね、いいねって言ったら、より商品に近づくという段階の話」と説明しています。この発言からも、ミゼットXへの反響次第では市販化の可能性が十分にあると考えられます。

ジャパンモビリティショー2025での一般来場者の反応が、今後のミゼットXの展開を左右する重要な要素となりそうです。ダイハツファンのみならず、軽自動車やマイクロモビリティに関心を持つ多くの人々の期待が集まっています。

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