テスラは2025年10月7日、米国市場において新たなエントリーグレードとなる「テスラ モデル3 スタンダードモデル(Tesla Model3 Standard Model)」を発表しました。価格は36,990ドル(約562万円)からとなり、従来のRWDモデルから約5,500ドルの値下げを実現した廉価版として注目を集めています。この新グレードの登場により、テスラのモデル3シリーズは「スタンダード」「プレミアム」「パフォーマンス」の3階層に再編され、より幅広いユーザー層へのアプローチが可能になりました。

車の概要:テスラ モデル3 スタンダードモデルとは?
テスラ モデル3は、アメリカのテスラが製造するコンパクト・ラグジュアリーセダンタイプの電気自動車です。2016年3月31日にカリフォルニア州ホーソーンで初披露され、発表初日に予約台数が130,000台を超える圧倒的な支持を獲得しました。当初の販売価格は35,000ドルで、航続距離215マイル、0-60マイル/hの到達スピードは6秒未満を目指して開発されました。日本での受注は2019年5月31日に開始され、納車は同年9月13日から始まりました。
2023年後半には大幅なアップデートが行われ、「ハイランド」と呼ばれる改良モデルが登場しています。今回発表されたテスラ モデル3 スタンダードモデルは、初代モデル3の系譜に連なる最新グレードであり、より手頃な価格でテスラ車を購入できるエントリーモデルとして位置づけられています。このモデルは米国市場専売として発表されており、数週間以内に納車が開始される予定となっています。

テスラ モデル3 スタンダードモデルのエクステリアデザイン
テスラ モデル3 スタンダードモデルのエクステリアは、モデル3シリーズ共通のミニマリスティックなデザインを踏襲しています。2023年のアップデート版「ハイランド」では、より直線的でシャープなラインが採用され、洗練された外観に仕上がっています。フロントグリルレスのデザインは電気自動車ならではの特徴で、空力性能の向上にも貢献しています。
ボディカラーは複数のオプションから選択可能で、選択するカラーによって価格が変動します。電気自動車特有のフロントにエンジンがないレイアウトにより、広いクラッシャブルゾーンを確保しており、安全性の向上にも寄与しています。ガラスルーフは標準装備となっており、開放的な室内空間を演出しています。
テスラ モデル3 スタンダードモデルのボディサイズは、全長4720mm、全幅1850mm、全高1441mmとなっています。

テスラ モデル3 スタンダードモデルのインテリアデザイン
テスラ モデル3 スタンダードモデルのインテリアは、テスラらしいミニマリズムを極めた設計が特徴です。中心となるのは、15.4インチの横置きタッチスクリーンで、従来の自動車では物理的なボタンで操作していたヒーターや空調、ヘッドライトなどの調節をすべてこのタッチスクリーンで制御できます。メーターパネルすら存在せず、車両の情報はすべてセンタータッチスクリーンに表示される斬新なレイアウトとなっています。
2023年のアップデートでは、シフトレバーが廃止され、ステアリングホイールにウインカー、ワイパー、ヘッドライト、ボイスコマンドなどの操作が集約されました。この変更により、より直線的でシンプルなインテリアを実現しています。シートは包み込み性とサポート性が大幅に向上し、フロントシートにはシートベンチレーションが搭載されています。
後席には8インチのリアタッチスクリーンが標準装備され、シートヒーターの制御やエアコンの風量調整に加え、音楽やビデオストリーミングも可能となっています。大人5人が余裕を持って乗車できる室内空間を確保しており、快適性にも配慮されています。タッチスクリーンは、表示モードを「暗い」「明るい」「オート」から選択でき、周囲の照明状態に応じて明るさが自動的に変わる機能も備えています。





テスラ モデル3 スタンダードモデルの走行性能
テスラ モデル3 スタンダードモデルは、後輪駆動(RWD)システムを採用しています。現行のRWDモデルのスペックを参考にすると、システム最高出力は194kW、システム最大トルクは340Nmを発揮します。停止状態から100km/hまでの加速時間は6.1秒と、セダンとしては十分なパフォーマンスを備えています。
航続距離は、現行RWDモデルでWLTPモードで513km、WLTCモードで約594kmとなっており、日常使用において航続距離の不安を感じることは少ないでしょう。交流電力量消費率はWLTCモードで効率的な数値を実現しており、維持費の面でも優れています。
電気自動車ならではの瞬時のトルク発生により、滑らかで力強い加速感を体感できます。ただし、パフォーマンスモデルのような最高速度261km/hといった極端な高速性能は持ち合わせておらず、日常的な使用を重視したバランスの取れたセッティングとなっています。

テスラ モデル3 スタンダードモデルの安全性能・運転支援
テスラ モデル3 スタンダードモデルは、安全性能において非常に高い評価を受けています。2019年7月3日にはEURO NCAPにおいて最高評価となる5つ星を獲得し、前方向からの衝突、サイドポール、歩行者自転車に対する緊急ブレーキのすべてで優れた性能を発揮しました。さらに、NHTSAの安全性試験では、2011年から2018年までにテストされたあらゆる自動車の中で、負傷する可能性が最も低い車として認定されています。
エアバッグシステムも充実しており、ニーエアバッグ、フロントエアバッグ、サイドエアバッグ、カーテンエアバッグを装備しています。フロントエアバッグはシート内のセンサーと連動し、乗員のタイプや着席姿勢を検知して最適な展開を行う高度なシステムとなっています。
運転支援機能としては、テスラ独自の「オートパイロット」を搭載しています。オートパイロットは、車両に搭載された複数のカメラを使用して周囲を監視し、他の車両、歩行者、道路標識、障害物を検知します。アダプティブ・クルーズ・コントロール、オートステアリング、衝突回避機能といった各種安全運転支援機能が統合されており、高速道路での長距離運転時の疲労を大幅に軽減できます。自動緊急ブレーキシステムは夜間でも確実に作動し、歩行者の飛び出しや自転車にも対応しています。
テスラ モデル3 スタンダードモデルの価格
テスラ モデル3 スタンダードモデルの価格は、米国市場において36,990ドル(約562万円)からとなっています。これは従来のRWDモデルから約5,500ドルの値下げを実現した価格設定です。
日本市場における現行のテスラ モデル3の価格体系は、以下のようになっています。RWDモデルが531万3,000円から、ロングレンジAWDが621万9,000円から、パフォーマンスモデルが725万9,000円からとなっています。ただし、2025年5月には期間限定で特別価格調整が実施され、RWDモデルで45.3万円、ロングレンジAWDで55万円、パフォーマンスで34.9万円の価格調整が適用されたこともありました。
テスラの価格設定は需要と供給のバランスによって頻繁に変更されることがあるため、購入を検討される際は、テスラ公式サイトで最新の価格を確認することをおすすめします。なお、国のCEV補助金などを活用することで、実質購入価格をさらに抑えることが可能です。

テスラ モデル3 スタンダードモデルの発売時期
テスラ モデル3 スタンダードモデルは、2025年10月7日に米国市場で発表され、数週間以内に納車が開始される予定となっています。現時点では米国市場専売として発表されており、他の地域での販売については明らかにされていません。
テスラは従来から、新グレードをまず米国市場で展開した後、段階的に他の地域へと拡大していく戦略を採っています。今後の販売状況や市場の反応を見ながら、他地域への展開が検討される可能性があります。
テスラ モデル3 スタンダードモデルは日本で発売されるか
テスラ モデル3 スタンダードモデルについて、日本市場導入の発表は現時点でありません。今回の発表では、米国市場専売として明確に位置づけられており、日本を含む他の地域での販売予定については言及されていません。
日本市場では現在、RWDモデル、ロングレンジAWD、パフォーマンスの3グレードが販売されており、現行のRWDモデルが実質的にエントリーグレードの役割を果たしています。現行モデル3はAWDのみで616万4,000円からとなっていますが、RWDモデルは531万3,000円からと、すでに戦略的な価格設定がなされています。
テスラは過去に日本市場でも価格調整を実施しており、市場の需要に応じて柔軟な価格戦略を展開しています。今後、米国でのテスラ モデル3 スタンダードモデルの販売状況次第では、日本市場への導入が検討される可能性もありますが、現時点では確定的な情報はありません。

テスラ モデル3 スタンダードモデルをあえて辛口で評価します。
テスラ モデル3 スタンダードモデルをあえて辛口で評価します。まず価格面について、米国政府が2025年9月30日にEV税額控除政策を終了したため、購入者は最大7,500ドルの自動車購入補助金を受けられなくなりました。その結果、このスタンダードモデルは以前発売されたプレミアムバージョンよりも実質的に約2,000ドル高くなっており、多くの装備や自動運転支援機能が簡素化されているにもかかわらず、実質負担は増加しているという皮肉な状況です。
また、米国市場専売という点も気になります。世界で最も売れている電気自動車メーカーでありながら、新しいエントリーグレードを米国市場に限定するという判断は、グローバル展開の面で疑問が残ります。特に日本市場では、すでに現行RWDモデルが531万3,000円から販売されており、スタンダードモデルの導入余地が限定的であることも影響しているのでしょう。
装備の簡素化も課題です。価格を抑えるために装備が省かれている可能性が高く、プレミアムモデルとの差別化が装備の充実度に依存している点は、ユーザーにとって選択の難しさを生む要因となります。実際、一部のアナリストからは「新しい購買層を引き付けるには高すぎる」との指摘も出ています。
さらに、テスラの価格戦略の不透明さも指摘せざるを得ません。需要と供給のバランスによって頻繁に価格が変更されるため、購入のタイミングによって大きく損得が分かれてしまいます。2021年2月には429万円だったベースモデルが、2022年9月には596万円へ上昇した例もあり、価格の変動幅が大きすぎるのは消費者にとって不安要素です。
テスラ モデル3 スタンダードモデルのライバル車
テスラ モデル3 スタンダードモデルのライバル車としては、まずBMW i4 M50が挙げられます。BMW i4 M50はテスラ モデル3パフォーマンスと直接競合する高性能電気セダンで、BMWらしい洗練された走りと質感の高いインテリアが魅力です。ただし、価格帯はスタンダードモデルよりも高く、よりプレミアムな層をターゲットとしています。
BYDシールも強力なライバルです。中国の新興EVメーカーBYDが展開するミッドサイズセダンで、テスラ モデル3よりもボディサイズが大きく、全長で80mm、全幅で25mm、全高で20mm大きくなっています。価格競争力も高く、装備の充実度でも評価を得ています。
日本市場では日産アリアや日産サクラもライバルとして挙げられます。特にアリアはSUVスタイルの電気自動車として、セダンのモデル3とは異なる価値を提供しています。ボルボC40やトヨタプリウスPHEVなども、電動化車両として比較検討されることが多いモデルです。
興味深いことに、テスラ自身のモデルYも実質的なライバルとなっています。SUVスタイルのモデルYは、モデル3と同じプラットフォームを共有しながら、より実用的な室内空間を提供しており、価格差も縮小傾向にあるため、購入時に迷う方も多いようです。
まとめ
テスラ モデル3 スタンダードモデルは、2025年10月7日に米国市場で発表された最新のエントリーグレードです。36,990ドル(約562万円)という価格設定により、従来のRWDモデルから約5,500ドルの値下げを実現し、より多くの人々にテスラ車を届けることを目指しています。15.4インチのタッチスクリーンを中心とした先進的なインテリア、EURO NCAP 5つ星の安全性能、オートパイロットによる運転支援機能など、テスラらしい魅力を備えています。ただし、現時点では米国市場専売となっており、日本での発売については未定です。テスラのグローバル戦略の一環として、今後の展開が注目されるモデルと言えるでしょう。



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