2025年12月10日、日産自動車は英国のAIスタートアップ企業Wayve(ウェイブ)社と、次世代運転支援システム「プロパイロット」の開発における協業契約を締結したと発表しました。この提携により、Wayveの先進的なエンボディドAI技術と日産が長年培ってきた自動運転技術が融合し、量産車への本格的な搭載に向けて大きく前進することになります。日産は2027年度に、この次世代プロパイロットを搭載した最初のモデルを国内市場に投入する計画です。

日産・Wayve 提携の概要:次世代プロパイロットに向けた自動運転AIシステムの導入
今回の協業契約では、WayveのエンボディドAIソフトウェアと日産の先進技術を融合させ、ADAS(先進運転支援システム)とポイント・ツー・ポイントの高度な自動運転を実現することが目指されています。日産とWayveは、「Wayve AI Driver」を日産の次世代プロパイロットシリーズに採用していくことで合意しました。
この協業は両社にとって重要な節目となります。日産は自動車メーカーとして初めて、幅広いセグメントの車種にWayveのAIシステムを大規模に導入することになり、Wayveにとっては自社技術が量産車へ本格的に搭載される画期的な機会となります。日産は今後、「Wayve AI Driver」の技術を活用することで次世代プロパイロットシリーズの機能や利便性をさらに向上させ、日本や北米をはじめとするグローバルな市場に投入していく方針です。

Wayveとは?Wayveが持つ革新的なAI技術
Wayveは2017年に英国ケンブリッジ大学の研究者たちによって設立されたAIスタートアップ企業で、本社はロンドンに置かれています。共同創設者でCEOのアレックス・ケンダル氏をはじめとする同社は、自動運転技術における新しいアプローチで注目を集めています。
Wayveの最大の特徴は「エンボディドAI」と呼ばれる技術を専門としている点です。Wayveは日本のソフトバンクグループをはじめ、マイクロソフト、NVIDIAなどの大手企業から13億ドル以上の資金調達を実現しており、英国AI企業としては史上最大級の投資を受けています。この圧倒的な資金力を背景に、自動運転分野における革新的な技術開発を推進してきました。
従来の自動運転システムは、高精度の3D地図データや膨大な手書きのルール、複雑なソフトウェアモジュールの組み合わせによって構成されています。しかしWayveのエンボディドAIは、まるで人間のように「経験から学ぶ」という手法を採用しています。カメラセンサーから得られる映像データと実際の運転経験を機械学習アルゴリズムで処理することで、AIが自ら運転技術を習得していくのです。
このシステムの優れた点は、予期せぬ状況や初めて遭遇する複雑なシーンにも柔軟に対応できることにあります。周囲の状況変化を学習し、次に起こることや自身の行動が及ぼす影響を予測する能力を持っているため、事前にプログラムされていない場面でも的確な判断を下すことができます。さらに、高精度地図を必要としないため、新しい都市や道路環境への適応も効率的に行えます。
安全性を核心に設計されたWayveのエンドツーエンド・エンボディドAIは、追加開発を最小限に抑えながら新しい車両プラットフォームへ効率的に適応できる柔軟性も備えています。こうした技術力が評価され、日産との大規模な協業につながりました。

プロパイロットの進化の歴史
日産のプロパイロットは、2016年にミニバン「セレナ」に初搭載されて以来、着実に進化を続けてきた運転支援システムです。当初は高速道路の単一車線でドライバーの運転をサポートする機能からスタートしましたが、2019年には高速道路の複数車線での運転支援とハンズオフ走行を可能にした「プロパイロット2.0」が登場しました。
この2.0は「スカイライン」に世界初搭載され、日産の技術力を象徴する先進装備として注目を集めました。これまで日産は、プロパイロットとプロパイロット2.0を顧客のニーズに合わせて幅広い車種に展開してきました。そして今回、その実績を土台に、AI技術を本格的に取り入れた次世代システムの開発へと舵を切りました。

次世代プロパイロットの実力
日産は2025年9月、Wayveの「Wayve AI Driver」ソフトウェアと、次世代LiDARを活用した独自のGround Truth Perception技術を組み合わせた次世代プロパイロットの試作車を公開しました。この試作車は、従来得意としていた高速道路だけでなく、市街地の複雑な道路環境においてもスムーズかつ安全な運転支援を実現したとされています。
次世代システムでは、カメラ、レーダー、LiDARといった多様なセンサー構成と組み合わせることで、幅広い車種でインテリジェントな運転を可能にします。プロパイロットシリーズのこれらの多様なセンサー構成とWayveのAI技術が統合されることで、より高度で信頼性の高い運転支援が実現されます。
量産車へのシステム搭載により、実世界の多様な走行条件からデータを収集し、継続的な改善を進めることができます。これは、AI技術の進化と日産の運転支援技術の競争力強化につながる重要な取り組みです。


グローバル展開と今後の展望
今回の協業により、次世代プロパイロットは日本や北米をはじめとするグローバル市場に投入される予定で、2027年度には国内で最初のモデルが販売される計画です。日産は幅広い車種にこの技術を搭載していくことで、より多くの顧客に安全で快適な運転体験を提供していきます。
日産の社長兼最高経営責任者であるイヴァン・エスピノーサ氏は、「日産が培ってきた高度な自動運転技術に、Wayveが誇る最先端のAI技術を組み合わせることで、クルマの運転支援をこれまでにない次元へと高めていきます」とコメントしています。両社が共同で開発する次世代プロパイロットを幅広い車種に搭載し、グローバルに展開することで、インテリジェントな未来の創造に貢献するとしています。
また、Wayve共同創設者兼CEOのアレックス・ケンダル氏も、「日産は、エンボディドAIの量産化に向け、世界の自動車メーカーの中で先頭を走っています」と述べ、両社の協力関係への期待を表明しました。Wayveの急速に進化するAIと、日産のエンジニアリング力とグローバルな展開力を融合することで、安全で心躍る自動運転モビリティの革新を加速させることができるとしています。
この提携は、日産がモビリティを革新し、よりクリーンで安全、自由な移動を実現していくための重要な一歩となります。AI技術と自動車技術の融合が、運転支援システムの新時代を切り開こうとしています。




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