日産の新型「ルークス」が2025年10月21日に発表から1か月での受注状況を公表し、11,344台という好調な滑り出しを見せていることが明らかになりました。さらに同年10月15日には、2025年度グッドデザイン賞の受賞も発表され、デザイン面でも高い評価を獲得しています。9月19日に発表された4代目の新型ルークスは、軽スーパーハイトワゴン市場において、デザイン性と先進技術の両面で注目を集める存在となっています。
発表1か月で受注1万1千台突破
新型ルークスは2025年9月19日の発表から約1か月後の10月19日時点で、受注台数が11,344台に達しました。この好調な受注状況は、日産が軽自動車市場において再び存在感を示す好材料となっています。なお、実際の納車開始は10月27日からとなっており、市場投入に向けた準備が着実に進められています。
受注の内訳を見ると、約8割のユーザーが上級グレードであるハイウェイスターシリーズを選択しており、その中でも「ハイウェイスターX」が27%、「ハイウェイスターG ターボ プロパイロットエディション」が26%と、この2グレードで過半数を占める状況です。これは、ユーザーが単なる実用性だけでなく、より高い質感や先進機能を求めている傾向を示しています。

2025年度グッドデザイン賞受賞
新型ルークスは、公益財団法人日本デザイン振興会が主催する「2025年度グッドデザイン賞」を受賞しました。受賞理由として、「かどまる四角」をモチーフとしたデザインやインテリアの先進感が高く評価されています。
審査員からは、「同社の『CUBE』を軽自動車の文脈に落とし込んだような印象」と評され、エクステリア・インテリアともに角を丸めた「かどまる四角」をモチーフに展開し、独自の表情を確立している点が称賛されています。特に、フロントはグリルとランプを面で連続させることで端正さと柔らかさを兼ね備え、ライトやホイール、ドアハンドルに至るまで同じモチーフを反復することで、デザイン全体に統一感を与えていることが評価のポイントとなりました。
インテリアについても、水平基調のパネルと大画面を融合し、シンプルでありながら広がりと先進感を両立している点が高く評価されています。また、ルーフ、Bピラー、ダッシュボードを繋ぐ「フロント・フレーム」デザインは、外の景色をまるで写真のように切り取る視覚体験を生み出し、兄弟車である三菱デリカミニとの差別化も明確であると評価されました。










日産ルークスとは? ルークスの歴史と進化
日産ルークスの歴史は2009年12月に初代が登場したことから始まります。当初はスズキからOEM供給されたパレットベースのモデルでしたが、2014年には日産と三菱自動車の合弁会社NMKVが開発した「デイズ ルークス」として生まれ変わりました。その後、2020年3月に3代目へとフルモデルチェンジし、車名から「デイズ」が外れ、再び「ルークス」の名称に戻っています。
そして今回発表された4代目は、5年ぶりの全面刷新となります。ルークス(ROOX)という名称は、「ROOM」と「MAX」を掛け合わせたもので、最大の部屋という意味があり、軽自動車としては非常に広い室内空間が特徴となっています。グレード名である「ハイウェイスター」は、エルグランドやセレナなど日産のミニバンに与えられてきた名称で、ルークスでは初の2列シート軽ミニバンとして、日産のミニバンラインアップの最下位と軽自動車ラインアップの最上位を兼ねるモデルとして位置付けられています。
新型ルークスの主な特徴
新型ルークスのボディサイズは、全長3,395mm×全幅1,475mm×全高1,785mmで、ホイールベースは2,495mm、乗車定員は4名です。デザインコンセプトは車名の由来である「Roomy×Max」で、軽規格の中で最大限の大きさを表現するデザインとなっています。
エクステリアでは、「かどまる四角」のデザインモチーフをヘッドランプ、リヤコンビネーションランプ、ドアハンドル、ホイールなど、あらゆるポイントに取り入れ、角張りながらも柔らかい印象を実現しています。また、日本の伝統的な建築様式である「唐破風(からはふ)」にインスピレーションを受けた新たな2トーンカラーを採用し、独自性を打ち出しています。
インテリアは、リビングルームのような心地よい空間を実現しており、水平基調のデザインと大型ディスプレイが特徴となっています。日産の軽自動車として初めて「インテリジェント アラウンドビューモニター」(移動物検知、3Dビュー機能付)を搭載し、12.3インチの大型ディスプレイや交差点での死角を「見える化」する「フロントワイドビュー」機能など、多くの先進運転支援技術を搭載しています。
パワートレーンは、従来型に採用されていたマイルドハイブリッドを廃止し、3気筒0.66リッターのノンターボエンジンが基本となりますが、ハイウェイスターにはインタークーラー付きターボエンジンも用意されています。ハイウェイスターXのノンターボモデルは、最高出力38kW(52ps)/6400rpm、最大トルク60Nm(6.1kgm)/3200rpmを発生し、WLTCモード燃費は21.0km/Lとなっています。
価格帯は167万2千円から236万3900円で、軽自動車としてはやや高額な設定となっていますが、装備内容や質感を考慮すれば妥当な価格帯と言えます。
受注動向から見えるユーザーニーズ
受注構成の詳細を見ると、ユーザーのニーズが明確に表れています。グレード別では、最廉価グレードのSが1%にとどまる一方、上級グレードのハイウェイスターシリーズが合計で80%を占めており、特にターボエンジン搭載モデルとプロパイロットエディションの人気が高いことがわかります。
ボディカラーでは、定番のホワイトパールが34%とトップですが、新規追加色のシナモンラテが8%で3位につけており、新しいカラー提案が市場に受け入れられていることが伺えます。2トーンカラーでは、新たに設定されたプレミアム2トーンの「ホワイトパール/フローズンバニラパール」が5%と最も多く選ばれており、上質感を求めるユーザーの志向が表れています。
年齢層別では、50代が29%と最も多く、次いで60代が24%、40代と30代以下がそれぞれ16%、70代以上が15%となっており、幅広い年齢層から支持を得ていることがわかります。特に50代から60代のミドル・シニア層が過半数を占めることは、生活にゆとりがあり、質の高い軽自動車を求める層が新型ルークスの主要なターゲットとなっていることを示しています。
メーカーオプションでは、「インテリジェント アラウンドビューモニター」がハイウェイスター購入者の約7割に装着されており、安全性や運転支援機能への関心の高さが明確に表れています。12.3インチの大型ディスプレイの見やすさや、交差点での死角を見える化する「フロントワイドビュー」機能への評価が高いことが、この高い装着率につながっています。

軽スーパーハイトワゴン市場での位置づけ
軽スーパーハイトワゴン市場は、軽自動車市場全体の約60%を占める最大セグメントとなっています。この市場では、ホンダN-BOX、スズキ・スペーシア、ダイハツ・タントといった強豪モデルが激しい競争を繰り広げており、2025年上半期の販売台数では、N-BOXが97,958台でトップを維持しています。
ルークスは2025年上半期で29,433台を販売し、市場シェア10.9%を獲得していますが、トップのN-BOXや2位のスペーシア(79,805台)と比較すると、まだ開きがある状況です。しかし、今回の新型モデル投入により、発表1か月で1万台を超える受注を獲得したことは、市場での巻き返しに向けた好材料となっています。
新型ルークスの最大の武器は、日産の軽自動車として初めて搭載された「インテリジェント アラウンドビューモニター」をはじめとする先進運転支援技術です。この技術導入は市場に新たな刺激を与え、他メーカーとの技術競争を加速させる要因となっています。また、「かどまる四角」という独自のデザイン言語により、競合他車との明確な差別化を図っている点も重要なポイントです。
日産の軽自動車戦略における意義
新型ルークスの成功は、日産の軽自動車事業全体にとって重要な意味を持ちます。日産は2014年以降、三菱自動車との合弁会社NMKVを通じて軽自動車開発を行ってきましたが、市場シェアではホンダやスズキ、ダイハツに大きく水をあけられている状況が続いていました。
今回の新型ルークスは、日産が主導的に企画・設計を行い、デザインや先進技術の面で独自性を打ち出したモデルです。グッドデザイン賞の受賞や好調な受注状況は、この戦略が市場に受け入れられたことを示しており、日産の軽自動車事業にとって大きな転換点となる可能性があります。
特に「インテリジェント アラウンドビューモニター」のような先進技術を日産の軽自動車に初めて搭載したことは、今後の軽自動車ラインアップ全体の技術水準を引き上げる契機となるでしょう。また、「かどまる四角」という明確なデザインアイデンティティを確立したことで、日産の軽自動車が市場で埋没せず、独自の存在感を示すことができています。
新型ルークスの成功は、日本の自動車市場において軽自動車が依然として重要なセグメントであり、技術とデザインの両面で進化し続けることで、ユーザーから高い評価を得られることを改めて証明しました。今後の販売動向が、日産の軽自動車戦略の方向性を左右する重要な指標となることは間違いありません。




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