スズキは2024年11月、イタリア・ミラノにて同社初となるバッテリーEV(BEV)の量産モデル「eVITARA(イーヴィターラ)」を世界初公開しました。この新型モデルは2025年春からインドのスズキ・モーター・グジャラート社で生産を開始し、同年夏頃から欧州、インド、日本など世界各国で順次販売が開始される予定です。

車の概要:スズキ eビターラとは?
スズキ eビターラ(eVITARA:イービターラ)は、2023年1月のインドAuto Expoと同年10月の日本のJAPAN MOBILITY SHOWで公開されたコンセプトモデル「eVX」をベースに開発された量産モデルで、スズキのBEV世界戦略車の第一弾として位置づけられています。VITARAは、1988年に初代モデルが登場して以来、グローバルで高い支持を得てきたスズキの代表的なSUVモデルです。
今回発表されたeVITARAは、従来の内燃機関モデルとは異なる、完全新規開発のEVプラットフォーム「HEARTECT-e」を採用した新しいシリーズとなります。「Emotional Versatile Cruiser」をコンセプトに掲げる新型eVITARAは、BEVならではの先進的なデザインと力強さを兼ね備え、フロントとリアに独立したeAxleを配置した電動4WDシステム「ALLGRIP-e」を搭載。49kWhのリン酸鉄リチウムイオンバッテリーを採用し、最高出力はグレードにより106kWから135kW(4WD)まで用意されています。また、全長4,275mm、全幅1,800mm、全高1,635mmのボディサイズで、ホイールベース2,700mmを確保し、広い室内空間を実現しています。
スズキ eビターラのエクステリアデザイン
スズキ eビターラ(eVITARA)のエクステリアデザインは、「High-Tech & Adventure」をテーマに、EVならではの先進性とSUVの力強さを融合させた斬新なデザインを採用しています。全長4,275mm、全幅1,800mm、全高1,635mmのボディサイズを持ち、大径タイヤと2,700mmのロングホイールベースを特徴とした存在感のある佇まいを実現しています。

フロントマスクは、EVらしい特徴的な造形を採用し、グリルレスのデザインとすることで空力性能の向上と先進性を表現。サイドビューでは、ロングホイールベースを活かしたプロポーションと、225/55 R18もしくは225/50 R19の大径タイヤを組み合わせることで、力強く冒険心を刺激するSUVらしいスタイリングを実現しています。また、最低地上高を180mmと十分に確保することで、オフロード走行にも対応可能な実用性も備えています。トレッドは前1,540mm、後1,545mmと広く設定され、安定性の高いスタンスを実現。これらの要素が相まって、アドベンチャー性と先進性を兼ね備えた印象的なエクステリアデザインとなっています。

スズキ eビターラのインテリアデザイン
スズキ eビターラ(eVITARA)のインテリアは、「High-Tech & Adventure」のデザインテーマを室内空間でも表現し、先進性とタフネスを融合させた空間デザインとなっています。最も特徴的なのは、先進装備として採用されたインテグレーテッドディスプレイです。このディスプレイは、運転に必要な情報を直感的に把握できるよう配置され、最新のインフォテインメントシステムとシームレスに統合されています。センターコンソールやインパネには、SUVらしいタフな印象のパネルを採用。これにより、アドベンチャー性の高いSUVとしての個性を室内でも演出しています。

2,700mmのロングホイールベースを活かした広い室内空間は、5名の乗員に快適な空間を提供。また、BEV専用プラットフォーム「HEARTECT-e」を採用したことで、フロア下メンバーを廃止し、効率的な室内レイアウトを実現しています。これにより、従来のICE(内燃機関)車と比べて、より効率的な空間活用が可能となっています。なお、乗車定員は5名で、EVならではの電気機器の配置を最適化することで、実用的な室内スペースと荷室容量を確保しています。

スズキ eビターラの走行性能
スズキ eビターラ(eVITARA)は、BEVならではの高い走行性能と、スズキSUVの伝統である優れた走破性を両立させています。パワートレインには、モーターとインバーターを一体化した高効率のeAxleを採用。グレードに応じて、2WDモデルでは106kWと128kWの2種類、4WDモデルでは最高出力135kW(フロント128kW+リア48kW)を設定しています。最大トルクは2WDモデルで189Nm、4WDモデルでは300Nmを発揮し、発進時からキビキビとした加速と、低速から高速までの力強い追い越し性能を実現しています。

特筆すべきは、スズキの強みである四輪駆動技術を活かして開発された電動4WDシステム「ALLGRIP-e」です。前後に独立した2つのeAxleを配置することで、パワフルな走りと緻密なトルクコントロールを可能にしています。さらに、Trailモードを搭載し、片輪が浮くような悪路でも、空転したタイヤにブレーキをかけ、反対側のタイヤに駆動トルクを配分するLSD機能により、スムーズな脱出を可能にしています。シャシー面では、前後にベンチレーテッドディスクブレーキを採用し、確実な制動力を確保。最小回転半径は5.2mに抑えられ、取り回しの良さも実現しています。また、225/55 R18もしくは225/50 R19の大径タイヤを装着し、優れた走行安定性と乗り心地を両立させています。

スズキ eビターラの価格
スズキ eビターラ(eVITARA)の価格は発表されていません。同クラスの相場からするとeビターラの価格は400-500万円程度からと想定されます。
スズキ eビターラの発売時期
スズキ eビターラ(eVITARA)2025年夏頃から欧州、インド、日本など世界各国で順次販売が開始されることが明らかにされています。
生産は2025年春よりインドのスズキ・モーター・グジャラート社で開始されます。これは、スズキのグローバルBEV戦略の重要な一歩として位置づけられています。

スズキ eビターラは日本で発売される?
スズキ eビターラ(eVITARA)は2025年夏頃から日本でも発売されることが公表されています。
スズキ eビターラの辛口評価
スズキ eビターラ(eVITARA)をあえて辛口で評価します。eVITARAは、バッテリー容量が49kWhと、同クラスの電気自動車としては控えめな容量設定となっています。同じコンパクトSUVのEVセグメントでは、多くのライバルが60-70kWh以上のバッテリーを搭載している中、この容量では航続距離で不利になる可能性があります。また、最高出力についても、トップグレードの4WDモデルでも135kW(約184PS)に留まっており、欧州市場の同クラスEVと比較すると、やや控えめな数値と言えます。車両重量は4WDモデルで1,860-1,899kgとなっており、この出力では力強い加速性能を期待するのは難しいかもしれません。

スズキ eビターラのライバル車
スズキ eビターラ(eVITARA)のライバル車として、以下のモデルが挙げられます:
- 現代自動車「KONA Electric」
同じコンパクトSUVセグメントで、より大容量のバッテリーオプションを用意し、航続距離で優位性を持ちます。 - MG「MG4 Electric」
中国SACIグループ傘下のMGが展開する電気自動車で、価格競争力が高く、より大容量のバッテリーオプションを提供しています。 - トヨタ「bZ3X」(発売予定)
トヨタが今後投入予定の同セグメントEVで、スズキにとって強力なライバルになると予想されます。
eビターラ(eVITARA)は、これらのライバル車と比較して、スズキの得意とする4WD技術を活かした「ALLGRIP-e」システムが特徴的な差別化ポイントとなっています。また、リン酸鉄リチウムイオンバッテリーの採用により、安全性と信頼性の面での優位性をアピールできる可能性があります。
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