日産自動車の中国合弁会社である東風日産は2025年10月16日、中国市場において新型「日産 ティアナ (Nissan TEANA)」を公開しました。日本市場では2020年7月に販売を終了したティアナですが、約7年ぶりに中国市場で復活を果たすことになります。新型ティアナは、新しいデザインを採用するとともに、ファーウェイの最新インテリジェント「HarmonySpace5.0」コックピットを中国の内燃機関車として初めて搭載し、先進的な装備が特徴となっています。東風日産は2025年内に中国市場での発売を予定しており、プレミアムセダン市場における日産の存在感を高める一台として注目されています。
車の概要:日産 ティアナとは?
日産 ティアナは、2003年2月に初代モデルが登場した高級セダンで、ローレルやセフィーロの後継モデルとして開発されました。「モダンリビング」というコンセプトのもと、洗練された大人のための高級セダンとして、快適な室内空間と上質な乗り心地を提供してきました。初代J31型(2003-2008年)、2代目J32型(2008-2014年)、3代目L33型(2014-2020年)と3世代にわたり進化を重ね、日本のみならず中国、タイ、台湾など世界各国で販売されました。中国市場では「天籟(Tian Lai)」という名称で親しまれており、プレミアムな快適性を提供する洗練されたセダンとして高く評価されてきました。日本市場では2020年7月に生産・販売を終了しましたが、今回発表された新型ティアナは第4世代に相当するモデルとして、中国市場専売車として復活することになります。

日産 ティアナのエクステリアデザイン
新型日産 ティアナのエクステリアは、シャープでエレガントなデザインが特徴です。フロントマスクには日産のデザインアイデンティティである「デジタルVモーション」を全面に押し出したフェイスを採用し、グリルの幅を拡大、ヘッドライトユニットをグリルの中に取り込む先進的なスタイルとなっています。上部には左右一体型の弧を描くイルミネーションも新たに配置され、モダンで洗練された印象を与えます。リアデザインは、日産の中国専売BEV「N7」と同様に、水平基調の左右一体型テールライトを採用し、トランクリッド側のレンズ内では「NISSAN」のイルミネーションが赤く輝く演出が施されています。ホイールは19インチと17インチの2種類が用意されており、それぞれティアナ専用のデザインとなっています。プレミアム感と洗練された美しさを表現するエクステリアは、中国市場の顧客ニーズに応える仕上がりとなっています。
日産 ティアナのボディサイズは、全長4920mm、全幅1850mm、全高1447mmです。


日産 ティアナのインテリアデザイン
新型日産 ティアナのインテリアは、多彩なインテリジェント機能による高い快適性を提供することを目指して設計されています。最大の特徴は、中国の内燃機関車として初めて搭載されるファーウェイの「HarmonySpace5.0」スマートコックピットです。この先進的なインテリジェントコネクティビティ機能により、最新のデジタル体験を車内で楽しむことができます。また、Huawei “SOUND” オーディオシステムを採用することで、プレミアムな音響空間を実現し、すべての乗員に上質なサウンド体験を提供します。歴代ティアナが大切にしてきた「おもてなし」の精神は新型モデルにも受け継がれており、中国市場で高く評価されてきたプレミアムな快適性を維持しながら、最新テクノロジーとの融合を果たしています。広々とした室内空間とホイールベース2825mmにより、後席の居住性も確保されており、中国のファミリー層が求める快適性を満たす設計となっています。
日産 ティアナの走行性能
新型日産 ティアナは、内燃機関(ICE)車として開発されており、洗練された走行性能を提供します。プレスリリースでは具体的なエンジンスペックは明記されていませんが、中国市場で販売されるセダンとして、スムーズで快適な走りが期待されます。日産は、グローバルな商品戦略を通じて、多様なパワートレインの選択肢を用意し、最適な市場に最適なタイミングで投入していく方針を掲げており、中国市場では先進的なICE車、ハイブリッド、革新的なEVを導入しています。ティアナは中国市場において、信頼性や知性、快適性を重視する顧客層をターゲットとしており、プレミアムセダンにふさわしい動力性能と燃費性能のバランスが図られていると考えられます。日産のCEOであるイヴァン エスピノーサ氏は、経営再建計画「Re:Nissan」を通じて、日産が提供する価値を再定義し、技術の先進性と顧客インサイトで中国市場において変革を推進していくことを強調しています。
価格
新型日産 ティアナの価格については、公表されていません。中国市場における現行のアルティマ(旧ティアナ)の価格帯は約18.88万元~23.98万元(約388万円~493万円)となっていますが、新型ティアナはアルティマの上位モデルとして位置づけられる見込みのため、これよりも高い価格設定となる可能性があります。一方で、中国メーカーとの競合を考慮し、価格競争力を保つために現行アルティマと同程度、もしくはやや抑えた価格設定となる可能性も指摘されています。東風日産は今後数週間以内に詳細を発表する予定としており、正式な価格発表が待たれるところです。参考までに、日本で販売されていた最終モデルの価格は約261万円~357万円でした。

発売時期
新型日産 ティアナの発売時期は、2025年内と発表されています。東風日産は2025年10月16日に新型ティアナを公開し、2025年内に中国市場で発売する予定としています。具体的には2025年第4四半期(10月~12月)の発売が予告されており、早ければ2025年11月から12月にかけて中国市場でのデリバリーが開始される見込みです。日産は中国市場をグローバル戦略の重要な柱と位置付けており、経営再建計画「Re:Nissan」の推進において、中国市場での新商品投入を加速させています。新型ティアナの投入により、中国のプレミアムセダン市場における日産のプレゼンスを高め、販売回復を図る狙いがあると考えられます。
日本で発売されるか
新型日産 ティアナが日本市場で発売される可能性は極めて低いと考えられます。今回発表された新型ティアナは、東風日産が中国市場専売車として開発・投入するモデルです。日本国内においてティアナは2020年7月に販売を終了しており、その後、日産は国内の大型FFセダン市場から撤退しています。日本市場ではセダンの需要が減少傾向にあり、日産は2014年に3代目ティアナを日本で発売した際も、世界デビューから1年8カ月遅れの投入となり、月間販売計画はわずか520台と控えめでした。現在の日産の経営方針では、より明確に焦点を絞った商品戦略を通じて、最適な市場に最適なタイミングで商品を投入する方針を掲げており、セダン需要が高い中国市場に注力する姿勢を示しています。日本市場での大型セダンのニーズに対しては、後輪駆動ベースのスカイラインが実質的な代替車種として位置づけられています。
辛口評価
日産 ティアナをあえて辛口で評価します。新型ティアナの最大の課題は、市場の限定性にあります。中国市場専売車として開発されたことで、グローバルな展開が見込めず、開発コストの回収効率が限定的になる可能性があります。また、フロントデザインに採用された「デジタルVモーション」は先進的である一方、グリルの幅が拡大されすぎており、賛否が分かれるデザインとなっています。中国市場では押し出し感の強いフロントマスクが好まれる傾向にありますが、ティアナが伝統的に大切にしてきた上品で洗練されたデザイン哲学からは離れてしまった印象を受けます。さらに、ファーウェイの「HarmonySpace5.0」を搭載することは先進性を示す一方で、日産独自の技術開発力の不足を露呈しているとも言えます。中国市場では地元メーカーが高品質で低価格なセダンを次々と投入しており、日本ブランドのプレミアム性だけでは差別化が困難になっています。価格設定次第では、トヨタ カムリやホンダ アコードといった伝統的なライバルに加え、BYDなどの中国メーカーとの激しい競争に直面することになるでしょう。
日産 ティアナのライバル車
新型日産 ティアナの主なライバル車は、中国市場で販売されるミドルサイズセダンです。最大のライバルはトヨタ カムリで、世界的に高い評価を得ている信頼性と洗練されたデザインで中国市場でも人気を博しています。カムリは全幅1840mm、全長4885mm~4910mmと、ティアナとほぼ同等のボディサイズを持ち、ハイブリッドシステムによる優れた燃費性能も武器としています。次にホンダ アコードが挙げられます。アコードは走りの質感と広い室内空間で知られ、中国市場でも根強い支持を得ています。スポーティーなデザインと実用性のバランスが取れた一台として、ティアナと同じ顧客層をターゲットとしています。その他、現代自動車のソナタやフォルクスワーゲンのパサートも重要な競合車種です。特に注目すべきは、BYDをはじめとする中国メーカーの台頭で、高品質ながら価格競争力に優れたセダンが次々と投入されており、日産ティアナにとって大きな脅威となっています。ティアナが成功するためには、これらのライバル車に対して、デザイン、先進技術、価格のバランスで優位性を示す必要があります。
まとめ
2025年10月16日に東風日産が公開した新型日産 ティアナは、約7年ぶりに復活を果たすプレミアムセダンです。シャープでエレガントな新デザインと、ファーウェイの最新「HarmonySpace5.0」スマートコックピットを搭載し、中国市場のニーズに応える先進的な装備が特徴となっています。全長4920mm、全幅1850mm、全高1447mmのボディサイズは、現行アルティマよりも全長が14mm延長され、より伸びやかなプロポーションを実現しました。2025年内に中国市場での発売が予定されており、トヨタ カムリやホンダ アコードなどのライバル車との競争が激化することが予想されます。日産の経営再建計画「Re:Nissan」において、中国市場は重要な柱と位置づけられており、新型ティアナは日産の中国事業における存在感を高める重要な一台として期待されています。日本市場での発売可能性は低いものの、中国市場においてティアナの伝統を受け継ぐプレミアムセダンとして、その動向が注目されます。



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