フォルクスワーゲンの商用車部門であるフォルクスワーゲン・コマーシャル・ビークルズは2024年8月1日、新しい第7世代トランスポーターの初公開の写真を発表しました。この新型トランスポーターは、パネルバン、コンビ、ドロップサイド、そしてキャラベルのモデルとして登場します。先代モデルと比較して、あらゆる技術的詳細と機能が改良されており、より多くのスペース、最大積載量、牽引能力、効率性を提供します。

車の概要:フォルクスワーゲン トランスポーターとは?
フォルクスワーゲン トランスポーター(Volkswagen Transporter)は、1950年に初代モデルが登場して以来、70年以上にわたり商用車の代名詞として親しまれてきました。通称「ブリ」の愛称で呼ばれ、日本では「ワーゲンバス」「サンババス」「デリバス」などと称されています。
今回発表された第7世代トランスポーターは、パワートレインが多様化されました。最新のターボディーゼルエンジン(TDI)に加え、プラグインハイブリッド(PHEV)、そして電気自動車(EV)のバージョンがラインナップ。これは、フォルクスワーゲンのバンとしては初めての試みとなります。新型トランスポーターのサイズは、全長5,050mm(先代比146mm増)、ホイールベース3,100mm(97mm増)となり、より広々としたスペースを確保しています。また、最大積載量は1.33トン、牽引能力は最大2.8トンと、実用性も大幅に向上しています。デザイン面では、先代モデルT6.1のDNAを受け継ぎながら、よりモダンで洗練された外観に仕上げられています。インテリアも大幅に刷新され、12インチのデジタルインストルメントクラスターや13インチのインフォテインメントディスプレイなど、最新のテクノロジーが標準装備されています。この新型トランスポーターは、ID. BuzzやMultivanと並んで、フォルクスワーゲンの最新バンラインナップを完成させる重要なモデルとなります。商用車としての実用性はもちろん、乗用車としての快適性も兼ね備えた、まさに次世代のマルチパーパスビークルと言えるでしょう。
フォルクスワーゲン トランスポーターのエクステリアデザイン
新型VWトランスポーターのエクステリアデザインは、先代モデルのDNAを受け継ぎながら、より洗練されたモダンな外観に進化しています。
フロントデザインは、特徴的な横長のヘッドライトとラジエーターグリルが一体となった造形が目を引きます。LEDヘッドライトが標準装備され、上位グレードではLEDマトリックスヘッドライトも選択可能です。フロントバンパーは、車種やグレードによって異なるデザインが採用されており、例えばパネルバンではよりシンプルで実用的な造形、カラベルではクロームラインを配したエレガントな仕上げとなっています。

サイドビューでは、ウィンドウ下部に特徴的な「ブリライン」と呼ばれるキャラクターラインが走っています。これは初代T1から受け継がれてきたデザイン要素で、上部と下部のボディを視覚的に分割する役割を果たしています。また、ヘッドライトからリアまで伸びるシャープなショルダーラインも、ダイナミックな印象を与えています。
リアデザインは、C字型のLEDテールランプが特徴的です。テールゲートには横長のハンドルが配置され、ナンバープレート上部にはブラックのストリップが走っています。これらの水平ラインがリア全体に一体感をもたらし、フォルクスワーゲンのロゴを際立たせています。

ボディカラーは、ソリッドカラー、メタリックカラー、パールエフェクトカラーなど、幅広いバリエーションが用意されています。また、ツートンカラーも選択可能で、ルーフを異なる色で塗装することができます。ホイールは16インチから19インチまでのサイズが用意され、デザインも多彩です。特に19インチの「インディアナポリス」アロイホイールは、ブラックのスポークとダイヤモンドカット仕上げのリムが印象的です。
フォルクスワーゲン・コマーシャル・ビークルズのアルバート・キルツィンガー・チーフデザイナーは、「完全に新しいトランスポーターで、私たちのアイコンのDNAを現代に引き継いでいます」と説明しています。
フォルクスワーゲン トランスポーターのボディサイズ
新型トランスポーターのサイズは、全長:5,050mm(ロングホイールベース:5,450mm)、全幅:2,032mm、全高:1,990mmです。
フォルクスワーゲン トランスポーターのインテリアデザイン
新型VWトランスポーターのインテリアは、機能性と快適性を高次元で両立させた洗練されたデザインとなっています。従来のトランスポーターのDNAを受け継ぎながら、最新のテクノロジーを取り入れ、より使いやすく、より快適な空間を実現しています。
デジタルコックピット
運転席周りは、完全にデジタル化されたコックピットが特徴的です。12インチのデジタルインストルメントクラスターと13インチのタッチスクリーン式インフォテインメントシステムが標準装備され、ドライバーに必要な情報をクリアに表示します。これらのディスプレイは同一の視線軸上に配置されており、運転中の視線移動を最小限に抑えています。

操作性と機能性
ステアリングホイールには、手袋をしたままでも操作しやすい物理ボタンが配置されています。これは、最近の乗用車で採用されているタッチ式ボタンとは一線を画す、実用的な設計です。また、電子パーキングブレーキとオートホールド機能が標準装備され、ダッシュボードに配置されたスイッチで操作できるようになりました。これにより、従来のハンドブレーキレバーがなくなり、キャビン内のスペースが広くなっています。
また新型トランスポーターは、用途に応じて2人乗りから6人乗りまで、さまざまなシート構成が可能です。パネルバンタイプでは、標準で運転席と助手席の2シートが装備されますが、オプションで助手席側に2人掛けベンチシートを選択することもできます。また、2列目に最大3つの取り外し可能な個別シートを装備することができ、多様なニーズに対応します。
素材とカラーリング
インテリアには、耐久性の高い素材が使用されながらも、スタイリッシュなデザイン要素が取り入れられています。ダッシュボードやドアパネルには、「ダークウッドグレインオプティック」や「メタルグリッド」といった新開発のトリムが採用され、高級感を演出しています。シートは、コントラストの効いた2トーンカラーのデザインが特徴的で、オプションで「サボナ」レザーシートも選択可能です。
収納スペース
実用性を重視し、キャビン内には多数の収納スペースが設けられています。ダッシュボード上部には実用的な収納コンパートメントが配置され、センターコンソールには大型のカップホルダーが設置されています。これらの収納スペースにより、日常的に使用するアイテムを手の届きやすい場所に収納できます。
アンビエント照明
インテリア照明にもこだわりが見られます。LED室内灯が標準装備され、快適な室内環境を提供します。上位グレードでは、アンビエントライティングも選択可能で、より洗練された雰囲気を演出することができます。
フォルクスワーゲン トランスポーターの走行性能
新型VWトランスポーターは、商用車でありながら乗用車のような洗練された走行性能を実現しています。特に注目すべきは、多様な駆動システムと優れたハンドリング性能です。
多彩なパワートレイン
新型トランスポーターは、従来のディーゼルエンジンに加え、プラグインハイブリッドや完全電動モデルも用意されています。これはフォルクスワーゲンのバンとしては初めての試みとなります。ディーゼルエンジンは2.0リッターTDIで、81kW(110PS)、110kW(150PS)、125kW(170PS)の3種類のパワーバリエーションが用意されています。これらのエンジンは、十分なトルクと燃費性能を両立し、積載時でも力強い走りを実現します。プラグインハイブリッドモデル(eHybrid)は、システム出力171kW(232PS)を誇り、市街地での静粛性と長距離走行時の効率性を両立しています。さらに、完全電動モデルも3種類のパワーバリエーションが予定されており、100kW(136PS)、160kW(218PS)、210kW(286PS)の出力が選択可能です。これらの電動モデルは、64kWhのバッテリー容量を持ち、ゼロエミッションでの走行を可能にします。

優れた操縦性
新型トランスポーターは、完全に新設計された電動パワーステアリングを採用しています。これにより、低速時の軽快な操作性と高速時の安定性を両立しています。特に市街地での取り回しが向上し、11.8メートルという小回り性能を実現しています。サスペンションも改良され、荷物の積載状況に関わらず、快適な乗り心地を提供します。特に長距離走行時の疲労軽減に貢献しています。
駆動方式
標準的なフロントホイールドライブに加え、4MOTIONと呼ばれるオールホイールドライブシステムもオプションで選択可能です。これにより、悪路や滑りやすい路面でも安定した走行が可能となります。
トランスミッション
ディーゼルエンジンモデルでは、6速マニュアルトランスミッションが標準装備されますが、上位グレードでは8速オートマチックトランスミッションも選択可能です。プラグインハイブリッドモデルと電動モデルは、専用のオートマチックトランスミッションが標準装備されます。
高い積載能力と牽引性能
新型トランスポーターは、最大積載量が1.33トンまで向上しています。さらに、牽引能力も最大2.8トンまで引き上げられ、先代モデルの2.5トンから大幅に向上しています。これにより、より多くの荷物や機材を効率的に運搬することが可能となりました。
フォルクスワーゲン トランスポーターの価格
新型フォルクスワーゲン トランスポーターの価格は、ドイツでの最低価格が36,780ユーロ(約620万円)からとなっています。これは先行販売時の価格であり、グレードや仕様によって価格は上昇します。グレードごとの価格は以下の通りです:

フォルクスワーゲン トランスポーターの発売時期
新型トランスポーターは、2024年9月に正式発表される予定です。ドイツでは既に先行販売が開始されており、他の欧州諸国でも順次販売が開始されると見られています。
フォルクスワーゲン トランスポーターは日本で発売される?
現時点で、新型VWトランスポーターの日本での正規販売は予定されていません。フォルクスワーゲンのLCV(Light Commercial Vehicle)系モデルは、T4の前期型以降、日本に正規導入された実績がありません。しかし、並行輸入での入手は可能です。日本の輸入業者を通じて、欧州仕様や英国仕様のトランスポーターを個人輸入することができます。
フォルクスワーゲン トランスポーターの辛口評価
新型トランスポーターをあえて辛口で評価します。
まず、価格設定が高めです。基本モデルでも36,780ユーロ(約620万円)からと、同クラスの競合車と比べると割高感があります。高品質な仕上がりや先進技術の搭載を考慮しても、中小企業や個人事業主にとっては大きな投資となる可能性があります。
また、エンジン音が比較的大きいという指摘があります。特に冷間時のノイズが目立つようで、静粛性を重視するユーザーにとっては気になる点かもしれません。さらに、
電動化モデルについては、航続距離や充電インフラの整備状況によっては、長距離の業務用途には適さない可能性があります。特に、地方での使用を考えている事業者にとっては、この点は慎重に検討する必要があるでしょう。

フォルクスワーゲン トランスポーターのライバル車
新型VWトランスポーターの主要なライバル車として、以下のモデルが挙げられます。
- フォード・トランジット・カスタム:
- 優れた走行性能と燃費効率で知られています。
- 幅広いバリエーションと使いやすさが特徴です。
- 価格設定がトランスポーターよりも若干抑えめです。
- メルセデス・ベンツ・ビト:
- 高級感のある内装と快適な乗り心地が特徴です。
- 安全性能が高く評価されています。
- トランスポーターと同様に、価格帯は比較的高めです。
- ルノー・トラフィック:
- 燃費性能に優れ、経済的な運用が可能です。
- 広々とした荷室スペースが特徴です。
- 価格設定が比較的リーズナブルです。
- プジョー・エキスパート / シトロエン・ディスパッチ / トヨタ・プロエース:
- 3ブランドで共同開発されたモデルで、コストパフォーマンスに優れています。
- 最新の安全技術と快適装備を備えています。
- トランスポーターよりも価格帯が抑えめです。
- 日産・NV300:
- 実用性と経済性のバランスが取れています。
- 広い荷室と使いやすいインテリアが特徴です。
- 価格設定が比較的手頃です。
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