メルセデス・ベンツは2025年9月7日、ドイツ・ミュンヘンで開催された「IAAモビリティ2025」において、同社の中核モデルである新型SUV「メルセデス・ベンツ GLC with EQテクノロジー(Mercedes-Benz GLC with EQ Technology)」を世界初公開しました 。この新モデルは、販売終了となったEQCの実質的な後継車として位置づけられ、2026年前半から販売を開始する予定です 。長年にわたってメルセデス・ベンツの世界的ベストセラーモデルとして君臨してきたGLCシリーズに、ついに完全電動モデルが加わることとなり、プレミアム電動SUV市場における同社の戦略を大きく変える革新的なモデルとなっています 。
車の概要:メルセデス・ベンツ GLC with EQテクノロジーとは?
メルセデス・ベンツ GLCシリーズは、2015年に初代モデル(X253)がデビューし、2023年に現行の2代目(X254)へとフルモデルチェンジを果たしています 。GLKクラスの後継車種として登場したGLCは、Cクラスベースのプラットフォームを採用したミドルサイズSUVとして、世界中で高い人気を誇ってきました 。初代モデルは全世界累計で260万台以上を販売し、2021年と2022年にはメルセデス全ラインナップ中で販売台数1位を記録する大ヒット作となりました 。
今回発表されたGLC with EQテクノロジーは、第3世代目にあたる完全電動モデルです 。同社は「目的意識が高く、洗練され、紛れもなくGLC」と表現するこの新モデルは、従来のGLCファンが愛してきた要素をすべて継承しながら、最新の電動化技術とAI駆動のMB.OSシステムを搭載しています 。現行の内燃機関搭載GLCとの併売が予定されており、顧客にとってより幅広い選択肢を提供することになります 。


メルセデス・ベンツ GLC with EQテクノロジーのエクステリアデザイン
新型GLC with EQテクノロジーの最も印象的な特徴は、メルセデス・ベンツの顔となる新しいアイコニックグリルです 。このグリルには942個のポリカーボネート製バックライトドットが配置され、高度なピクセルグラフィック表示が可能となっています 。オプションでこれらのドットをアニメーション化することができ、車両の解錠時や充電時に魅力的な光の演出を楽しむことができます 。
フロントデザインは、照明付きの中央スターと統合された輪郭照明を特徴とし、国により部分的または完全に照明が施されます 。標準装備のフルLEDヘッドライトに加え、オプションでマイクロLED技術を採用したDIGITAL LIGHTも選択可能です 。
リアビューは革新的な2パート構造のテールライトが特徴で、魅力的なスターモチーフが昼夜問わず目を引きます 。オプションの照明付きグリルと組み合わせることで、車両の解錠時や充電時にアニメーション表示が可能となります 。
新型メルセデス・ベンツ GLC with EQテクノロジーのボディサイズは、全長4,720mm、全幅1,890mm、全高1,640mmと、現行GLCとほぼ同等のサイズを維持しています 。






メルセデス・ベンツ GLC with EQテクノロジーのインテリアデザイン
新型GLC with EQテクノロジーのインテリアは、メルセデス・ベンツのデザイン哲学「Sensual Purity」を新たなレベルへと昇華させています 。最大の特徴は、車幅全体に渡って配置された新開発のシームレスMBUX HYPERSCREENです 。この99.3センチメートル(39.1インチ)のディスプレイは、メルセデス・ベンツ史上最大のスクリーンとなっています 。
高解像度と革新的なマトリックスバックライト技術により、1,000個以上の個別LEDを使用して例外的な鮮明さを実現しています 。ゾーンディミング機能により、スライダーを使用して2つのディスプレイエリアを同時に調整することが可能です 。
座席に関しては、従来モデルより大幅に居住性が向上しています 。ホイールベースが84mm延長されたことで、前席では13mmの追加レッグルームと46mmの追加ヘッドルームを確保し、後席では47mmの追加レッグルームと17mmの追加ヘッドルームを実現しています 。
特筆すべきは、世界初となる独立認証されたビーガンインテリアパッケージの採用です 。The Vegan Societyによって認証されたこのオプションパッケージは、シート張り材からヘッドライナー、ピラーやドアパネル、カーペットに至るまで、すべてのソフトタッチ表面材に動物由来の製品を一切使用していません 。





メルセデス・ベンツ GLC with EQテクノロジーの走行性能
市場導入時に提供されるトップモデル「GLC 400 4MATIC with EQテクノロジー」は、360kWの最高出力を誇り、WLTPサイクルで最大713kmの航続距離を実現します 。この性能は暫定値であり、正式な認証値とは異なる可能性があります 。
電動パワートレインの核心となる800ボルトシステムは、効率性とパフォーマンスを最大化し、新世代バッテリーと組み合わせることで充電時間を大幅に短縮します 。94kWhの使用可能エネルギー容量を持つリチウムイオンバッテリーを搭載し、最大330kWのDC急速充電に対応しています 。予測では、10分間の充電で最大303kmの航続距離を回復できるとされています 。
駆動システムは、リアに2速ギアボックスを搭載した電動ドライブユニットを配置し、ダイナミズムと効率性を両立させています 。第1ギア(11:1)は優れた発進加速と市街地での高効率を実現し、第2ギア(5:1)は高速域でのパワーデリバリーと高速道路での優れた効率性を提供します 。全輪駆動モデルには、必要に応じてほぼ瞬時に接続・切断するディスコネクトユニット(DCU)を装備したフロント駆動ユニットも搭載されています 。

メルセデス・ベンツ GLC with EQテクノロジーの安全性能・運転支援
新型GLC with EQテクノロジーには、最大10台の外部カメラ、5つのレーダーセンサー、12個の超音波センサーを活用したMB.DRIVEシステムが搭載されています 。これらすべてが高性能制御ユニットに接続され、MB.OSによって動作し、車両の頭脳として機能します 。
AIを活用してセンサーからの膨大な生データを処理し、交通状況を理解するMB.DRIVEシステムは、完全に集中し、常に警戒し、電光石火の反応速度を誇ります 。MBUX Surround Navigationにより、ドライバーは車両が周囲から検出した内容を常に把握でき、システムへの信頼性が高まります 。
標準装備として、世界中でセンターエアバッグを含む包括的な安全装備を提供しています 。側面衝突時にドライバーと助手席乗員の相互作用による負傷を避けるためのセンターエアバッグは、新たに標準装備となりました 。助手席にはニーエアバッグも利用可能です 。
事故が発生する前に危険に反応するPRE-SAFE®システムも標準装備されており、潜在的な衝突前の重要な状況において窓とサンルーフを閉じ、リバーシブルベルトテンショナーでシートベルトを事前に張り、助手席をより直立した位置に移動させるなどの機能を備えています 。

メルセデス・ベンツ GLC with EQテクノロジーの価格
現時点でメルセデス・ベンツ GLC with EQテクノロジーの公式価格は発表されていません 。しかし、現行GLCクラスの価格帯(819万円~)を考慮すると、新型メルセデス・ベンツ GLC with EQテクノロジーの価格は1000万円前後からの設定になると予想されています 。
参考として、現在日本で販売されている従来型GLCの価格帯は以下の通りです:
- GLC220d 4MATIC Core:819万円
- GLC220d 4MATIC:867万円
- GLC350e 4MATIC Sports Edition Star:1013万円~
電動化技術と高度なテクノロジーを搭載していることを考慮すると、GLC with EQテクノロジーはプレミアム価格帯での展開が予想されます 。
メルセデス・ベンツ GLC with EQテクノロジーの発売時期
メルセデス・ベンツ GLC with EQテクノロジーは、2026年前半からグローバル市場での販売が開始される予定です 。ドイツ・ブレーメン工場での生産が計画されており、従来型GLCと同じ生産ラインで柔軟に製造される予定です 。
生産はネットカーボンニュートラルで行われ、工場は100%グリーン電力で供給されます 。電動ドライブユニットはルーマニアのセベス工場から、電動アクスルはハンブルク工場から、バッテリーはカメンツ工場から供給される予定です 。
メルセデス・ベンツ GLC with EQテクノロジーは日本で発売されるか
現時点で、メルセデス・ベンツ GLC with EQテクノロジーの日本市場への導入について公式な発表はありません 。しかし、GLCシリーズが日本市場において非常に高い人気を誇っていることを考慮すると、日本発売の可能性は高いと考えられます 。
日本では2024年上半期の輸入車モデル別新規登録台数でGLCが3位に入るなど、同モデルへの需要は確実に存在します 。メルセデス・ベンツ日本は、市場のニーズに応じて電動モデルの導入を進めており、GLC with EQテクノロジーの日本導入についても前向きに検討されることが期待されます。
ただし、充電インフラの整備状況や日本の電動車普及政策との兼ね合いもあり、導入時期については慎重な検討が必要とされるでしょう。

メルセデス・ベンツ GLC with EQテクノロジーをあえて辛口で評価します
メルセデス・ベンツ GLC with EQテクノロジーをあえて辛口で評価します。まず価格面では、予想される1000万円前後という価格設定は、同クラスの他の電動SUVと比較して決して安くはありません 。テスラ モデルYなどの競合モデルがより手頃な価格で高性能を提供している中、メルセデスブランドのプレミアムだけでこの価格差を正当化できるかは疑問です 。
デザイン面では、942個のLEDドットを配したグリルは確かに印象的ですが、過度に派手で実用性に疑問符が付きます 。このような装飾的な要素は故障のリスクを高める可能性があり、長期的な信頼性への影響が懸念されます。
また、39.1インチの巨大スクリーンは技術的には impressive ですが、運転中の集中力散漫や操作の複雑化を招く可能性があります 。シンプルで直感的な操作性を犠牲にしてまで大型化を図る必要があったのか疑問です。
航続距離713kmという数値も魅力的ですが、これは理想的な条件下での数値であり、実際の使用環境では大幅に短縮される可能性が高いでしょう 。特に日本の気候条件や運転パターンを考慮すると、カタログ値と実用値のギャップが大きくなる可能性があります。
メルセデス・ベンツ GLC with EQテクノロジーのライバル車
メルセデス・ベンツ GLC with EQテクノロジーの主要なライバルとして、まず挙げられるのが新型BMW iX3です 。両車は同じくドイツの老舗プレミアムブランドが手掛ける電動SUVとして、直接的な競合関係にあります。BMW iX3は800ボルトプラットフォームを採用し、先進的なデザインと技術で対抗してきます 。
アウディからはe-tron Q5やQ4 e-tronが競合車として位置づけられ、フォルクスワーゲングループの電動化技術を背景に高い競争力を持っています。特にQ4 e-tronは価格競争力に優れ、実用性でも高い評価を得ています。
アメリカ勢では、テスラ モデルYが最大の脅威となります 。価格面での優位性と充電インフラの充実、そして継続的なソフトウェアアップデートによる機能向上で、プレミアムブランドに対しても強力な競争力を持っています。
中国系電動車メーカーも無視できない存在です。BYDやNIOなど、先進的な電動化技術と魅力的な価格設定で、従来のプレミアムブランドに挑戦状を叩きつけています 。
韓国のジェネシスGV70電動版やヒュンダイのIONIQ 5も、デザイン性と技術力で注目を集めており、GLCにとって侮れないライバルとなっています。

まとめ
メルセデス・ベンツ GLC with EQテクノロジーは、同社の電動化戦略における重要な転換点となる革新的なモデルです。2025年9月7日の世界初公開以降、942個のLEDドットを配した印象的なグリルや39.1インチの巨大ハイパースクリーン、そして713kmの航続距離を誇る先進的な電動パワートレインで大きな注目を集めています。2026年前半からの販売開始が予定されており、予想価格は1000万円前後からとなる見込みです。BMW iX3やテスラ モデルYなど強力なライバルとの激しい競争が予想される中、メルセデスブランドならではの上質さと先進技術の融合が市場でどのような評価を受けるかが注目されます。日本市場への導入についても期待が高まっており、プレミアム電動SUV市場の新たな選択肢として大きな影響を与えることが予想されます。
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