2025年10月13日、トヨタ自動車は自社メディア「トヨタイムズ」のYouTube生配信を通じて、衝撃的な発表を行いました。同社の最高級車「センチュリー」を、トヨタブランドから独立した独自のブランドとして展開するというのです。この発表に合わせて公開されたのは、鮮烈なオレンジ色のボディを纏った2ドアクーペのコンセプトカーで、従来の黒塗りセダンというイメージを一新する存在感を放っています。
また、新たなセンチュリーブランドのブランドCMを公開しました。
センチュリーとは?歴史と新たな位置づけ
センチュリーは、1967年にトヨタグループの創始者である豊田佐吉の生誕100周年を記念して誕生した最高級セダンです。皇室や官公庁、企業などでショーファーカー(運転手付き車両)として使用され、日本の格式と伝統を体現する存在として半世紀以上にわたって愛されてきました。現在はセダンとSUVの2タイプが展開されていますが、今回の発表により、センチュリーはトヨタブランドの一車種ではなく、レクサスやGRと並ぶ独立したブランドとして位置づけられることになります。
豊田章男会長は生配信の中で、センチュリーを「レクサスの上位」に位置づけることを明言しました。これまでレクサスがトヨタの高級車ブランドとして長男のような役割を担ってきましたが、センチュリーが頂点に君臨することで、レクサスはより自由に大胆な挑戦ができるようになるといいます。このブランド戦略の転換により、トヨタは「トヨタ」「レクサス」「センチュリー」「GR」「ダイハツ」の5ブランド体制を明確化しました。

新型モデルオレンジ色のセンチュリー クーペが象徴する新たな挑戦
今回公開されたセンチュリー クーペは、全長約5,000ミリメートル、全幅約1,990ミリメートル、全高約1,430ミリメートルという堂々たるボディサイズを持ち、ホイールベースは約2,900ミリメートルと予想されています。4人乗りの2ドアクーペとして設計され、運転する楽しさと長距離でも快適なドライブを両立させることを目指しています。
特に目を引くのは、その鮮やかなオレンジ色のボディカラーです。従来のセンチュリーといえば黒塗りが定番でしたが、この大胆な色彩は新しい時代の幕開けを象徴しています。トヨタのチーフブランディングオフィサーであるサイモン・ハンフリーズ氏は、生配信の中でセンチュリーの新CM制作について語りました。CMでは、センチュリーの誕生から初代モデル、そして現代へと続く歴史をモノクロからカラーへの転換で表現し、「生まれ変わることでしか歴史は継げない」というメッセージを込めたといいます。




日本の美意識と匠の技が生み出す唯一無二の存在
センチュリーブランドのCMには、「ただ一つの道を、ただ一人のあなたと」「日本にしか作れないものがきっとある」という言葉が使われています。これは、センチュリーが単なる高級車ではなく、日本人の美意識と誇りを体現する「ワンオブワン」の存在であることを示しています。ハンフリーズ氏は、「日本人の国民のみんなが、これを見て自分の心の中にプライドを感じていただきたい」と語り、センチュリーを通じて日本の伝統と技術を世界に発信したいという思いを明らかにしました。
初代センチュリーは、豊田英二名誉会長と中村健チーフエンジニアの二人が情熱を注いで作り上げたもので、その精神は現代にも受け継がれています。最高級の本革や職人技による木目パネル、ジャガード織のウール地など、細部にまでこだわった内装は「走る美術工芸品」と称されるほどの完成度を誇ります。

ジャパンモビリティショー2025での披露
センチュリー クーペのコンセプトカーは、2025年10月30日から東京都内で開催される「ジャパンモビリティショー2025」で正式に披露されます。同イベントでは、レクサスの6輪電気自動車「LSコンセプト」や次期カローラのコンセプトカーなども展示され、トヨタの新たなブランド戦略の全貌が明らかになる予定です。
豊田会長は、センチュリーのブランド化について「ある時期から、センチュリーの居場所がはっきりしてなかった」と振り返り、今回の独立によって「あなたの居場所はここ」と明確にすることができたと語りました。世界のマイバッハやロールスロイスと肩を並べる存在を目指すこの挑戦は、日本の自動車業界に新たな歴史を刻むものとなるでしょう。

未来への期待
センチュリー クーペの発売時期や価格については、まだ正式な発表はありません。しかし、豊田会長は生配信の中で「コンセプトカーは必ず本気でやっている」と明言しており、市場の反応次第では量産化が実現する可能性は高いと見られています。
日本の伝統美と最新技術を融合させたセンチュリーの新たな挑戦は、自動車ファンだけでなく、日本の文化や技術に誇りを持つ多くの人々の注目を集めています。オレンジ色のクーペが切り開く新時代のセンチュリーから、今後も目が離せません。




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