トヨタはTOYOTA GAZOO Racing(TGR)が開発した、進化した新型GRヤリスを2024年4月8日より販売開始することを発表しました。さらに2024年3月21日より、新しくなったGRヤリスを基に、TGR World Rally Team(TGR-WRT)の選手が監修した、限定版特別仕様車、GRヤリス RZ「High performance・Sébastien Ogier Edition」(通称:オジエEdition)およびGRヤリス RZ「High performance・Kalle Rovanperä Edition」(通称:ロバンペラEdition)の抽選による申し込み受付を、全国のGR Garage店頭で、各100台限定で開始しました。

進化を遂げたGRヤリスならびに、世界ラリー選手権(WRC)のドライバーによる監修を受けた特別版車両のリリースは、モータースポーツから得られる貴重な知見を基に、より優れた自動車を開発するTGRの姿勢を象徴しています。TGRは2020年のGRヤリスのデビュー以来、モータースポーツの世界に積極的に参加し、過酷な環境下での試行錯誤を重ねてきました。プロドライバーや評価ドライバー、さらには会長である豊田章男氏も含む複数の専門家からのフィードバックを取り入れ、ドライバーを最優先に考えた車作りを推進しています。今回の新たな挑戦は、「ドライバーの限界を超える挑戦への感謝」を表すものであり、エンジン性能、車体構造、内外装の改善を通じて、自動車の全体的な性能向上を実現しています。
車の概要:トヨタ GRヤリスとは?
GRヤリスとは、トヨタ自動車のモータースポーツ部門であるTOYOTA GAZOO Racingによって開発された高性能ハッチバッククーペ型のスポーツカーです。ホットハッチと呼ばれるカテゴリーに属します。GRヤリスは、トヨタの世界ラリー選手権(WRC)への参戦経験から生まれました。

2020年に発表・発売された初代GRヤリスは、その軽量で高剛性なボディ、強力なターボエンジン、先進の4WDシステムが特徴的で話題となりました。
2024年1月の東京オートサロンでマイナーチェンジを実施し進化したGRヤリスが発表されました。豊田章男氏(愛称:モリゾウ)のビジョンのもと、より広い範囲のドライバーがスポーツ走行を楽しみ、レースでマニュアルトランスミッション(MT)に匹敵するパフォーマンスを発揮できるオートマチックトランスミッション(AT)の開発に注力しました。この結果、8速ATの「GAZOO Racing Direct Automatic Transmission(GR-DAT)」を新たにラインナップに加えました。
さらに、GRヤリスでは、高性能を発揮するためには運転席が重要であるとの考えから、プロドライバーと共同でドライバー中心のコックピット設計を追求しています。運転席のポジションの見直しを行い、操作性と視認性を高めるために、操作パネルとディスプレイをドライバーに向けて15度傾けて設置。また、レース用ハーネスを装着した状態でも操作がしやすいように、スイッチの配置も工夫されています。これらの改良により、ドライバーはより一層運転に集中し、車両と一体となった走行を体験できます。

進化したGRヤリスの特別仕様車とは?
新型GRヤリスには2タイプの新たな特別仕様車が設定されました。それぞれ100台限定販売となります。
この2台の特別仕様車オジエEditionとロバンペラEditionは、ラリーを愛する全ての人々への敬意と感謝の気持ちを込めて開発されました。モリゾウ(豊田章男社長)の深い思い出が基となっており、2024年FIA世界ラリー選手権の第1戦、ラリー・モンテカルロで世界に初めて公開されました。オジエEditionでは新色「マットステルスグレー」を、ロバンペラEditionでは独特な「三色塗装」をそれぞれ採用しており、後者はロバンペラ選手の友人であるデザイナーによる特別なデザインが施されています。これらの特別な塗装は、カッティングシートを使わずに塗装だけで三色を美しく分けるという技術的な挑戦に成功しています。

さらに、これらの特別仕様車は、各ドライバーの好みに合わせた運転感覚を提供するために、特別に開発された四輪駆動制御モードを搭載しています。標準モデルにある「GRAVEL」と「TRACK」モードをそれぞれ代替する、新しい2つの専用制御モードが設定されています。
これらの特別仕様車は、2024年3月28日から31日まで、東京ミッドタウン キャノピー・スクエアで展示される予定です。この展示では、進化したGRヤリス、オジエEdition、ロバンペラEdition、そしてGR YARIS Rally1 HYBRIDを間近に見ることができる貴重な機会となります。

トヨタ GRヤリスのエクステリアデザイン
新型GRヤリスは勝利を目指すデザインについての考察を深めた結果、軽量性、強度、そして冷却効率の向上に注力したモデルとなっています。
フロントの設計において、モータースポーツでの成功を目指し、エンジンの出力とトルクを高めることにより、さらに多くの空気を取り込むことが追求されました。これに伴い、スポーツ走行時に発生する高負荷状況下でも、エンジンやブレーキ、そして新たに加えられたオートマチックトランスミッションの冷却性能の向上が必要とされました。

ロアグリルにはスチールメッシュを採用し、その薄型で軽量ながらも高い強度を実現しました。従来の樹脂製グリルと異なり、小石やタイヤの破片が当たっても割れずに変形するだけなので、レースを中断することなく続行できるメリットがあります。さらに、より大きな開口部を設けることで、冷却効率の向上を図っています。
また、冷却性能を更に向上させるため、サイドロアグリルには追加の開口部が設けられ、バンパーのサイドには、サブラジエーターやATFクーラーからの熱を外部に排出するためのアウトレットが設置されました。
フロントバンパーには分割構造が採用され、ラリー走行中に破損した場合でも、修理の費用を抑え、交換作業をより容易にするための工夫が施されています。これらの設計は、モータースポーツでの勝利を目指す上での重要な考慮点であることが強調されています。
リヤデザインの見直しを通じて、GRヤリスは更なる進化を遂げています。特に、ハイマウントストップランプ、バックランプ、リヤフォグランプの配置変更やテールランプのデザイン刷新により、機能性と個性が強化されました。加えて、エアロダイナミクスの向上も図られています。

リヤセクションでは、ラリーやその他のモータースポーツで発生し得る、石の跳ね返りや排気熱によるランプ類の損傷リスクに対処するため、リヤランプをリヤコンビネーションランプに集中させました。これにより、ランプが損傷してレースからのリタイアを強いられる事態を防ぐことが可能になります。さらに、ハイマウントストップランプとリヤスポイラーを分離することにより、リヤスポイラーのカスタマイズ可能性が向上しました。
一体感を持たせた一文字スタイルのテールランプは、後続車からの視認性を高めると共に、GRヤリスの独自性を明確に示しています。このデザインは、車両の認識を容易にし、ブランドのアイデンティティを強化します。

また、リヤバンパーの下部には空気の流れを改善するための開口部が設けられており、運転の安定性向上と効率的な熱排出を目指しています。これにより、エアロダイナミクスが強化され、全体としての車両性能が向上しています。
ライトにおいては、3灯式のフルLEDヘッドランプにLEDターンランプ、LEDクリアランスランプが組み合わされ、デイタイムランニングライトとお出迎え照明機能が付いています。ターンランプが点灯する際にデイライトとクリアランスランプが消灯し、このダブルファンクションタイプによって、視認性がさらに向上しています。全てのライトがLEDであることで、電力消費も抑えられています。
ハロゲンヘッドランプは、モータースポーツへの参戦を念頭に置き、軽量化と修理費の削減を目的として採用されています。そして、フルLEDのリヤコンビネーションランプは、後続車からの視認性向上に加え、内部の色設定にこだわり、シンプルで洗練された見た目を実現しています。発光部の間隔を狭めることで、連続感を出し、GRヤリスのアイデンティティを日中でも夜間でも際立たせています。

新型GRヤリスのサイズは全長3995mm、全幅1805mm、全高1455mm、ホイールベース2560mmとなっています。
トヨタ GRヤリスのインテリアデザイン
新型GRヤリスは、ドライバーを第一に考えたコックピット設計を特徴としています。プロドライバーとの共同開発を通じ、「モータースポーツに適したコックピットの条件」とは何かを深く掘り下げ、スーパー耐久シリーズおよび全日本ラリー選手権で使用される車両の検討を行いました。結果として、ドライバーが情報を一箇所に集中させ、スペースや配置の最適化を通じて、運転に集中しやすく、走行を存分に楽しめるコックピットが誕生しました。
視界の優れた設計も特徴です。メーター類とディスプレイオーディオを下方に設定し、クラスターパネルと一体化することで、フラットなインストルメントパネル上面を実現しました。これにより、前方視界が拡大し、インナーミラーの位置も高く設定されています。加えて、インパネ上面に特別な塗装処理を施し、反射を減少させています。

操作系とドライビングポジションの最適化も行われています。ステアリングホイール、シフトレバー、パーキングブレーキレバーなどが直感的に操作できる位置に配置されています。レース時に頻繁に使用するスイッチ類も、身体がしっかり固定されていても容易にアクセス可能です。シートの位置も低く設計されており、スポーツカーらしいドライビングポジションが実現されています。

GR専用のFull TFTメーターは、レーシングカーからの洞察とプロドライバーの意見を反映して開発されました。エンジンの温度表示や、ATフルードの温度など、スポーツ走行に必要な情報の視認性が高められています。また、タコメーターは、モータースポーツ由来の横タコバーと日常使用向けの1眼タコリングという、2種類の表示から選べます。
さらに、12.3インチのカラーFull TFT液晶マルチインフォメーションディスプレイが運転に必要な情報を一目で把握できるように表示します。このシステムは、重要な情報を中央に、その他の情報を左右に配置し、運転状況や好みに応じた3パターンの表示内容のカスタマイズが可能です。これらの情報はステアリングスイッチで簡単に切り替えられます。このように、GRヤリスはドライバーの操作性と情報の視認性を極めて重視した設計により、優れた運転体験を提供します。

トヨタ GRヤリスの走行性能
GRヤリスのパワートレインには、1.6L 3気筒ターボダイナミックフォースエンジンが搭載されています。最高出力304PS、最大トルク400Nmを発揮します。ワールドラリーチャンピオンシップ(WRC)での経験から得た洞察に基づき、最適なボア×ストローク(φ87.5×89.7)を選定し、ラリーでよく使用される領域で最大限の性能を発揮します。このエンジンは、あらゆる運転状況下で直線的な反応を提供するように設計されており、全日本ラリー選手権での激しいテストを経て、耐久性と性能の向上が図られています。ピストンの破損を含む極限の負荷試験を通じて、エンジンの限界を把握し、出力とトルクの増加を実現しました。冷却性能も、オイルクーラーの多段化により強化され、長時間の高負荷走行に対応しています。

軽量化と高出力の追求も重要な焦点であり、アルミダイカスト製のシリンダーブロックや、浅底ウォータージャケット、細径のヘッドボルト、中空組立カムシャフトの採用により、重量の削減と反応速度の向上が実現しています。ピストンやクランクシャフトも精密な設計によって軽量化され、レスポンスの向上が図られています。また、全日本ラリー選手権での経験を活かし、ピストン材質の変更や排気バルブスプリングの強化などが施され、更なる高出力化が達成されました。
ターボシステムにおいては、高レスポンスを追求する上での新たな進歩があります。大型ターボの導入により生じる遅延を解消するため、トヨタで初めてボールベアリングターボとアブレダブルシール構造が採用されています。これにより、通常走行時にはウェイストゲートバルブを閉じた状態で運転し、アクセルを踏むと同時に遅延なくトルクを発生させることができるようになりました。これらの技術的革新により、GRヤリスはその性能をさらに高め、ドライバーに優れた運転体験を提供しています。
GRヤリスは、アクティブトルクスプリット4WDシステムを搭載しており、これにより様々な路面状況に応じて四輪にトルク配分を行うことが可能です。このシステムは、発進から高速走行に至るまで、全速度域で直接的な操作感を実現します。特に、激しいコーナリング時には、四輪が路面を確実に捉え、ドライバーの意図した通りに車両を迅速に回転させます。スーパー耐久シリーズや全日本ラリー選手権で得られた経験とフィードバックを基に、トヨタが独自に開発したこのスポーツ4WDシステムは、車両の運動性能を格段に向上させています。

また、GRヤリスにはEXPERTモード付きVSC(車両安定制御システム)が備わっています。ドライバーがSPORTモードやCUSTOMモードを選択し、VSC OFFスイッチを軽く押すことで、EXPERTモードが活性化します。このモードでは、ドライバーが自身の運転技術を存分に発揮しつつ、車両の挙動が大きく乱れた際には、自動的に介入して安定させる機能が働きます。
加えて、トルセン®LSD(リミテッド・スリップ・ディファレンシャル)が前後のディファレンシャルに採用されています。これは、アクティブトルクスプリット4WDシステムの能力をさらに高め、常に変わる路面状況に対して最適なトルク配分を迅速に行い、コーナリング時の敏速な加速や安定したコントロール性能を提供します。これらの高度な技術により、GRヤリスは優れたドライビング体験を提供しています。
GRヤリスは、スポーツ走行の喜びをさらに深めるために、高性能な8速オートマチックトランスミッション(AT)を新たに開発しました。この変速機は、世界トップクラスのシフト速度を実現することを目指して設計されており、Mモードでのシフトアップ時に特にその速さを発揮します。これにより、ドライバーはギアチェンジに気を取られることなく、ステアリング、アクセル、ブレーキといった運転操作に集中でき、スムーズかつダイナミックなドライビング体験を享受できます。
このトランスミッションは、高耐熱性を持つ摩擦材を採用しており、これが変速速度を向上させると同時に耐久性を高めています。また、新開発された高応答の小型リニアソレノイドを使用することで、より精密で迅速なギアチェンジを実現しています。加えて、システムの特性を工場内で細かく調整することにより、最速のシフトタイムを可能にしています。
また、6速までをマニュアルトランスミッション(MT)と同等のギア比に設定し、7速と8速をオーバードライブギアとすることで、高速走行時の燃費効率と静粛性を向上させています。このトランスミッションは、1.6Lのターボエンジンと組み合わせられ、高いトルクをスムーズに伝達するトルクコンバーターを備えています。
さらに、RZ“High performance”モデルには、トルセン®リミテッド・スリップ・ディファレンシャル(LSD)が標準装備されており、これによりコーナリング時のトラクションと安定性が大きく向上しています。この新たな8速ATは、GRヤリスのスポーツドライビング性能を一層高め、ドライバーに忘れがたい運転体験をもたらします。

GRヤリスのエアロダイナミクス設計は、ラリー競技での優位性を追求し、特にダウンフォースの獲得に焦点を当てています。リヤスポイラーに効率的に風を導くため、ルーフの後端を下げた特別なアッパーボディが設計されました。フロントにはダウンフォースを増加させるロアスポイラーと、カナード機能を備えたコーナー部が導入され、リヤのデザインはルーフとクォーターピラー周りを絞り込むことでさらに空気の流れを最適化しています。これらの設計により、速度が上がるにつれて車両が路面に押し付けられるようになり、コーナリングの速度が向上します。また、WRCマシンに倣い、ホイールハウスからボディに沿って空気を抜くことで、空力性能を向上させています。ボディ下面をアンダーカバーで覆うことにより、空気抵抗の削減も図られています。この高度なエアロダイナミクスの設計は、TOYOTA GAZOO RacingのWRCチームとの密接な連携と、風洞実験を繰り返すことで成果を上げています。
車体の軽量化にも注力されており、フロントフード、ドア、バックドアには軽量なアルミ素材が使用されています。さらに、ルーフには新たな工法であるC-SMCを採用し、軽量化と低重心の実現に成功しています。この材料は、複雑な形状の成形が可能で、軽量かつ強度のある構造を実現することで、より活発なスポーツ走行を支えています。
また、車両の重量バランスにも細心の注意が払われ、補機バッテリーはラゲージスペースの床下に配置されています。これにより、前後の重量配分を59:41に保ち、安定した走行性能と優れたハンドリングを提供しています。これらの詳細な設計と工夫により、GRヤリスは高い運動性能とドライビングの喜びを実現しています。

トヨタ GRヤリスの価格
新型トヨタ GRヤリスの価格は448万円からです。
GRヤリス価格表
グレード | 6MT | GR-DAT(8AT) | |
---|---|---|---|
RZ | 4,480,000円 | 4,830,000円 | |
“High performance” | 4,980,000円 | 5,330,000円 |
GRヤリス 特別仕様車価格表
6MT | |
---|---|
オジエEdition | 8,450,000円 |
ロバンペラEdition | 8,450,000円 |

トヨタ GRヤリスの発売時期
トヨタ新型GRヤリスは2024年4月8日に発売されます。
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