トヨタ自動車は2025年8月4日、カローラ クロスにGR SPORTグレードを新設定し、発売することを発表しました。このモデルは、TOYOTA GAZOO Racingが展開するGR SPORTラインアップに新たに追加される車種で、「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」で培った知見を活用し、走行性能を高めた仕様となっています。メーカー希望小売価格は389万5,000円(消費税込み)に設定されています。
車の概要:トヨタ カローラ クロス GR SPORTグレードとは?
カローラ クロスは、トヨタが2021年9月に発売を開始した初代モデルのコンパクトSUVです。世界的に人気の高いカローラシリーズの派生車種として開発され、SUVの実用性とカローラブランドの信頼性を融合させた車種として位置づけられています。
今回新たに設定されるGR SPORTは、このカローラ クロス初代モデルに追加される高性能グレードです。GRヤリスやGRカローラなどのGRシリーズ開発ドライバーも開発に携わり、ボディ剛性の強化や足回りのチューニングを実施することで走行性能を向上させています。
注目すべきは、高熱効率・高出力2.0Lエンジンを搭載したハイブリッドシステムをGR SPORT専用に採用している点です。さらに、ドライブモードセレクトにはGR SPORT専用のSPORTモードを搭載し、気持ちの良いスポーツ走行を実現しています。これにより、従来のカローラ クロスの実用性を保ちながら、GRブランドならではの走りの楽しさを追求したモデルとなっています。

トヨタ カローラ クロス GR SPORTグレードのエクステリアデザイン
カローラ クロス GR SPORTのエクステリアは、GRブランドのアイデンティティを強く反映したスポーティで機能的なデザインが特徴です。
フロントマスクの刷新
最も印象的な変更点は、フロントマスクの大胆な変更です。フロントバンパーには、進化したFunctional MATRIXグリルを採用し、サイドに開口部を設けることで空気の流れを最適化し、走行安定性を確保しています。このグリルデザインはGR共通のもので、「G」をモチーフにした六角形のメッシュ形状が採用されています。
アッパーグリルは、GRのフロントアイデンティティとして、ヘッドランプ造形を一文字につなげたデザインとなっており、アッパーを薄く、アンダーを低く構成することで低重心と安定感を強調し、フロントフェイスにスポーティな印象を与えています。
専用装備とブラックパーツの採用
足元には、ダーククリア切削光輝とブラック塗装を組み合わせた専用19インチアルミホイールを装着し、センターオーナメントとブラック塗装ホイールナットが付属します。オプションとして、レッド塗装のブレーキキャリパー(フロント・リヤ)とGRロゴ付きのフロントキャリパーも選択可能です。
随所に配置された専用ブラックパーツも見どころの一つです。ドアウインドゥフレームモールディング、リヤバンパーロアガーニッシュ、トヨタエンブレム(フロント・リヤ)がブラック仕上げとなり、統一感のあるスポーティな外観を演出しています。また、専用エンブレムがフロントとリヤに配置され、GR SPORTの特別感を強調しています。
専用ツートーンカラーの設定
ボディカラーには、オプションとして3種類の専用ツートーンカラーが設定されています。ブラック×エモーショナルレッドII、ブラック×プラチナホワイトパールマイカ、ブラック×アッシュの組み合わせで、より個性的な外観を演出できます。
これらの専用装備により、標準モデルとは一線を画すスポーティで洗練されたエクステリアデザインを実現しています。
トヨタ カローラ クロス GR SPORTのボディサイズ
全長4,460mm、全幅1,825mm、全高1,600mm



トヨタ カローラ クロス GR SPORTグレードのインテリアデザイン
カローラ クロス GR SPORTのインテリアは、GRブランドの哲学である「機能性と美しさの融合」を体現したデザインとなっており、スポーツ走行を支える機能性と上質な仕上がりが見事に調和しています。
専用スポーツシートによるホールド性の追求
最も注目すべきは、GRロゴ付きの専用スポーツシートです。このシートは、コーナリングで強い横Gがかかった際に身体をしっかりとサポートできるよう、シート形状を最適化しています。シート表皮には、メイン材として身体が滑りにくいスエード調表皮「ブランノーブ®」を採用し、クルマとの一体感を高めることで正確なステアリング操作に寄与します。
シート表皮は合成皮革とブランノーブ®の組み合わせにパーフォレーション加工を施し、グレーステッチとスモークシルバーメタリック加飾で仕上げられており、機能性だけでなくデザイン性にも配慮された仕様となっています。
GRテイストを強調するステアリング周り
ステアリングには、専用本革巻き3本スポークステアリングホイールを採用しています。グレーステッチとスモークシルバーメタリック加飾、そしてGRロゴが配され、機能的にもデザイン的にもGRにふさわしいスポーティな仕立てが施されています。
さらに、専用パドルシフトを装備し、マニュアル感覚でのシフトチェンジが楽しめる10速シーケンシャルシフトマチックとの組み合わせにより、ドライバーの意思をダイレクトにクルマに伝えることができます。
全体を統一するスモークシルバーメタリック加飾
インテリア全体には、専用のスモークシルバーメタリック加飾が各所に配されています。センタークラスター、インパネオーナメント、サイドレジスターベゼル、ヒーターコントロールパネル、メータークラスター、本革巻きシフトノブ、ステアリングホイール、インサイドドアハンドルに至るまで、統一感のある上質な仕上がりを実現しています。
細部にまで宿るGRのこだわり
足元には専用アルミペダル(アクセル・ブレーキ)を配置し、操作時の質感向上を図っています。また、専用スマートキーにもGRロゴをデザインし、スペシャルな演出にこだわり抜いています。
これらの専用装備により、カローラ クロス GR SPORTのインテリアは、視覚・触覚・操作感のすべてにおいて”GRらしさ”が感じられる仕様となっており、ドライバーとクルマの一体感を高める上質でスポーティな空間を実現しています。



トヨタ カローラ クロス GR SPORTグレードの走行性能
カローラ クロス GR SPORTの走行性能は、GRが培ったモータースポーツの知見を余すことなく投入し、コンパクトSUVの枠を超えた本格的なスポーツ性能を実現しています。
専用チューニングサスペンション
足回りには、専用のマクファーソンストラット式(フロント)とダブルウィッシュボーン式(リヤ)の各サスペンションに専用チューニングを施し、操舵応答性・操縦安定性と質感の高い乗り心地を高次元で両立しています。
具体的なチューニング内容として、フロントロアアームNo.1、No.2ブッシュの高硬度化、リバウンドスプリング内蔵式ショックアブソーバの採用、コイルスプリングばね定数の変更を実施。さらに車高を10mm下げることで低重心化を図り、走行安定性を向上させています。これらの専用チューニングにより、コーナリング時の応答性と直進安定性を大幅に向上させています。
ボディ剛性の強化
ベース車の高いボディ剛性をより高水準にするため、ロアバックにリヤバンパーリインフォースを新たに設定しています。この剛性アップパーツにより、高い操縦安定性とフラットな乗り心地を追求し、サスペンションの性能を最大限に引き出すボディ剛性を確保しています。
GR SPORT専用2.0Lハイブリッドシステム
パワートレーンには、高い熱効率・高出力を両立した新型エンジン「2.0L M20A-FXS」を搭載したハイブリッドシステムをGR SPORT専用に採用しています。このエンジンは、ロングストローク化、バルブ挟角拡大、レーザークラッドバルブシートによる高効率吸気ポートの採用などによって最大熱効率40%を実現。システム最高出力は146kW(199PS)を発生し、WLTCモード燃費は23.3km/Lを達成しています。
小型・軽量・低損失化技術を継承し、優れた低燃費をキープしたまま高い走行性能を実現するとともに、駆動制御を最適化することでアクセルペダル操作に対する一体感を高め、気持ちの良い加速フィーリングを追求しています。
専用ドライブモード
複数の走行モードから状況に合わせて最適な走りを選択可能なドライブモードセレクトに、GR SPORT専用のSPORTモードを搭載しています。このSPORTモードでは、GR SPORT専用のチューニングにより、エンジンの回転数を通常走行時より高く維持し、モーターのパワーと共に加速時のレスポンスを最大限に高め、気持ちの良いスポーツ走行を実現します。
10速シーケンシャルシフトマチック
トランスミッションには、マニュアル感覚のシフトチェンジが楽しめる10速シーケンシャルシフトマチックをGR SPORT専用に設定。専用パドルシフトとの組み合わせにより、発進から高速域まで力強くダイレクトな走りと低燃費を実現し、ドライバーの意思をダイレクトにクルマに伝えることができます。
駆動方式には電気式4輪駆動システムのE-Fourを採用し、あらゆる路面状況で安定した走行性能を発揮します。これらの総合的な改良により、カローラ クロス GR SPORTは、実用性を保ちながらGRブランドならではの本格的なスポーツ走行を楽しめる仕上がりとなっています。

トヨタ カローラ クロス GR SPORTグレードの価格
カローラ クロス GR SPORTの価格は389万5,000円です。
このモデルは電気式4輪駆動システムのE-Four仕様のみの設定となっており、前輪駆動(FF)の設定はありません。
グレード構成については、GR SPORTは単一グレードでの展開となっており、価格は以下の通りです:
カローラ クロス GR SPORT(E-Four): 389万5,000円(消費税込み)
なお、標準モデルのハイブリッドZグレードが368万9,000円(4WD)であることから、GR SPORTは20万6,000円のプレミアムが設定されています。
トヨタ カローラ クロス GR SPORTグレードの発売時期
カローラ クロス GR SPORTは2025年8月4日に発売が予定されています。トヨタは2025年5月23日にこのモデルの発表を行い、約2ヶ月後の8月初旬に市場投入される予定です。
トヨタ カローラ クロス GR SPORTグレードは日本で発売される?
カローラ クロス GR SPORTは日本国内向けに開発・発売されるモデルです。トヨタ自動車が日本マーケット向けに企画・設定した車種で、TOYOTA GAZOO RacingのGR SPORTラインアップに新たに追加される国内販売モデルとして位置づけられています。
このモデルは、これまでのGR SPORTシリーズである「アクア GR SPORT」「ヤリス クロス GR SPORT」「ハイラックス GR SPORT」「ランドクルーザー GR SPORT」「コペン GR SPORT」に続く、国内6番目のGR SPORTモデルとなります。

トヨタ カローラ クロス GR SPORTグレードの辛口評価
あえて辛口で評価します。カローラ クロス GR SPORTは、確かにGRブランドのエッセンスを取り入れた意欲的なモデルですが、いくつかの懸念点も指摘せざるを得ません。
価格設定への疑問
最も大きな問題は389万5,000円という価格設定です。カローラの名を冠した車種としては明らかに高額で、「カローラらしさ」から大きく逸脱した価格帯と言わざるを得ません。ベース車のハイブリッドZが368万9,000円であることを考えると、20万6,000円のプレミアムが専用装備に見合うかは疑問です。
中途半端なGR性能
GR SPORTという名称を冠しながらも、真のGRシリーズ(GRヤリス、GRカローラ)と比較すると、スポーツ性能は明らかに控えめです。車高を10mm下げただけの低重心化や、専用チューニングとはいえサスペンションの基本構造は変わらず、「GRっぽさ」を演出した域を超えていない印象です。
ベース車の問題点を継承
カローラ クロス自体が抱える課題も当然継承しています。内装の質感については、樹脂パーツが多用されており、400万円近い価格帯の車としては安っぽさが否めません。専用装備で多少の高級感は演出されていますが、根本的な質感向上には至っていないのが実情です。
燃費とスポーツ性能の矛盾
WLTCモード燃費23.3km/Lという数値は優秀ですが、これがスポーツ走行時にどこまで維持できるかは疑問です。SPORTモードではエンジン回転数を高く維持するため、日常使いでの実燃費はカタログ値を大きく下回る可能性が高く、燃費重視のユーザーには期待外れとなるリスクがあります。
個性の不足
デザイン面でも、専用装備による差別化は図られているものの、根本的には「普通のSUV」の域を出ていません。GRブランドに期待される「唯一無二の存在感」には程遠く、街中での存在感は希薄と言わざるを得ないでしょう。
トヨタ カローラ クロス GR SPORTグレードのライバル車
カローラ クロス GR SPORTのライバル車は、価格帯とキャラクターによって複数のカテゴリーに分類されます。
同価格帯のスポーティSUV
最も直接的なライバルとなるのは、ホンダ ヴェゼル e:HEV PLaYです。価格帯が近く、ハイブリッド搭載のコンパクトSUVという基本コンセプトが共通しています。ヴェゼルはWLTCモード燃費25.0km/Lを実現しており、燃費性能ではカローラ クロス GR SPORTが若干劣勢です。
トヨタ内でのライバル関係
同じトヨタ内では、C-HR ハイブリッドが興味深いライバルとなります。価格帯はほぼ同等でありながら、C-HRはよりスペシャリティカー的な性格を持ち、スタイリングの個性では明らかに上回っています。ただし、実用性ではカローラ クロス GR SPORTに軍配が上がります。
スポーツ性能を重視するライバル
スバル XV Advanceやマツダ CX-30 X L Packageなど、走行性能を重視したコンパクトSUVも競合相手となります。特にCX-30は上質な内装と優れた走行性能で知られており、質感面ではカローラ クロス GR SPORTを上回る可能性があります。
GR SPORTシリーズ内での位置づけ
GR SPORTシリーズ内では、ヤリス クロス GR SPORTが最も近いライバルです。サイズは一回り小さいものの、よりコンパクトで扱いやすく、燃費性能でも30.2km/Lと圧倒的に優秀です。価格も相当に安く、GRらしさを求めるユーザーには魅力的な選択肢となります。
また、ハイラックス GR SPORTやランドクルーザー GR SPORTなど、より本格的なGR SPORTモデルと比較すると、カローラ クロス GR SPORTは「入門編」的な位置づけに留まっており、真のGR体験を求めるユーザーには物足りない存在と言えるでしょう。

トヨタ カローラ クロス GR SPORTグレードのまとめ
トヨタが2025年8月4日に発売するカローラ クロス GR SPORTは、389万5,000円で展開される新たなスポーツSUVです。TOYOTA GAZOO Racingの知見を活用し、専用チューニングされたサスペンション、10mm低められた車高、強化されたボディ剛性により走行性能を大幅に向上させています。パワートレーンには199PSを発生する2.0Lハイブリッドシステムを専用採用し、燃費23.3km/Lを実現しながらスポーツ走行も楽しめる仕様となっています。エクステリアには専用19インチホイールやFunctional MATRIXグリル、ブラックパーツを配し、インテリアにはGRロゴ付きスポーツシートや専用ステアリング、パドルシフトを装備してスポーティさを演出しています。ただし、400万円近い価格設定やGRシリーズとしては控えめなスポーツ性能など、一部で懸念点も指摘されるモデルとなっています。
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