今回はちょっと特別なクルマ、ソニー・ホンダモビリティの「AFEELA(アフィーラ)」にスポットを当ててみましょう。2023年、家電メーカーの巨人ソニーと自動車メーカーの巨人ホンダが手を組んだこの新会社は、近未来感のあるクルマを目指しています。
ソニー・ホンダモビリティとは?
ソニー・ホンダモビリティの「AFEELA(アフィーラ)」の話をする前に、まずはこのプロジェクトの背後にある、ソニーとホンダの協力関係について触れてみましょう。ソニー・ホンダモビリティ株式会社は2022年9月に設立されました。出資比率はソニーグループ株式会社50%、本田技研工業株式会社50%となっています。ソニー、世界をリードするテクノロジー企業と、ホンダ、信頼と革新を重ねる自動車メーカー。これら二つの異なるフィールドの世界的企業同士が手を組んだのです。
この2社といえばチャレンジ精神やイノベーションというイメージが浮かび上がるのではないでしょうか。両社は、技術革新とユーザー体験における深いコミットメントという共通する精神性を持っています。ソニーは常に先進のエンターテイメントとユーザーインターフェースを追求してきました。一方、ホンダは独自のエンジニアリングとデザインで、安全で快適な移動手段を提供し続けています。この二つの企業が融合することで、ただの移動手段ではなく、驚きと喜びを提供する新しい形のモビリティが誕生するわけです。
この協力関係は、ただ単に技術を組み合わせるだけでなく、双方の強みを生かして、未来の自動車業界に新たな価値を創造しようという野心的な試みです。そして、その最初の成果が「AFEELA」なのです。

車の概要:AFEELAとは?
ソニーホンダ社が誕生する前、ソニー独自でコンセプトカーをつくり上げていたのはご存知でしょうか。CES 2020で発表した「Vision-S(ビジョンS)」というセダンタイプのモデルです。
そしてソニーとホンダが手を組みつくり上げたプロトタイプの第一弾がこのAFEELA(アフィーラ)です。AFEELAは5人乗りのセダンでBEV(バッテリーEV)。2023年1月4日に初めて発表されました。
北米で製造を予定しており、2025年春北米での受注を開始し、2026年の発売を目指しています。
AFEELAのエクステリア&インテリアデザイン
AFEELAはただの電気自動車(EV)を超えた芸術作品とも言える存在です。デザインの核となるのは、その流麗で未来的なラウンドフォルム。この形状は、ただ単に美しいだけでなく、空気抵抗を減らすことで効率性も追求しています。また、ソニーホンダモビリティの独自性が色濃く反映されたスタイリングは、ぱっと見でそれとわかる個性を持っています。

最も注目すべき特徴は、フロントグリルに組み込まれた「メディアバー」です。これは、通常の車にはない、革新的なコミュニケーションツール。天気予報や渋滞情報、さらにはドライバーへのメッセージなど、様々な情報を表示することが可能です。このメディアバーは、周囲の環境や状況に応じて情報を更新し、まるで車が周囲と対話しているかのような体験を提供します。

またもう一つの尖った特徴としてアフィーラには、一般的なドアノブ(ドアハンドル)がありません。代わりに、アフィーラは自動開閉機能を採用しています。ドアはセンサーやカメラなどを用いて利用者を認識し、自動的に開く仕組みになっています。このデザインによって先進的な外観を表現し、同時に空力性能の向上にも寄与しています。

外観の仕上げには、洗練された色合いと質感にも注目が集まります。光の当たり方によって異なる表情を見せるボディカラーや、洗練されたラインのデザインは、ソニーホンダモビリティの精緻な美学を体現しています。
さらに、車の各部分には細かいディテールが施されており、ヘッドライトやテールライトのデザインにも最新技術が用いられています。これらの照明部品は、ただ光を放つだけでなく、デザインの一部として機能的な美しさを追求しています。
ボディサイズは全長4895mm、全幅1900mm、全高1460mm、ホイールベース3000mmとなっています。
このように、AFEELAのエクステリアデザインは、未来のモビリティを象徴するかのような革新性と、洗練された美しさを兼ね備えています。それは単なる移動手段ではなく、日常に新しい価値と体験をもたらすユニークな存在となっています。

AFEELAのインテリアデザイン
インテリアデザインにおいてまず注目すべきは、その広大なパノラミックディスプレイです。運転席の前に広がるこのディスプレイは、ただの情報表示板ではありません。運転中はもちろんナビゲーション情報などが表示されますが、停車時にはエンターテイメントの中心に早変わり。映画やゲーム、音楽など、車内での時間を充実させるための機能が満載です。動くAVルームを目指し、映像や音響のクオリティにはかなりこだわっています。音楽については空間オーディオである「360 Reality Audio」にも対応し、ハイエンドオーディオ並みのスピーカーが搭載されているとのことで、さすがソニーといったところですね。

さらに、AFEELAのインテリアはシンプルさとハイテクの融合を目指しています。使われている素材は高級感があり、どこを見ても洗練された印象。ハンドルは従来の丸い形から飛行機の操縦桿を思わせる「ヨークハンドル」に変更されています。これは新しい運転体験を提供するだけでなく、デザイン的にも新鮮な印象を与えます。

ドアの内側にも注目。ドアハンドルがない分、内部のデザインはよりスムーズで洗練されたものになっています。ドアの開閉はセンサーが利用者を認識して自動で行われるため、内装には必要最小限のボタンやレバーしかありません。これにより、すっきりとした内部空間が生まれています。
後部座席も忘れてはいけません。ここでは、前席と同様に豊富なエンターテイメントオプションが用意されており、後部座席の乗客も退屈することがありません。スピーカーやディスプレイは後部座席にもしっかりと配置されていて、それぞれの乗客が個々の娯楽を楽しむことが可能です。

インテリア全体を通して、AFEELAはただの移動手段という枠を超え、移動する際の快適さと楽しさを提供することを目指していることがはっきりとわかります。デザインは未来的でありながらも、使いやすさや快適さを犠牲にしていない、そんなバランスの取れたものになっています。
AFEELAの自動運転テクノロジー
AFEELAでは、最先端のセンサーやカメラを駆使して、安全かつ効率的な運転をサポートします。ここには、20以上のカメラが使われていて、周囲の環境をしっかりと把握。これにより、例えば交通状況をリアルタイムで分析したり、歩行者や他の車両を検知して適切に反応することが可能になっています。
また、AFEELAはLiDARセンサーも搭載しているんです。これがまた重要で、車両の周囲をレーザーでスキャンして精密な3Dマッピングを行うんですね。これにより、車両は周囲の状況をより正確に把握し、安全な運転を支援するわけです。ただし、完全な自動運転ではなく、レベル3の自動運転を目指しているとのこと。つまり、ある程度の条件下では自動運転が可能ですが、完全に手放すわけではないということ。安全性を重視したアプローチですね。

AFEELAのドライビングパフォーマンス
AFEELAのパワートレインについては未発表なので、今後の発表に期待したいところです。駆動方式に関しては全輪駆動(AWD)を採用するとのことで、2基のデュアルモーターになるのではと想像されます。後続可能距離についても未発表ですが、十分と言える距離を期待したいですね。

AFEELAのこれまでの展示
AFEELAは、2023年に複数のイベントで披露されました。
- CESでの初披露: AFEELAは2023年1月、米国ネバダ州ラスベガスで開催された「CES 2023」で初めて世界に公開されました。ソニー・ホンダモビリティはこの場で、この新しいEVブランド「AFEELA」を披露し、プロトタイプ車両の展示を行いました。
- ジャパンモビリティショー 2023での展示: AFEELAは、2023年10月に開催された「ジャパンモビリティショー 2023」で日本で初めて一般に公開されました。ソニー・ホンダモビリティは、このイベントにおいてAFEELA Prototypeの展示を行い、日本の自動車ファンに対して同車の特徴と魅力を紹介しました。

AFEELAのメディア・ユーザー評価
AFEELAの外部からの評価を見てみるとさまざまな意見があります。
まずはドライビング性能について、パワートレインが未発表なのでなんともいえませんがホンダの車ということでそれなりのパフォーマンスが期待できるのではと考えられています。ただし、自動運転については目標が発表されているものの、開発状況などほとんど実態が見えてこないので不安視する声もあるようです。
次にデザイン面については意見が分かれるところです。未来感のある好意的な意見と、もっと尖っても良かったのではないかという意見もあります。特にドアハンドルがないデザインは多くの人の関心をひいています。室内空間については期待の方が大きいようです。特にソニーが手がけるAV空間なので、従来の車の常識を覆してくれるのではという期待がかかっています。

AFEELAの辛口評価
あえてAFEELAの辛口な評価を記載します。
まず、アフィーラの最大の売りはそのAV機能。でも、どこまでのクオリティが車で必要なのか疑問もあります。完全自動運転時代には非常に重要だと想定されるが、現段階でどこまで価値を感じられるかという面ではニッチな訴求になる可能性があります。
次に、外観。ドアハンドルがないというのが、リスクにならないかという点です。故障した場合やカメラでの認識がしずらいシチュエーションの場合など。完全になくす必要があるのかというところです。
また、自動運転機能についても、ちょっと物足りない感じがしてしまいます。発売される2026年という前提では自動運転技術が大きなトピックになっているからこそ、もっとレベルの高い自動運転に期待したいところでした。
最後に、価格と実用性のバランス。高性能なAV機能を盛り込んでるだけに、当然価格もそれなりになりそうですが、どうしてもオーバースペックになる可能性を感じてしまいます。
というわけで、アフィーラは革新的で魅力的な面もありますが、現実的な観点から見ると気になる点もあります。ただまだあくまでプロタイプであるので、これからの進化と実際のモデルに期待したいですね。
ソニー・ホンダモビリティの未来への展望
さて、この「AFEELA」を生み出したソニーホンダモビリティについても少し触れておきましょう。この会社は、ソニーとホンダが半々の出資で設立され、自動車産業に新しい風を吹き込んでいます。彼らの目指すのは、「Autonomy(自律性)」「Augmentation(拡張性)」「Affinity(親和性)」の三つのAを軸にした新しいモビリティの形です。
自律性では、車両の自動運転技術をさらに進化させること、拡張性では、ソフトウェアアップデートによる機能の拡張や改善、親和性では、車両とドライバー、または乗員との関係を深めることを目指しています。これらは単なる車ではなく、生活の一部として統合されるモビリティの未来像を示唆しています。
このように、AFEELAはソニーホンダモビリティの野心的なビジョンの象徴であり、自動車業界において新たな時代を切り開く存在として期待されています。

まとめ
「AFEELA」はただのクルマではなく、新しい時代のモビリティ体験を提供する可能性を秘めたコンセプトではないでしょうか。日本を代表するソニーとホンダのタッグにも期待が高まると同時に、大手企業同士のコラボは頓挫するリスクもあると考えられます。AFEELAの今後の発表を期待して待ちましょう。
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