シャープ LDK+ 新型EVコンセプト発表|価格・発売時期・スペック徹底解説【ジャパンモビリティショー2025】

2025年10月30日、東京ビッグサイトで開催されているジャパンモビリティショー2025において、シャープがEVコンセプトモデル「LDK+(エルディーケープラス)」の第2弾を初公開しました。2024年9月に第1弾を発表した同社は、今回のモデルでコンパクトミニバンサイズへと変更し、小回りの利くボディと広々とした室内空間の両立を実現しています。シャープは2027年度のEV市場参入を目指しており、家電メーカーとしての技術力を活かした独自の価値提案で注目を集めています。

車の概要:シャープ LDK+とは?

シャープ LDK+は、家電メーカーであるシャープが開発を進めるEVコンセプトモデルです。これまで自動車製造の歴史を持たなかった同社にとって、LDK+は初めての本格的なモビリティ製品への挑戦となります。

2023年夏頃から下準備が始まり、2024年5月に専門部門が発足、同年9月には第1弾となるミニバン型のコンセプトモデルを発表しました。第1弾は65型ディスプレイを搭載した大型モデルでしたが、今回の第2弾ではよりコンパクトなミニバンサイズに変更され、実用性を高めています。

シャープ LDK+の最大の特徴は、「走っている時間」ではなく「止まっている時間」にフォーカスした設計思想です。一般的な自家用車は全体の95%の時間を駐車しているという統計に着目し、その時間を「リビングルームの拡張空間」として活用することを提案しています。キーメッセージは「Part of your home(家の一部)」で、EVを単なる移動手段ではなく、住空間の一部として捉える新しい概念を打ち出しました。

ベース車両には、親会社である鴻海科技集團(Foxconn)が開発したEV「Model A」を採用し、これに独自のAI技術「CE-LLM」やAIoT技術、センシング技術などを組み合わせています。

シャープ LDK+のエクステリアデザイン

シャープ LDK+のエクステリアは、コンパクトミニバンとしての実用性と、都市的な洗練されたデザインを融合させたスタイリングが特徴です。フロントには「SHARP MULTI BEAM LED」の文字が刻まれたヘッドライトを採用し、シャープらしさを表現しています。

ボディ形状はトールワゴンよりやや大きめのサイズ感で、サイドにはスライドドアを装備しています。外観は機能性を重視した実用的なフォルムでありながら、単なる商用車とは異なる上質さを感じさせるデザインとなっています。

窓には液晶調光シャッターが組み込まれており、プライバシーを確保する際には外から車内が見えなくなる仕組みを採用しています。これにより、駐車時に車内をプライベート空間として使用する際の快適性を高めています。

ルーフにはソーラーパネルが設置されており、走行中や駐車中に発電が可能です。これはシャープが培ってきた太陽光発電技術を活かした装備となっています。

なお、シャープ LDK+のボディサイズは、ベース車両であるFoxconnのModel Aが全長4,300mm級のコンパクトミニバンとされており、取り回しの良さと室内空間の広さを両立した設計となっています。

シャープ LDK+のインテリアデザイン

シャープ LDK+のインテリアは、「リビングルームの拡張空間」というコンセプトを体現した革新的な設計が最大の魅力です。5人乗りのキャビンは、外観以上に広々とした印象を与える空間設計となっています。

最も特徴的なのは、運転席が180度回転する機構です。駐車時に運転席を後ろ向きに回転させることで、後部座席と向き合う形でリビングのような対面空間を作り出すことができます。助手席は折りたたみ式となっており、空間の有効活用を可能にしています。

運転席と助手席の間には、テーブルとプロジェクターを備えた多機能コンソールボックスが配置されています。このコンソールボックスはスライド機構を持ち、運転席を回転させた後に後部座席との間まで移動させることができ、まさにリビングのテーブルとして機能します。

エンターテインメント面では、第1弾の65型ディスプレイから変更され、コンソールボックスに格納式プロジェクターが内蔵されています。後部座席上部にはロール式スクリーンが設置されており、これを下ろすと約60型サイズの大画面で映画鑑賞やオンライン会議を楽しむことができます。シャープは「走行性能を維持しつつ、画質も犠牲にしない」ため、直近のプロジェクター技術の輝度向上を活かしてプロジェクター方式を採用したと説明しています。

音響システムについても「没入感がある空間」を目指しており、スピーカー搭載数を増やしてよりリッチなサウンド環境を構築することを検討しているとのことです。車内の音が外に漏れない遮音性を確保しているため、大音量で映画を楽しんだり、楽器を演奏したりといった使い方も可能としています。

空気環境にも配慮されており、コンソールボックスにはシャープの代名詞であるプラズマクラスター発生装置が内蔵されています。これにより、車内の空気を常に清潔に保つことができます。

照明も工夫されており、室内天井部分には色を自由に変えられるLED照明が配置されています。これにより、利用シーンに合わせた快適な空間演出が可能です。

窓には液晶調光シャッターが採用されており、プライバシーを確保したい際には外から車内が見えなくなります。映画鑑賞時などにも最適な機能です。

さらに、シャープ独自のエッジAI技術「CE-LLM」による対話エンジンが搭載されており、AIが家庭教師となって子供の学習をサポートしたり、オーナーの好みの空調温度と照明を学習して自宅リビングと似た環境を車内に再現したりすることができます。

運転席のステアリングには「SHARP」のロゴが入っており、細部にまでブランドアイデンティティが表現されています。

コンソール上部には複数のコンセントが用意されており、PC作業やデバイスの充電など、様々なシーンでの利便性を高めています。

シャープ LDK+の走行性能

シャープ LDK+の走行性能については、ベース車両となるFoxconnのModel Aのスペックから推測できます。Model Aは全長4,300mm級のコンパクトミニバンで、RWD(後輪駆動)仕様がベースとなっています。

モーターは最大出力172kW、最大トルク340Nmのスペックを持ち、0-100km/h加速は約7秒とされています。これはコンパクトミニバンとしては十分な動力性能と言えます。

バッテリー容量は58kWhで、満充電での航続距離は欧州のドライビングモードサイクル・NEDCで505km、WLTCモードで約394kmとなっています。実用的な航続距離を確保していると言えます。

ホイールベースは2,800mm~2,920mm程度とされており、これにより広々とした室内空間と走行安定性を両立しています。展示車両には255/45R20サイズのミシュランタイヤが装着されていました。

なお、製品化に向けてスペックは変更される可能性があり、シャープは具体的な仕様について「現時点で具体的なことは言えない」としています。

シャープ LDK+の価格

シャープ LDK+の価格は、現時点では未定とされています。しかし、シャープの専務執行役員CTOである種谷元隆氏によれば、「類似するサイズのガソリン車と同等の価格帯を目指す」としており、「ファミリー層が無理なく買える価格帯を想定している」と述べています。

さらに、過去のイベントでは「現状のEVよりも安く、お求めやすいような価格を目指して頑張っていきたい」との発言もありました。これらのコメントから、コンパクトミニバンクラスのガソリン車の価格帯、おそらく300万円~400万円台を目指している可能性があります。

販売網については現在検討中で、家電量販店や住宅メーカー、自動車ディーラーとの協業などを検討しているとのことです。一般消費者だけでなく、企業への提案も視野に入れています。

シャープ LDK+の発売時期

シャープ LDK+の発売時期は、2027年度が目標とされています。シャープはこのタイミングでシャープブランドとしてEV市場に参入する計画です。

2025年10月30日のプレスカンファレンスでシャープの種谷元隆CTOは、「みなさんの未来を創るため、2027年度の商品化に向けて邁進していく」と述べており、今後実証実験などを経て市販化に向けた開発を加速させていくとしています。

ブランド第1弾車両の詳細な仕様については未定ですが、現在展示されているコンセプトモデルをもとに改良を加えていくとのことです。

シャープ LDK+は日本で発売されるか

シャープ LDK+は、日本市場での発売を前提として開発が進められています。シャープは日本の家電メーカーであり、2027年度にシャープブランドでEV市場に参入することを目指しています。

ジャパンモビリティショー2025での発表や、「ファミリー層が無理なく買える価格帯」という表現からも、日本の消費者をメインターゲットとしていることが明確です。販売網として家電量販店や住宅メーカーとの協業を検討している点も、日本市場に特化した戦略と言えます。

シャープのAIoTプラットフォームを通じて、キッチンや空調、洗濯機などの家電と連携する機能も、日本の住宅環境を前提とした設計です。また、V2H(Vehicle to Home)システムとの連携により、太陽光発電や住宅用蓄電池と組み合わせた効率的なエネルギーマネジメントを実現する計画も、日本の住宅市場を意識したものと言えます。

したがって、シャープ LDK+は2027年度に日本で発売される見込みが高いと言えます。

辛口評価

シャープ LDK+をあえて辛口で評価します。

まず、最大の懸念は「走行性能への優先順位の低さ」です。シャープは「止まっている95%の時間」に価値を見出すというコンセプトを打ち出していますが、逆に言えば「走っている5%の時間」への配慮が不十分になるリスクがあります。EVとしての基本性能、すなわち航続距離、充電性能、走行安定性、乗り心地といった部分が後回しになっていないか、懸念が残ります。

次に、「市場ニーズとのミスマッチ」の可能性です。駐車時にリビングとして使う、という提案は斬新ですが、実際にどれだけの人が自宅の駐車場で車内をプライベート空間として使うのでしょうか。特に日本の住宅事情を考えると、駐車スペースが離れた場所にある場合や、屋外駐車場では冷暖房のエネルギー消費も気になります。結局、「車中泊」と何が違うのか、という根本的な疑問も残ります。

また、「価格競争力の不透明さ」も課題です。プロジェクター、プラズマクラスター、回転シート、液晶調光シャッター、AIシステムなど、多くの高価な装備を搭載しながら「ファミリー層が無理なく買える価格」を実現できるのか、疑問が残ります。これらの装備を省いた廉価版を出すのであれば、LDK+のコンセプトそのものが崩れてしまいます。

さらに、「自動車メーカーとしての信頼性」の問題もあります。シャープには自動車製造の歴史がなく、ベース車両はFoxconnのModel Aです。安全性能、耐久性、アフターサービス体制など、自動車として最も重要な部分をどこまで担保できるのか、不透明です。家電量販店での販売を検討しているようですが、自動車の整備やメンテナンス体制を整えられるのか、大きな課題と言えます。

最後に、「競合との差別化」も気になります。フォルクスワーゲンのID. Buzzなど、すでにEVミニバンの選択肢は増えています。また、ソニー・ホンダモビリティのAFEELAなど、家電メーカー系のEVも登場しており、シャープだけが特別というわけではありません。「止まっている時間の価値」という提案は面白いものの、それだけで2027年の市場で勝ち残れるのか、疑問が残ります。

シャープ LDK+のライバル車

シャープ LDK+のライバル車としては、以下のモデルが挙げられます。

まず、最も直接的な競合となるのが、フォルクスワーゲンのEVミニバン「ID. Buzz」です。2025年夏に日本で発売が開始され、価格は約900万円からとなっています。往年のワーゲンバスのDNAを受け継ぐレトロモダンなデザインと、充実した装備が特徴です。シャープ LDK+とは価格帯が異なる可能性がありますが、EVミニバンという同じカテゴリーで競合することになります。

次に、ソニー・ホンダモビリティが開発中の「AFEELA」も、広い意味でのライバルと言えます。こちらはセダンタイプですが、家電メーカー系のEVという点で共通しており、「車内空間での体験価値」を重視する姿勢も似ています。価格帯や発売時期によっては、購買層が重なる可能性があります。

また、三菱自動車が2026年後半に投入予定の、FoxconnのModel BをベースとしたコンパクトSUVも、同じFoxconnのプラットフォームを使うという点で比較対象となります。こちらはSUVタイプですが、価格帯や使用シーンによっては競合する可能性があります。

国内メーカーでは、トヨタのアルファードやヴェルファイアのPHEVモデルも、ファミリー向けの電動パワートレイン搭載ミニバンとして競合関係にあります。こちらはPHEVですが、環境性能と実用性を両立したファミリーカーという点で、顧客層が重なります。

中国メーカーの動向も無視できません。中国ではすでに多数のEVミニバンが販売されており、今後日本市場にも参入してくる可能性があります。価格競争力の高い中国製EVは、シャープ LDK+にとって脅威となる可能性があります。

まとめ

シャープ LDK+は、2025年10月30日のジャパンモビリティショー2025で初公開された、家電メーカーであるシャープが開発するEVコンセプトモデルです。2024年9月の第1弾に続く第2弾は、コンパクトミニバンサイズへと変更され、小回りの利くボディと広々とした室内空間を両立しています。最大の特徴は「止まっている時間」にフォーカスした設計思想で、駐車時に運転席を回転させてリビングのような空間を作り出し、プロジェクターやプラズマクラスター、AIシステムなどを活用して「リビングルームの拡張空間」としての利用を提案しています。親会社である鴻海科技集團のEV「Model A」をベースに開発され、2027年度のEV市場参入を目指しています。価格は「ファミリー層が無理なく買える価格帯」を目標としており、販売網には家電量販店や住宅メーカーとの協業も検討されています。家電メーカーならではの技術を活かした独自の価値提案が、今後の自動車市場にどのようなインパクトを与えるか、注目が集まります。

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