アルファロメオは2025年10月15日、コンパクトSUV「アルファロメオ トナーレ(Alfa Romeo Tonale)」のマイナーチェンジモデルを発表しました。2022年の発売から約3年を経て初めての大規模改良となる今回のアップデートでは、エクステリアデザインの刷新、インテリアの質感向上、走行性能の強化が図られています。イタリア・ピサで発表された改良新型トナーレは、アルファロメオのDNAであるスポーツ性能とエモーショナルなイタリアンデザインをさらに進化させた、魅力的な一台に仕上がっています。


車の概要:アルファロメオ トナーレとは?
アルファロメオ トナーレは、2022年2月に発表されたブランド初の電動化を採用したCセグメントのコンパクトSUVです。車名はイタリア北部、スイス国境近くのアルプスを望む「トナーレ峠」に由来しています。トナーレは初代モデルにあたり、2019年3月のジュネーブモーターショーで発表されたコンセプトモデルを市販化したもので、かつて販売されていたハッチバックモデル「ジュリエッタ」の実質的な後継車としての役割も担っています。ステランティスグループの「スモールワイドプラットフォーム」をベースに開発され、アルファロメオ特有のスポーティーな走りと、48Vマイルドハイブリッドやプラグインハイブリッドといった電動化技術を融合させた、ブランドの変革「La Metamorfosi(ラ・メタモルフォシ)」を体現するモデルとして位置づけられています。
今回のマイナーチェンジでは、デザインの刷新、新色の追加、グレード構成の見直しなど、トナーレのスポーティーな魅力をさらに高める改良が施されています。





アルファロメオ トナーレのエクステリアデザイン
改良新型トナーレのエクステリアは、アルファロメオの伝統を受け継ぎながら、より力強く、ダイナミックな印象へと進化しています。フロントマスクには、歴史的名車「33ストラダーレ」や「GT 2000」にインスパイアされた新しい立体的なコンケーブ(凹面)バッジが採用され、ブランドのアイデンティティを強調しています。
伝統の「トライローブ」グリルもリデザインされ、水平方向の広がりを強調することで、地面にしっかりと踏ん張る安定感のある印象を与えています。下部エアインテイクには、アルファロメオ ジュニアとのファミリー感を高めるデザインが採用され、サイドの追加開口部は伝説的な「ジュリアGTA」や「GTAm」のレーシングスピリットを表現しています。

プロポーションの改善も見逃せません。フロントオーバーハングが短縮され、前後のトレッド(輪距)が拡大されたことで、よりワイドでスポーティーな佇まいとなっています。新デザインの19インチ「スティーレ」ホイールは伝統的なデザインを踏襲し、20インチ「フォリ」ホイールはテクニカルでモダンなデザインで、従来モデルよりも軽量化されています。
カラーパレットも拡充され、8色のボディカラーが用意されています。新色のメタリック「ロッソ・ブレラ」「ヴェルデ・モンツァ」「ジャッロ・オクラ」が加わり、既存の「ネロ・アルファ」「ビアンコ・アルファ」「グリージョ・ヴェスヴィオ」「ヴェルデ・モントリオール」「ブル・ミサノ」と合わせて、個性的なカラーリングが選択できます。オプションのブラックルーフとの組み合わせも可能で、さらなる個性化が図れます。
また、アルファロメオ ジュニアと同様に、前後のエンブレムがブラック&ホワイトのデザインに統一され、「ヴェローチェ」と「スポーツ・スペチアーレ」グレードではリアの「トナーレ」ロゴもブラック仕様となっています。
アルファロメオ トナーレのボディサイズは、全長4,530mm、全幅1,835mm、全高1,600mmです。





アルファロメオ トナーレのインテリアデザイン
改良新型トナーレのインテリアは、プレミアムな素材と細部へのこだわりが際立つ、洗練された空間へと進化しています。新たに追加された「カネロニ(リブ織り)」シートは、レッドレザーにコーディネートされたステッチが施され、上質な雰囲気を醸し出しています。また、ブラック&ホワイトのツートーンアルカンターラシートも新設定され、ダッシュボードには対照的なステッチが施されたアルカンターラが使用されています。
センターコンソールには、新しいロータリー式ギアセレクターが配置され、モダンで機能的なデザインとなっています。ステアリングホイールに装着された伝統的なアルミニウム製パドルシフターを使えば、よりスポーティーなギアチェンジが楽しめます。

「スポーツ・スペチアーレ」限定仕様には、アルファロメオの象徴である「ビショーネ(大蛇)」の皮膚をイメージした、マルチカラーのグラデーションエフェクトを持つアンビエントライトがダッシュボードに配置され、モダンで個性的な雰囲気を演出しています。
快適装備も充実しており、プレミアムシートは前席8ウェイ電動調整機能、4ウェイ電動ランバーサポート、シートヒーター&ベンチレーション機能を備えています。ステアリングホイールとウォッシャーノズルにもヒーターが装備され、あらゆる季節で快適なドライブが楽しめます。
テクノロジー面では、12.3インチのデジタルメーターパネル「テレスコープ」と、10.25インチのタッチスクリーン式インフォテインメントシステム「アルファ・コネクト」が搭載され、スマートフォンのような直感的な操作が可能です。ワイヤレスApple CarPlay、Android Auto、OTA(オーバー・ジ・エア)アップデートにも対応しています。
その他、セミオートマチックパーキング、ワイヤレス充電器、電動テールゲート、デュアルゾーンオートエアコン、エレクトロクロミックミラー、14スピーカーのハーマンカードン470Wオーディオシステムなど、上級クラスの装備が標準またはオプションで用意されています。





アルファロメオ トナーレの走行性能
アルファロメオのDNAは、テクノロジーを駆動の喜びへと昇華させる能力にあります。改良新型トナーレは、完璧なシャシーバランスと最適な重量配分を実現し、独立式マクファーソンストラット式サスペンションをフロント・リアともに採用し、スポーティーなセッティングが施されています。
ブレーキシステムには4ピストンのブレンボ製ブレーキが採用され、ステアリングギア比は13.6:1と、セグメント最速のダイレクトな操舵感を実現しています。さらに、デュアルステージバルブ(DSV)電子制御サスペンションまたは周波数選択減衰(FSD)ショックアブソーバーが用意され、快適性とハンドリングの最適なバランスを提供します。
プラグインハイブリッドモデルには「Q4 AWD」四輪駆動システムが搭載され、安定性、安全性、ダイナミズムの最高のバランスを実現しています。また、ステアリングコラムに固定されたアルミニウム製パドルシフターと「アルファDNA」セレクターにより、ドライバーの好みや走行スタイルに合わせて車の性格を変えることができます。
改良新型トナーレは、拡大されたトレッドにより、ロールとアンダーステアを低減し、Euro 6E-bis基準に適合したエンジンを搭載しています。ハイブリッドモデルは総出力175馬力、プラグインハイブリッドモデルは270馬力を発揮します。
パワートレインのラインアップは多彩です。「トナーレ ハイブリッド」は、1.5リッター直列4気筒ターボエンジン(175馬力)に可変ジオメトリーターボ(VGT)を組み合わせ、7速デュアルクラッチトランスミッションと前輪駆動を採用した、アルファロメオ最新の48Vハイブリッドテクノロジーを搭載しています。ディーゼルモデルは、1.6リッターディーゼルエンジン(130馬力)と6速デュアルクラッチトランスミッションを組み合わせ、燃費に優れた実用的な選択肢となっています。
最上級モデルの「Q4 プラグインハイブリッド」は、電動四輪駆動と6速オートマチックトランスミッションを採用し、190馬力と270馬力の2つのパワーレベルが用意されています。270馬力モデルはトナーレの性能と効率性の最高峰を示しています。
改良により、ハイブリッドコントロールプロセッサーが洗練され、内燃エンジンと電気モーターの切り替えが滑らかになり、よりリニアで連続的な加速を実現しています。

アルファロメオ トナーレの安全性能・運転支援
改良新型トナーレは、ユーロNCAPで5つ星評価を獲得した高い安全性能を誇ります。先進運転支援システム(ADAS)は、レベル2の自動運転機能を含む包括的なパッケージとなっています。
主な装備としては、インテリジェント・アダプティブ・クルーズ・コントロール(レーンセンタリング機能付き)、トラフィック・ジャム・アシスト、ブラインドスポット・ディテクション、リア・クロス・パス・ディテクション、ドライバー・アテンション・モニタリングが含まれます。また、交通標識認識システムとインテリジェント・スピード・アシスト、歩行者・自転車検知機能付き自動緊急ブレーキも装備されています。
さらに、新たに高解像度360度カメラ(ドローンビュー機能付き)とセミオートマチック・パーキング機能が追加され、あらゆる状況での運転や駐車操作をサポートします。
アルファロメオ トナーレの価格とグレード
欧州市場での改良新型トナーレの価格は、現時点では公式発表されていませんが、マイナーチェンジによる装備拡充を考慮すると、現行モデルと同等かわずかな値上げにとどまる見込みです。グレード構成は、エントリーモデルの「トナーレ」、「スプリント」、「Ti」、そして最上級の「ヴェローチェ」と、発売記念特別仕様車「スポーツ・スペチアーレ」が用意されています。
エントリーモデルの「トナーレ」は、フルLEDヘッドライト、17インチ「アエロディナミコ」ホイール、12.3インチデジタルメーターパネル、10.25インチインフォテインメントシステム、デュアルゾーンオートエアコンなど、充実した装備を標準で備えています。
「スプリント」は、グロスブラックのボディキットにマットダークミロングレーのアクセント、18インチ「ペタリ」ホイール、統合ナビゲーションシステムが追加されます。
「Ti」グレードは、レッドまたはブラックのレザーシート(8ウェイ電動調整、ヒーター&ベンチレーション機能付き)、アルミニウム製パドルシフターが装備されます。
最上級の「ヴェローチェ」は、19インチ「スティーレ」ホイール、フルLEDマトリクスヘッドライト、レッドブレンボブレーキキャリパー、DSV電子制御サスペンションを備え、よりスポーティーな走りを追求しています。
限定仕様車「スポーツ・スペチアーレ」は、サイドスカートとリアバンパーにシルバーアクセント、グロスブラックのブレンボブレーキキャリパー、ホワイトの「アルファロメオ」レタリング、専用ブラック&ホワイトアルカンターラシート、専用アンビエントライトなど、最も豪華な装備が施されています。
参考として、日本市場における現行モデルのトナーレの価格は、マイルドハイブリッドモデルの「ヴェローチェ」が619万円からとなっています。特別仕様車の「インテンサ」は634万円、プラグインハイブリッドの「Q4 ヴェローチェ」は712万円から設定されています。日本市場では、マイルドハイブリッドの「ヴェローチェ」が595万円から727万円の価格帯で展開されており、プラグインハイブリッドモデルは712万円から727万円となっています。改良新型の日本導入価格については、2025年末から2026年初頭の発売時期に合わせて正式発表される見込みです。

アルファロメオ トナーレの発売時期
改良新型トナーレは、2025年10月15日にワールドプレミアが行われました。欧州市場では2025年末から順次販売が開始される予定です。日本市場への導入時期は正式に発表されていませんが、欧州に続いて2025年末から2026年初頭にかけて導入される見込みです。ステランティスジャパンからの正式なアナウンスが待たれるところですね。
アルファロメオ トナーレは日本で発売されるか
アルファロメオ トナーレは、すでに日本市場で販売されている車種です。今回発表された改良新型モデルについても、日本への導入が見込まれています。日本市場では、ブランド初の電動化モデルとして、また国内での取り回しの良いコンパクトなボディサイズのSUVとして、一定の人気を集めています。2025年末から2026年初頭にかけての導入により、日本市場でのトナーレの販売活性化が期待されます。

アルファロメオ トナーレをあえて辛口で評価します
アルファロメオ トナーレをあえて辛口で評価します。まず、価格面では619万円(現行モデル)からという設定は、同セグメントのBMW X1やメルセデス・ベンツGLAと比較すると、やや割高感が否めません。アルファロメオというブランドの希少性や個性を考慮しても、装備内容や走行性能のコストパフォーマンスは競合他社に一歩譲る部分があります。
また、電動化といっても48Vマイルドハイブリッドは、完全なEVやストロングハイブリッドと比較すると電動走行の恩恵は限定的で、燃費性能もWLTCモードで14.1〜16.7km/Lと、特別に優れているわけではありません。プラグインハイブリッドモデルはより高価になるため、購入のハードルがさらに上がります。
ブランドイメージとしても、アルファロメオは「壊れやすい」「維持費が高い」といったネガティブなイメージが根強く残っており、購入後のメンテナンスや部品供給への不安を感じる方も少なくないでしょう。また、ディーラーネットワークが限られているため、地方在住の方には不便さを感じる可能性があります。
デザイン面では、確かにイタリアンデザインの美しさは際立っていますが、一部のディテールは好みが分かれるところです。特にフロントグリルのデザインは、伝統的な「トライローブ」を採用しているものの、現代的な解釈が必ずしも万人受けするとは限りません。
販売台数の少なさも懸念材料です。リセールバリューの面では、トヨタやレクサスといった人気ブランドに大きく劣り、数年後の売却時に大きな損失を被る可能性があります。また、マイナーチェンジ後のモデルであっても、国内での認知度が低いため、所有する喜びは得られても実用性や経済性を重視する方には不向きかもしれません。
アルファロメオ トナーレのライバル車
アルファロメオ トナーレのライバルとなるのは、プレミアムコンパクトSUVのセグメントに属する車種です。最大のライバルは、BMW X1とメルセデス・ベンツGLAでしょう。BMW X1は、全長4,500mm、全幅1,845mm、全高1,642mmとトナーレよりもわずかに大きく、より広々とした室内空間と実用性を誇ります。メルセデス・ベンツGLAは、全長4,410mm、全幅1,834mm、全高1,611mmと、トナーレと非常に近いサイズ感で、洗練されたデザインと高い質感が魅力です。
また、アウディQ3も有力なライバルです。Q3は、アウディらしい先進的なテクノロジーと実用性の高いパッケージングで、ファミリーユーザーにも人気があります。国産車では、マツダCX-5がサイズ的に近く、魂動デザインと優れた走行性能で、トナーレと競合する可能性があります。
その他、プジョー3008、BMW X2なども、同じCセグメントSUVとして競合関係にあります。トナーレは、これらのライバルに対して、イタリアンデザインの個性と希少性、アルファロメオならではのスポーティーな走りという差別化要素を打ち出しています。

まとめ
アルファロメオ トナーレの改良新型モデルは、2025年10月15日に発表され、デザインの刷新、走行性能の向上、グレード構成の見直しなど、魅力をさらに高める改良が施されました。エクステリアは、新しいコンケーブバッジやリデザインされたトライローブグリル、拡大されたトレッドにより、よりスポーティーで力強い印象へと進化しています。インテリアは、新しいシート素材やロータリー式ギアセレクター、先進的なインフォテインメントシステムにより、上質で快適な空間を実現しています。走行性能面では、最適化されたシャシー、ブレンボ製ブレーキ、電子制御サスペンションなどにより、アルファロメオらしいダイナミックな走りを提供します。安全性能も充実しており、レベル2の自動運転支援システムや360度カメラなど、最新の装備が搭載されています。2025年末から2026年初頭にかけて導入される見込みです。プレミアムコンパクトSUV市場において、BMW X1やメルセデス・ベンツGLAといったライバルとの差別化を図りつつ、イタリアンデザインの個性とスポーティーな走りで、アルファロメオファンを魅了する一台となるでしょう。



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