トヨタの隠されてきた5台のコンセプトカー:CALTYデザインが50周年で公開

トヨタのCALTYデザインリサーチ(CALTY Design Research)というのをご存知でしょうか。トヨタ自動車が米国に構えるデザインスタジオです。このCALTY(キャルティ)が設立50周年を迎えました。これまで数々のトヨタ、レクサスのコンセプトカーを生み出してきました。その中で発表されなかった秘蔵の5つのプロジェクトが公開されました。今見てもワクワクするようなデザインのコンセプトカー達を紹介していきます。

トヨタCALTYデザインリサーチとは?

CALTY Design Researchは、トヨタ自動車が1973年に米国に設立したデザインスタジオで、主にトヨタとレクサス車のデザインを担当しています。ロサンゼルス郊外の高級住宅エリアのカリフォルニア州ニューポートビーチに位置しています。このスタジオでは、将来の革新的なデザインを追求する役割を担っています。またトヨタは米国でもう一つミシガン州アナーバーにデザインスタジオを設立しており、こちら北米市場向けの生産デザインを開発しています。CALTYはトヨタ カムリ、レクサス GS、トヨタ シエナなどの著名な車種のデザインに関わっており、トヨタ FT-1やトヨタ FT-HS、レクサス LF-LCなどのコンセプトカーを作り上げました。このデザインスタジオは、アメリカ市場のニーズに合わせたスタイリングで、トヨタのアメリカ市場での成功に大きく貢献しています。CALTYはトヨタの重要な拠点の一つと言えます。

隠されてきた5つのコンセプトカーとは?

後述するように50年の歴史の中でCALTYがつくりあげてきたデザインが、トヨタやレクサスを大きく動かすプロジェクトに発展したり、量産車へつながるケースは数多くありました。ただし、その中で日の目を見ずにCALTYのアーカイブにのみ残されてきたデザインもあります。これらのデザインは発表されなかったからといって、意味のないクルマでは無かったのです。

CALTYは50周年を記念して、これまで発表されることのなかった5つのデザインを発表しました。これら5台のクルマについて、見ていきましょう。

1.未来のハイパフォーマンスコンセプト(1989年)

1980年代後半はスポーツカーやパフォーマンスカーが多く生まれた時期でした。「フューチャーハイパフォーマンスコンセプト(Future High Performance Concept)」というコンセプトカーは、ミッドマウントのエンジンがボタン操作で車両から持ち上がり、冷却効果を発揮するという独創的なクルマでした。このメカニズムは、空力性能とエンジン冷却の効率化に寄与しており、現在のハイパフォーマンスカーの設計に影響を与える可能性があります。また運転席側のフロントガラスは駐車時に完全に閉じることができました。当時は派手でハイセンスを追求する時代でした。かなり近未来的なクルマではないでしょうか。

2.EVコンセプト

ハイブリッドカーのプリウスや電気自動車が登場するよりも前に、CALTYはEVコンセプト(EV Concept)を作り上げていました。このクルマは2ドア2+2シートレイアウトの小型EVです。優れた空力特性を備えた軽量でコンパクトなデザインは、効率的な都市通勤を考慮していました。CALTYが初めてEVにトライしたプロジェクトでした。

3.X86Dコンセプト(2012年)

このX84Dコンセプトは、トヨタ86(当時米国ではサイオン FR-S)をベースに、スポーツカーでありながら4ドアのシューティングブレークに変貌させています。サイドやリアからのエクステリアはホットロッドのようなフォルムが独創的なモデル。

4.NYCコンセプト(2012年)

大都市向けのプロジェクトとして作り上げられた、NYCコンセプト(NYC Concept)。縦長のプロポーションは人通りの多い道などには適したコンパクトな形状でした。前席はフェンスに寄りかかるようなフェンスシートを採用しており、歩行者と同じ目線の高さで、歩行者とアイコンタクトを取ることを想定していました。

5.ベビールナクルーザー

トヨタ自動車とJAXAが共同研究している月面探査車両ルナクルーザーからインスピレーションを得て作られた、ベビールナクルーザー(Baby Lunar Cruiser)。2030年に向けて最適な4輪駆動車を検討する中で、月面走行ミッション用に設計されたクルマから未来のオフローダーの形を模索したのです。ベビールナクルーザーはインホイールモーターで駆動し、4つのタイヤはエアレスタイア。ドライブコントロールジョイスティックで操縦する。運転支援や拡張現実を用いたエンタテイメントシステムなど先進の技術が詰め込まれた、まさに未来のクルマです。

トヨタCALTYデザインリサーチ50年の歴史

1973年にトヨタが米国カリフォルニアに設立したこのスタジオは、トヨタデザインとレクサスデザインの創造性と革新性を生み出す主要拠点となりました。CALTYの名前は、「California(カリフォルニア)」「Toyota」、そして初期の20%出資者である産業機械商社「Ya-chioda Sangyo」の頭文字から名付けられました。

はじまりはトヨタ カローラセダンが成功したことで、トヨタの経営陣が米国にデザインスタジオを設立することを決定。カリフォルニア州エルセグンドというエリアでスタジオを開設し、その後ニューポートビーチへ移転しました。

CALTYは、1978年に登場した2代目トヨタ セリカのデザインで、日本の洗練されたマッスルカーの解釈として初めての注目を集めました。この革新的な新型セリカは1978年にモータートレンド・インポート・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞しました。

1980年代には、カリフォルニア州ラグナビーチにサテライトスタジオを開設し、伝統的なアートの技法を自動車デザインに応用しました。このスタジオでは、5代目セリカにおいて、小規模なセラミック粘土の3Dモデルを使ったクリエイティブな実験が行われました。

1990年代には、特に北米市場向けの量産車のデザインにおいてCALTYの役割が強化されました。1997年には、CALTYがデザインしたトヨタ プリウスのコンセプトが、世界初の量産ハイブリッドカーのデザインコンペティションで選ばれました。プリウスは世界的に大ヒットとなり、日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞しました。

2000年代には、北米へのローカライズが強化され、また実験的なコンセプトやアイデアを量産車へつなげるような意図が強くなりました。2003年型FJクルーザーコンセプトは、オフロードコンセプトから生まれ、2006年に量産車となりました。また、レーシングカーのデザインにも着手し、トヨタのNASCAR(ナスカー)参戦に向けて、トヨタ レーシング ディベロップメント(TRD)と協力してカムリをレーシングカー仕様のデザインへ変身させました。

2010年代には、レクサスのブランドアイデンティティ再構築に大きな貢献をしました。2012年のレクサス LF-LCコンセプト(Lexus LF-LC Concept)は大きな話題を呼び、レクサスブランドを進化させたレクサスLCにつながりました。また、FT-1コンセプトを通じてスープラの復活に貢献しました。

2017年には、AIと未来のモビリティに焦点を当てたデザインが行われ、モビリティ技術は暖かく迎え入れられるべきとした「キネティック ウォームス」の考え方に基づき、Concept-iがデザインされました。

2021年には豊田章男社長が未来のBEVコンセプト群を公開し、世界に衝撃を与えました。これには、CALTYがデザインしたレクサスエレクトリファイドスポーツが含まれています。

このようにCALTYは北米ならではのクリエイティビティとイノベーションを武器に、独自の進化を続け、北米のみならずグローバルトヨタ、グローバルレクサスに大きな貢献を続けてきました。

まとめ

今回CALTYが発表した5つのコンセプトは独創的な視点から、未来のクルマの姿を模索した非常に興味深いプロジェクトばかりですね。過去のプロジェクトであっても、ワクワクするようなデザインと発想だと思いませんか。

また改めてCALTYの歴史を見つめ直すと、今後のCALTYによる未来のクルマの創造に期待が高まりますね。

CALTY Design Research 公式発表はこちら(英語)

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