日産 大胆な経営計画The Arc発表:2026年度までに16の電動車含む30の新型車投入

2024年3月25日、日産自動車株式会社は、新たな経営計画「The Arc」を発表しました。この計画は、新型車の市場投入、電動化への積極的な取り組み、開発と生産の方式変革、最新技術の導入、そして戦略的なパートナーシップの強化を軸に展開され、販売台数の増加及び収益性の向上が主な目標です。

「The Arc」計画は、既に進行中の事業改革「Nissan NEXT」と長期戦略「Nissan Ambition 2030」を結びつける役割を持ち、2024年度から2026年度にかけての中期戦略と2030年までの長期戦略を包含しています。

計画の概要には、以下のような目標が含まれています:

  • 2026年度には、2023年度と比べて販売台数を100万台増加させ、営業利益率を6%以上に引き上げることを目指す。
  • 2026年度までに30車種の新型車を市場に投入し、そのうち16車種は電動車両とする。
  • 2026年度までに、内燃機関車の乗用車ラインナップの60%を更新。
  • 電気自動車(EV)の競争力強化のため、次世代EVの製造コストを30%削減し、2030年度までに内燃機関車と同等のコストを達成。
  • 日産独自のファミリー開発によって、EVの開発コストを大幅に低減し、2027年度から生産を開始する。
  • 技術、商品ポートフォリオ、ソフトウェアサービス分野における戦略的パートナーシップを拡大。
  • 株主還元率を30%に設定し、配当と自社株買いを実施。
  • 2030年度までに新規ビジネスから最大2.5兆円の売上を見込む。

これらの戦略を通じて、日産は新しい時代の需要に応え、持続可能な成長を目指しています。

日産の社長兼CEO、内田誠は、新たな経営計画「The Arc」を通じて、日産が未来に向けて進むべき道のりを描き出しています。この計画は、日産が継続的に進化し、常に変わりゆく市場環境に適応していく企業であることを示すものです。内田氏によれば、「The Arc」によって日産は、市場の急激な変化に対応しながら、企業価値と競争力を一層強化し、持続可能な成長と収益性の獲得に向けた断固たるステップを踏み出していくとしています。

日産はこの計画の下、地域ごとにカスタマイズされた戦略を展開して販売台数を増加させることに注力します。また、電動車両と内燃機関車のバランスの取れた製品ポートフォリオの構築、主要市場での販売拡大、財務規律の強化などを通じて、電動車への移行を加速させる準備を進めています。目標としては、2026年度末までに年間販売台数を100万台増やし、営業利益率を6%以上に引き上げることが挙げられています。さらに、スマートパートナーシップの形成、電動車の競争力のさらなる強化、イノベーションによる差別化戦略の推進、新たな収益機会の創出などを通じ、電動車への移行と長期的な利益確保を目指していきます。最終的には、2030年度までに新規ビジネスから最大2.5兆円の売上を見込む計画です。

日産は、今後3年間にわたって、多様な顧客ニーズと市場ごとの電動化進展度に対応するため、バランスの取れた製品ポートフォリオを構築する計画を発表しました。この戦略のもと、新たに30車種の新型車を市場に導入する予定で、このうち16車種が電動車両、残りの14車種が従来型の内燃機関車(ICE車)となります。2024年度から2030年度にかけて、合計34車種の電動車両を投入し、すべての車種セグメントを網羅する計画です。

日産のビジョンでは、2026年度までに全体の車種のうち40%を電動車両が占め、2030年度にはその比率を60%まで高めることを目指しています。これにより、日産は多様化する消費者の要望に応えつつ、環境負荷の低減というグローバルな目標にも寄与することになります。

日産 経営計画発表会の動画

日産の経営計画 The Arc発表の際に公開された動画がYouTubeの日産公式アカウントで配信されています。以下の動画では今後日産が投入する新型車のシルエットやヘッドライトデザインなどを観ることができる貴重な映像となっています。

<The Arc: 日産経営計画 ~長期ビジョンへの架け橋>

<【中継】日産自動車 経営計画>

日産の地域ごとの戦略

日産は、主要市場ごとにカスタマイズされた戦略を展開し、2026年度までに具体的な成長目標を設定しています。各地域の市場ニーズと電動化のトレンドに基づき、新型車の導入やモデルラインアップの更新など、地域ごとの最適化された取り組みを推進しています。

アメリカズ地域では、地域全体で2023年度比33万台の販売増を目指します。米国市場では2億ドルを統合型カスタマーエクスペリエンスの向上に充て、7車種の新型車を市場に投入します。さらに、米国においては日産ブランドの乗用車モデルラインアップの約78%を刷新し、e-POWERやプラグインハイブリッドモデルの導入を計画しています。

中国地域では、日産ブランドの車種ラインナップの73%を更新し、新エネルギー車(NEV)8車種を市場に投入する計画です。販売目標としては、20万台の増加を見込み、2026年には年間販売台数100万台達成を目指します。さらに、2025年からの輸出を開始し、初期段階で年間10万台を目標に設定しています。

日本市場では、乗用車モデルラインアップの80%を一新し、5車種の新型車を導入します。電動車のモデルミックスを70%に向上させ、2023年度比で9万台増の販売を目指し、2026年度には年間60万台の販売を計画しています。

アフリカ、中東、インド、欧州、オセアニア地域では、全体で2023年度比で30万台の販売増を見込んでいます。具体的には、欧州で6車種、中東で5車種の新型SUV、インドで3車種の新型車の投入、オセアニアでは1トンピックアップとCセグメントのクロスオーバーEVの導入、アフリカでは新型SUV2車種の投入とAセグメントICE車の拡大を計画しています。これらの取り組みを通じて、日産は各地域の市場特性に合わせた成長戦略を推進しています。

日産のEV戦略

日産は、手頃な価格で利益率の高い電動車(EV)を提供するために新しい戦略を展開しています。具体的には、複数のEVモデルをファミリーで開発するアプローチや、パワートレインの一体化、次世代モジュラー生産、グループでの資材調達、バッテリー技術の革新などにより、次世代EVの製造コストを30%削減し、2030年度までに内燃機関車(ICE車)と同等のコストを達成することを目指しています。

このファミリー開発では、主要モデルを基盤として、後続モデルの開発費用を50%、トリム部品のバリエーションを70%削減し、開発期間を4ヶ月短縮する予定です。さらに、次世代モジュラー生産方式の導入により、車両の生産ラインを短縮し、一台あたりの生産時間を20%短縮します。

日産はまた、「ニッサン インテリジェント ファクトリー」と呼ばれる最先端の製造技術を世界中の工場に拡大していく計画です。2026年度から2030年度にかけて、日本の追浜工場や日産九州、英国サンダーランド工場、米国キャントン工場とスマーナ工場にこの先進的な製造プロセスを導入します。また、EV36Zeroプロジェクトでは、2025年度から2028年度にかけて、英国のサンダーランド工場をはじめとする複数の国際拠点での導入を計画しています。これにより、日産はEVの大量生産とコスト削減に向けた重要な一歩を踏み出すことになります。

日産の新技術戦略

日産は、自動運転技術の進化を加速し、高速道路、一般道、敷地内、そして目的地までをカバーするドアツードアの自動運転を実現する次世代のプロパイロット技術を導入する計画です。これは、ユーザーの運転体験を一新し、より快適で安全な移動を可能にします。

また、日産は消費者の多様な要求に応えるため、電動車用のバッテリー技術にも注力しています。具体的には、既存のNCMリチウムイオンバッテリーの性能向上、低コスト化を実現するLFPバッテリーの開発、そして将来性のある全固体電池の投入を計画しています。NCMリチウムイオンバッテリーに関しては、急速充電時間を現行のアリアモデル比で50%短縮し、エネルギー密度を50%向上させる改良を図ります。また、日本国内で開発、生産されるLFPバッテリーは、コストをサクラモデル比で30%削減します。これらの革新的なバッテリー技術を搭載した新世代の電動車は、2028年度の市場投入を目指しています。これにより、日産は多様な顧客のニーズに対応し、電動車市場での競争力を一層強化する見込みです。

日産の戦略的パートナーシップ

日産は、グローバルな商品ポートフォリオと技術基盤の拡張に向け、戦略的パートナーシップを活発に推進しています。特に、欧州、ラテンアメリカ、ASEAN地域、インドにおいては、ルノーおよび三菱自動車との長年にわたるアライアンスを基盤として、さらなる協力体制を築き上げています。このアライアンスは、それぞれの地域における市場ニーズに対応し、競争力を維持するための重要な戦略です。

中国市場においては、地元企業との協力を通じ、現地資産の最大活用を図りつつ、中国だけでなく他国の顧客ニーズにも応えるための戦略を展開しています。さらに、日本と米国におけるビジネス展開では、新しいパートナーシップの構築を目指し、市場競争力の向上と製品ラインアップの強化を図っています。

バッテリー技術に関しては、パートナー企業と協力して開発と調達を進め、世界規模での生産能力を135 GWhに拡大する計画です。これにより、日産は電動化戦略の加速と、持続可能なモビリティソリューションへの貢献を目指しています。

日産の財務戦略

日産は、持続可能かつ収益性の高いビジネス運営を目指し、厳格な財務規律のもとで運営を行う計画を公表しました。同社は、研究開発費と設備投資の総額を売上高の7%から8%に保ち、特にバッテリー設備には4000億円以上の投資を行うことを予定しています。これにより、電動化の推進に重点を置きつつ、将来の成長機会を見据えた戦略的な投資を実施します。

日産は、電動化に対する投資を徐々に増やし、2026年度までには総投資額の70%以上を電動化関連へと割り当てる予定です。このような投資戦略は、日産が全ステークホルダーに対してさらなる価値を創出し続けるためのものです。また、電動化への投資拡大と並行して、M&Aの実行前のフリーキャッシュフローをプラスに保ち、株主総還元率を30%以上に保つことを目標にしています。

さらに、日産は財務の健全性を維持するために、ネットキャッシュポジションを1兆円の水準で保つことを目指しています。社長の内田誠は、「The Arc」について、「この計画は日産の競争力を強化し、持続可能な収益性を確保するための全面的なアプローチであり、『Nissan Ambition 2030』を実現するための確かな基盤を築くことを目指しています」と述べています。

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