ダイハツは2025年10月29日、東京ビッグサイトで開催中のジャパンモビリティショー2025において、次世代軽自動車のコンセプトカー「K-VISION」を世界初公開しました。このモデルは、2019年に登場した現行タントの次期型を示唆するもので、軽自動車として初めてストロングハイブリッドシステムを搭載した革新的なモデルとなっています。
ジャパンモビリティショー2025のダイハツブースでは、「わたしにダイハツメイ。小さいからこそできること。小さいことからひとつずつ。」をテーマに、次世代モビリティの提案が行われました。その中でもK-VISIONは、「みんなの次世代軽自動車」をキーワードとして開発され、充電不要でありながら電動車の魅力を実現する、新しいスタンダードとして位置づけられています。

車の概要:ダイハツ K-VISIONとは?
ダイハツ K-VISION(ケービジョン:Kビジョン)は、次世代の軽スーパーハイトワゴンとして開発されたコンセプトカーで、現行タントの後継モデルと目されています。タントは2003年11月に初代モデルが誕生し、「しあわせ家族空間」をコンセプトに、軽自動車に新たなジャンルを切り開いたパイオニア的存在です。
初代タントは軽最大2440mmのホイールベースと2000mmの室内長を実現し、発売1カ月で目標を大きく上回る1万500台の受注を記録する人気となりました。2007年12月には2代目、2013年10月には3代目が登場し、そして2019年7月に4代目となる現行モデルへと進化を遂げています。
K-VISIONは、この4代目タントの次となる5代目を示唆するモデルとして期待されています。最大の特徴は、将来の電動化を見据えた次世代DNGAプラットフォームに、ロッキーHEVで好評の「e-SMART HYBRID」を軽量・小型化して搭載した点です。これにより、軽自動車として初めてストロングハイブリッドシステムを実現し、従来のパワートレーン(エンジン&CVT)と比較して約20%以上向上した燃費性能を達成しています。

ダイハツ K-VISIONのエクステリアデザイン
K-VISIONのエクステリアは、シンプルで機能的なデザインを追求した、新世代のダイハツを象徴するスタイリングとなっています。ボディ全体は、カクカクとした直線基調のデザインで統一され、無駄を削ぎ落としたクリーンな印象を与えます。
フロントマスクは、水平基調のデザインを採用し、安定感と親しみやすさを両立させています。ヘッドライトは薄型の水平ラインで構成され、モダンで先進的な表情を演出しています。テールデザインもフロントと統一感のある水平基調で、視覚的な安定感を強調するスタイリングです。
両側スライドドアを採用し、軽スーパーハイトワゴンとしての利便性を確保しながらも、全高は1680mmと、タントやムーヴの中間に設定されたハイトワゴンとして分類されるのが特徴です。これは従来の軽スーパーハイトワゴンよりも約70mm低い設計となっており、走行安定性と室内空間のバランスを追求した結果といえます。
ダイハツ K-VISIONのボディサイズは、全長3395mm、全幅1475mm、全高1680mmとなっています。




ダイハツ K-VISIONのインテリアデザイン
K-VISIONのインテリアは、「誰にでも使いやすい」をコンセプトに、シンプルで直感的な次世代コックピットを実現しています。室内空間は、モダンなライトグレーを基調カラーとし、軽自動車クラスを超えた上質な仕立てとなっているのが特徴です。
インパネデザインは、暖色系のアンビエントライトを奥に配置することで遠近感を演出し、手前はトレーのような水平かつフラットな空間を確保した実用的な設計となっています。この設計により、スマートフォンなどの小物を気軽に置けるスペースが生まれ、日常使いの利便性が向上しています。

メーターは薄型の液晶ディスプレイを採用し、視認性と先進感を両立させています。中央には大型のインフォテインメントシステムのディスプレイを配置し、操作性と情報表示の見やすさに配慮した設計です。ダイハツのブランド推進室長によれば、「初心者や高齢の方々はもちろん、誰にでも使いやすい乗り物であるために、シンプルで直感的な設計を新開発した」とのことです。
両側スライドドアと広い室内空間により、日常の買い物から家族でのお出かけまで、幅広いシーンに対応できる優れた利便性を実現しています。

ダイハツ K-VISIONの走行性能
K-VISIONの最大の見どころは、軽自動車として初めて搭載されるストロングハイブリッドシステム「e-SMART HYBRID」です。このシステムは、ロッキーHEVで好評を博したパワートレーンを、軽自動車サイズに軽量・小型化して搭載したものとなっています。
新開発の軽自動車用e-SMART HYBRIDでは、モーターとエンジンを同軸に直結配置し、パワーコントロールユニット(PCU)と機電一体化したトランスアクスルによって、軽自動車に搭載可能な小型・軽量化を実現しました。駆動方式は100%モーター駆動のシリーズハイブリッドを採用しており、静かで力強い走りを提供します。
燃費性能は、従来のパワートレーン(エンジン&CVT)と比較して約20%以上の向上を達成しており、お財布にも環境にも優しい性能を実現しています。充電不要でありながら電動車の魅力を享受できる点は、日常使いにおいて大きなメリットといえるでしょう。
さらに、災害時にも安心な外部給電機能を採用し、約4日分の電力を賄える大容量を確保している点も注目ポイントです。

ダイハツ K-VISIONの価格
K-VISIONはコンセプトカーとして発表されたため、正式な価格設定はまだ公表されていません。しかし、次期タントとして市販化される場合、現行タントの価格帯を基準に、ストロングハイブリッドシステムの搭載によって価格が上昇すると予想されています。
現行タントの価格は148.5万円からとなっており、グレード別では以下の通りです。Lグレードが148.5万円(FF)から161.1万円(4WD)、Xグレードが161.7万円(FF)から173.8万円(4WD)、Xターボが173.2万円(FF)から185.3万円(4WD)となっています。カスタムXは187.0万円(FF)から199.1万円(4WD)、カスタムRSが196.3万円(FF)から208.4万円(4WD)、ファンクロスが180.9万円(FF)から193.0万円(4WD)、ファンクロスターボが190.3万円(FF)から202.4万円(4WD)という価格設定です。
予想では、e-SMART HYBRIDを搭載した次期タントの売れ筋Xグレードは169.5万円程度、ハイブリッドモデルは194.5万円程度になるとの見方があります。これはライバルのホンダN-BOXやスズキスペーシアとの価格競争を意識した戦略的な設定となると考えられています。
ダイハツ K-VISIONの発売時期
K-VISIONの市販化時期について、ダイハツブースの説明員は「まだ時期は言えないが、すぐにというわけではないものの、そう遠くない時期に発表できると思う」とコメントしています。具体的な発売日は明言されていませんが、2026年中のフルモデルチェンジという見方が業界内では強まっているようです。
現行タントは2019年7月に発売されており、2025年時点で6年以上が経過していることから、一般的な軽自動車のモデルサイクルを考えると、近い将来のフルモデルチェンジは十分に考えられます。ジャパンモビリティショー2025でのコンセプトカー公開は、市販化に向けた地固めと市場の反応を見極める狙いがあると推測されます。

ダイハツ K-VISIONは日本で発売されるか
K-VISIONは、日本市場をメインターゲットとして開発された軽自動車のコンセプトカーであり、日本国内での発売を前提としたモデルです。ジャパンモビリティショー2025での発表も、国内市場に向けたメッセージとして位置づけられています。
軽自動車は日本独自の規格であり、K-VISIONもその規格に準拠した全長3395mm、全幅1475mmのボディサイズとなっています。また、「みんなの次世代軽自動車」というキーワードや、日本の生活に密着した両側スライドドアの採用など、日本市場のニーズに特化した設計となっています。
ダイハツは「小さいからこそできること」をテーマに掲げ、軽自動車の新しいスタンダードを目指すと表明しており、K-VISIONは日本国内で確実に発売されるモデルと考えて間違いないでしょう。
ダイハツ K-VISIONをあえて辛口で評価します。
ダイハツ K-VISIONをあえて辛口で評価します。まず気になるのは、全高1680mmという設定です。軽スーパーハイトワゴンとしては約70mm低く、タントの最大の魅力である圧倒的な室内高が犠牲になっている可能性があります。ファミリー層にとって、子どもの着替えや立ったままの乗り降りという利便性が損なわれるのではないかという懸念が残ります。
また、ストロングハイブリッドシステムの搭載により、車両価格の上昇は避けられないでしょう。現行タントが148.5万円からというリーズナブルな価格設定であるのに対し、ハイブリッドモデルは194.5万円程度と予想されており、約46万円の価格差は購入のハードルを上げる要因となります。
さらに、ライバルのホンダN-BOXは2023年にフルモデルチェンジを実施し、スズキスペーシアもマイルドハイブリッドで最大25.1km/Lという優れた燃費を実現しています。K-VISIONが市販化される2026年頃には、すでに競合他社が次の一手を打っている可能性もあり、後発としての不利は否めません。
コンセプトカーの段階では魅力的に見えても、市販化にあたってのコストダウンやデザインの妥協により、期待を裏切る結果になるリスクも考慮すべきでしょう。
ダイハツ K-VISIONのライバル車
ダイハツ K-VISIONのライバルとなるのは、軽スーパーハイトワゴン市場を牽引する強豪モデルたちです。
まず筆頭に挙げられるのが、長年にわたり国内新車販売首位を独走してきたホンダN-BOXです。2023年10月にフルモデルチェンジを実施した3代目N-BOXは、キープコンセプトながら上質な乗り味と充実した安全装備「ホンダセンシング」を全車標準装備としています。価格は173.9万円からで、WLTCモード燃費は最大21.6km/Lを実現しています。
次に注目すべきはスズキスペーシアです。2023年後半にフルモデルチェンジを実施した3代目スペーシアは、全グレードにマイルドハイブリッドを採用し、WLTCモード燃費は最大25.1km/Lという優れた数値を達成しています。価格は170.5万円からとなっており、インテリアの快適装備も充実している点が評価されています。近年はN-BOXに迫る販売台数を記録し、2024年5月には23カ月ぶりにN-BOXを抜いて月間販売首位を獲得するなど、勢いに乗っています。
また、同じダイハツグループからは、三菱とのOEM関係にある日産デイズ、三菱eKワゴンシリーズもライバルとなります。これらのモデルとの競争において、K-VISIONがストロングハイブリッドという独自の強みをどう活かせるかが注目ポイントとなるでしょう。
まとめ
ダイハツが2025年10月29日のジャパンモビリティショー2025で発表したK-VISIONは、次期タントを示唆する次世代軽自動車として大きな注目を集めています。軽自動車として初めてストロングハイブリッドシステム「e-SMART HYBRID」を搭載し、従来比約20%以上の燃費向上を実現した革新的なモデルです。全長3395mm、全幅1475mm、全高1680mmというボディサイズは、軽自動車規格を最大限活用しながらも、従来のタントより低めの全高設定で走行安定性とのバランスを追求しています。インテリアは誰にでも使いやすいシンプルで直感的なデザインとし、ライトグレーを基調とした上質な仕上がりが特徴です。市販化の時期は明言されていないものの、2026年中のフルモデルチェンジが予想され、価格は現行タントより上昇して169.5万円程度からになると見られています。ホンダN-BOXやスズキスペーシアといった強力なライバルがひしめく軽スーパーハイトワゴン市場において、ストロングハイブリッドという新たな価値提案でダイハツがどのような勝負を仕掛けるのか、今後の動向から目が離せません。



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