日産、日本生産100万台へ再編|スカイライン投入、セレナ・エルグランドを栃木へ

日産は2026年9月10日、日本事業を再構築し、国内販売と輸出を拡大する新たな方針を発表しました。

大きなポイントは、栃木工場、日産自動車九州、日産車体九州の役割を明確に分け、長期的に日本で年間100万台規模を生産する体制を目指すことです。

2025年には追浜工場の車両生産終了を決めるなど「縮小」の印象が強かった日産ですが、今回の発表では、その先にどの車種をどこで生産し、日本をどのような輸出拠点にするのかが具体化しました。

日産が発表した日本事業再構築の内容

今回の日産の方針は、単なる工場の生産移管ではありません。

商品ラインアップの拡充、生産拠点の専門化、輸出拡大を一体で進めることで、日本事業そのものの競争力を高める計画です。

項目 発表内容
国内生産 長期的に年間100万台規模を目指す
商品 スカイライン、パトロール、新グローバルBセグメント車などを投入
栃木工場 スポーツカー、EV、ミニバンを担当
日産自動車九州 B・Cセグメント車のグローバル中核拠点
日産車体九州 フレーム車・小型商用車の専門拠点
輸出 日本からの輸出台数を拡大
技術 次世代プロパイロットなどの実証を日本で推進

なかでも大きく変わるのが栃木工場です。

第1工場ではフェアレディZとスカイラインを引き続き生産し、第2工場ではリーフ、アリアに加え、今後はミニバンも担当します。

現在、日産自動車九州で生産しているセレナと、日産車体九州で生産しているエルグランドを中期的に栃木へ移管し、ミニバン生産を集約する計画です。

一方の日産自動車九州には、追浜工場からノート、ノート オーラ、キックスなどを移します。さらに新たなグローバルBセグメント車も生産する計画で、国内向けだけでなく輸出車を担う拠点としての役割が強まります。

日産車体九州はパトロール、アルマーダ、インフィニティ QX80、キャラバンなどを担当し、フレーム車と小型商用車に特化します。

「商品ファミリー戦略」とは何か

今回の発表で重要なキーワードが「商品ファミリー戦略」です。

これは、車種ごとにすべてを個別開発するのではなく、近いカテゴリーの商品で技術や車両アーキテクチャーなどを共通化し、開発や生産の効率を高める考え方です。

Bセグメント、Cセグメントという呼び方は車格を示す分類で、一般にBセグメントはコンパクト級、Cセグメントはそれより一回り大きなクラスを指します。ただし、厳密に統一された規格ではありません。

今回の日産では、生産工場も商品ファミリーに合わせて整理します。

つまり「この車は昔からこの工場で作っている」という配置から、スポーツカー・EV・ミニバン、B・Cセグメント、フレーム車といった車種群ごとに工場の専門性を高める方向へ進むことになります。

なぜ日産は今、日本事業を再構築するのか

背景には、経営再建計画「Re:Nissan」があります。

日産は2025年5月に発表した「Re:Nissan」で、コスト構造の改善だけでなく、市場戦略と商品戦略そのものを見直す方針を打ち出しました。

当時から日本については、商品ラインアップのカバー率を高めることや、国内販売だけでなく輸出を含めて十分な規模を確保できるモデルへ開発資源を集中する方向性が示されていました。

実際、2025年度の日産の国内販売は398,681台、国内生産は557,576台となり、いずれも前年度を下回りました。輸出も334,706台に減っています。

工場を持っているだけでは競争力にはなりません。生産台数が減れば設備や人員などの固定費を1台あたりで負担する割合が増え、コスト競争力が低下しやすくなります。

そこで日産は、工場を集約する一方で、残す拠点にはより多くの車種や輸出向けモデルを集め、稼働率と生産効率を高める方向へ動いています。

年間100万台という目標は、単純に国内販売を100万台にするという話ではありません。国内販売の回復に加え、日本からの輸出と戦略的パートナーシップを組み合わせ、日本にある生産基盤をより多く活用しようという構想です。

追浜工場の生産終了から今回の再編につながっている

今回の発表は突然出てきたものではありません。

2025年5月のRe:Nissanで、日産は世界の車両生産工場を集約して固定費を削減する方針を示しました。

その約2カ月後の2025年7月には、追浜工場での車両生産を2027年度末に終了し、日産自動車九州へ移管すると発表しています。

今回、その移管先がさらに具体化しました。

ノート、ノート オーラ、キックスなどのBセグメント車は日産自動車九州の第1工場へ集約し、同工場をグローバル生産拠点として強化します。

一方、セレナを九州から栃木へ移すことで、九州側には新たなモデルや追浜から移管される車種を受け入れる余地を作ることになります。

日産車体九州からも新型エルグランドを栃木へ移し、フレーム車を中心とした専門拠点へ再編します。

2025年のRe:Nissanが「どこまで縮小するか」を示した計画だったとすれば、今回の発表は「残した日本の工場をどう使って成長するか」を具体化した次の段階と見ることができます。

年間100万台の鍵は国内販売より「輸出」

今回の計画で特に重要なのは、輸出拡大です。

日本の新車市場だけで各工場の生産台数を大幅に増やすのではなく、日本で競争力のある車を生産して海外へ供給することで、工場全体の稼働率を高める考え方です。

日産自動車九州はB・Cセグメント車、日産車体九州は大型SUVや小型商用車と、それぞれ海外でも需要を見込めるカテゴリーを担当します。

日産は輸出先を増やすことで、特定市場への依存を抑え、為替や市場環境の変化に対する耐性を高める考えも示しています。

これはRe:Nissanで示されていた「日本はホームマーケットであると同時にブランド発信拠点」という位置づけを、生産面でも具体化する動きです。

パトロールやスカイライン投入で国内ラインアップも広げる

工場再編だけでなく、日本で売る車種そのものも増やします。

日産は今回、今後の商品としてスカイライン、パトロール、新たなグローバルBセグメント車を挙げています。

とくにパトロールは大型SUVで、日本では長く空白となっていたカテゴリーです。日産はすでにパトロールの日本市場投入を明らかにしています。

日産は軽自動車、コンパクトカー、EV、SUV、ミニバン、スポーツカー、フラッグシップモデルまで商品をそろえ、現在カバーできていない顧客層を取り込む考えです。

工場を減らして商品まで減らすのではなく、「生産拠点は集約しながら、売る商品の幅は広げる」というのが今回の戦略の特徴です。

日産の再編は自動車業界にとって何を意味するのか

今回の動きは、自動車メーカーの国内工場が単に縮小していくという流れとは少し異なります。

日産は追浜工場の車両生産終了を決める一方、残る国内拠点には車種を集約し、さらに輸出を増やして年間100万台規模を目指します。

つまり、生産能力そのものを維持するのではなく、各拠点の稼働率と専門性を重視する方向への転換です。

日本の自動車市場は大幅な成長を期待しにくいため、国内工場を維持するには輸出や他社との協業を組み合わせる重要性が一段と高まっています。

ただし、年間100万台をいつ実現するのかや、各市場へ何台輸出するのかは現時点で示されていません。

計画通りに商品を投入し、国内外で需要を確保できるかが今後の焦点になります。

私たちが買う日産車はどう変わるのか

今回の発表だけで、すぐに車両価格や装備が変わるわけではありません。

セレナやエルグランドについても、栃木への生産移管によって商品内容が変更されるという発表はありません。

一方、中長期では商品ラインアップの変化を実感する可能性があります。

日産はスカイライン、パトロール、新たなグローバルBセグメント車などを投入し、現在より幅広いカテゴリーをカバーする計画だからです。

また、生産拠点の専門化によってコスト・品質・生産性を高めることができれば、商品競争力の向上につながる可能性があります。ただし、それが車両価格の引き下げや納期短縮につながるかどうかは現時点では分かりません。

生産工場が変わっても、既存ユーザー向けの保証や整備サービスが変わるという発表もありません。

まだ分かっていないこと

今回の日産の発表では、大きな方向性は明確になった一方で、具体化されていない部分も残っています。

特に今後確認したいのは、年間100万台規模をいつまでに実現するのか、国内販売と輸出をそれぞれ何台想定するのか、戦略的パートナーシップによる生産をどこまで含むのかという点です。

セレナとエルグランドの栃木工場への具体的な移管時期も発表されていません。

新たなグローバルBセグメント車についても、車名、パワートレイン、発売地域、日本での発売時期などは現時点では明らかになっていません。

また、今回の再編に伴う各工場への設備投資額や、人員配置への具体的な影響も公表されていません。

まとめ

日産が2026年9月10日に発表した日本事業再構築は、国内3拠点の役割を明確化し、日本を再び重要な生産・輸出拠点として活用する計画です。

栃木工場にはスポーツカー、EV、ミニバンを集約し、日産自動車九州はB・Cセグメント車、日産車体九州はフレーム車と小型商用車の専門拠点とします。

さらに商品ラインアップを拡大し、国内販売だけでなく輸出やパートナーシップを活用することで、長期的に日本で年間100万台規模の生産を目指します。

追浜工場の生産終了など、これまでの日産の再建策は「縮小」が目立ちました。今回の発表では、その再編後の工場をどのように使って成長につなげるのかが初めて具体的に見えてきました。

今後の焦点は、年間100万台という目標の達成時期と、新しいグローバルBセグメント車を含む商品計画、そして日本からの輸出を実際にどこまで伸ばせるかです。

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